ゼレンシキー宇大統領、オレニウカ収容所砲撃につき「ロシアの計画犯罪であるとの証拠は十分すぎるほどある」
ウクライナのゼレンシキー大統領は、28日の被占領下ドネツィク州オレニウカの収容所における50名以上のウクライナ人被拘束者の殺害につき、ロシアがテロ国家であることを今一度確認するものだと発言した。
ゼレンシキー大統領が29日夜の動画メッセージにて発言した。
ゼレンシキー氏は、本件につきザルジュニー軍総司令官、ブダーノウ国防省情報局局長、マリュク保安庁(SBU)長官代行、リビネツ最高会議人権問題全権と会合を開いたことを報告し、「ロシアの非人間がオレニウカで実行し、50名以上の拘束されるウクライナ防衛者を冷笑的に殺害したテロにつき詳細に協議した。それが計画犯罪であったという証拠は十分すぎるほどある。それは改めて、ロシアがテロ国家であることを確認するものである」と伝えた。
またゼレンシキー氏は、ウクライナ人捕虜の命を守る保証をすべきはずの国連と国際赤十字委員会(ICRC)が、速やかに本件に対応すべきだと強調した。
また、情報総局は、28日のオレニウカ収容所での殺人は民間軍事会社「ワグナー(リーガ)」の傭兵が実行したものだと発表した。
情報総局の発表には、「7月28日、ドネツィク州の一時的被占領地のオレニウカ市の、現在ウクライナ人捕虜の拘束場所として利用されている、旧第120矯正収容所敷地内にて、強力な爆発が生じた。爆発の結果、被拘束ウクライナ人がいた施設が破壊された。ロシアのソースの報告によれば、約40人のウクライナ人が殺害された。負傷者数は確認中」と書かれている。
さらに情報総局は、爆発は、マリウポリの製鉄工場アゾフスタリからの連行された被拘束者拘束を目的に特別に設備の整えられた新たに作られた施設内の産業空間において生じたもので起きたものであることがわかったとし、建物の設備設置は2日前に終わり、その後ウクライナ防衛者の一部がそこへと移動させられたのだと伝えた。
その上で、情報総局は、「ウクライナ防衛者の死をもたらしたオレニウカの爆発は、占領国軍側からの意図的な挑発であり、否定し得ないテロ行為である」と強調している。
また、同局は、「現存の情報では、爆発は民間軍事会社『ワグナー』(リーガ)の名目所有者エヴゲニー・プリゴジンの個人的指示により同社傭兵の手によって行われたものである。テロの組織と実行は、ロシア連邦国防省幹部と調整されていなかった」と指摘した。
加えて同局は、今回のテロの目的は、ウクライナ人捕虜拘束のために拠出されていた資金の横領を隠蔽することだとの見方を示し、「8月1日に拠出資金の用途と被拘束者拘束条件の確認のためにモスクワから委員会が同施設へと到着することになっていたことがわかっている。建物の実際の状態とそこでの拘束条件がロシア幹部の要件に合致していなかったことこから、施設破壊という手段でそこに収容されるウクライナ人ごと『問題』が解決されたわけである」と説明した。
また同局は、この挑発行為のもう一つの目的は、ウクライナにおける社会の緊張の増大だとし、「アゾフスタリの英雄たちの運命に対する社会の大きな関心に鑑み、このテロのシナリオの考案者たちは、防衛者の死は、ウクライナにおける社会の緊張増大をもたらすに違いないと考えたのだろう」と指摘している。
ブダーノウ情報総局局長は、ウクライナ人捕虜の安全と然るべき拘束条件の保証者であるICRCと赤新月社連盟が、本件への然るべき評価を出し、真の状況とウクライナ防衛者殺人の理由の判明のために努力すべきだと強調した。
またブダーノウ氏は、「ウクライナは、状況分析と非拘束ウクライナ防衛者拘束条件の管理のために、ウクライナ代表者の現場への速やかなアクセスを要求する」と発言した。
同氏はさらに、ウクライナ人被拘束者の拘束条件の詳細なモニタリングと彼らの命と健康の維持の保証が不可欠だと強調した。
これに先立ち、ウクライナ軍参謀本部は、29日の被占領下ドネツィク州オレニウカにあるウクライナ人捕虜の収容されていた収容所に対する砲撃はロシア軍による意図的なものだと発表していた。
ウクライナの検事総局は29日、死者約40名、負傷者130名の被害を出した同日のドネツィク州オレニウカへのロシア連邦の砲撃についての刑事捜査を開始した。
なお、ドネツィク州オレニウカには、占領政権による濾過施設(編集注:厳重な人物調査を行う場所)が2つあることが知られていた。これら施設には、元治安機関職員、親ウクライナ活動家、調査にて「望ましくない」人物と認定された市民、マリウポリ市民の避難支援を行っていたボランティアなどが拘束されていた他、マリウポリ防衛戦に参加し、その後投降したウクライナ軍人も収容されていることが知られていた。
ウクライナ軍参謀本部は5月17日、ウクライナ最高軍司令部が東部マリウポリ製鉄工場「アゾフスタリ」に駐留する部隊の指揮官たちに対して、人員の命を守るよう命令を出したと発表していた。これを受け、264名の軍人をロシアに占領されている自治体に避難する作戦が実行された。その際、参謀本部は、内211名の軍人は人道回廊を通じて被占領下のオレニウカへと避難させられたとし、彼らの今後のウクライナ政府管理地域への帰還は、(被拘束者)交換手続きを通じて行われると説明していた。