【マレーシア機MH17撃墜事件】国際捜査チーム、ロシア軍内からの情報提供を呼びかけ
2014年7月のマレーシア航空機MH17撃墜事件の捜査を行う国際共同捜査チーム(JIT)は、撃墜に用いられた地対空ミサイルシステム「ブーク」の搬送元であるロシアの都市クルスクにおける、証拠となる写真、動画、公的文書を求めている。
ブレフト・フォン・デ・モスデイク・オランダ検察報道官がウクルインフォルムのハーグ特派員にコメントした。
同報道官は、「私たちは特に、写真、動画、軍の命令、その他の価値ある文書などの信頼できる情報を探している。記憶は失われる可能性があるが、文書は重大な証拠であり続ける。捜査の際、私たちはしばしば、人々が数年経ったにもかかわらず、より積極的に情報提供をする準備があることに気づいている。私たちは、ブーク操縦者や、ウクライナ東部へのこのシステムの配備を決定した指示系統についてよりよく知っている人全員に対して、情報提供を呼びかけている」と発言した。
なお、9月2日、オランダの法執行機関がロシア軍に対する情報提供を求める内容をウェブサイトに掲載しており、情報提供の仕方を説明した。
ロシア語にも翻訳された呼びかけ文には、「JITが行う捜査により、MH17が、クルスクの第53対空ミサイル旅団に属する地対空ミサイルシステム『ブーク』により発射されたミサイルにより撃墜されたことが示された。もしかしたら、この事実は、あなた方の街、あなた方の軍にとっての染みかもしれない。しかしながら、真実は、たとえそれが不快なものであっても、聞かれなければならない。私たちは、地対空ミサイル『ブーク』の操縦者、同兵器使用に関する決定採択の状況を確立するために捜査を継続している。私たちの捜査は、すでにかなり前に進んでいるが、それでもまだ完全ではない。私たちは、そのような悲劇がどうして起こり得たのかについて、ロシア軍人からも返答を得たいと思っている」と書かれている。
発表にはまた、多くの疑問への答えは、ロシアの都市クルスクにて見つけられると書かれている。
また、同日ユーチューブにて、MH17撃墜事件の犠牲者遺族による呼びかけ動画が公開された。
なお、マレーシア航空機撃墜事件とは、2014年7月17日、アムステルダムからクアラルンプールへ向かっていたマレーシア航空機MH17がウクライナ東部ドンバス地方上空で武装集団により撃墜され、乗客・乗員合計298名全員が死亡した事件をいう。
2016年9月、国際共同捜査チーム(JIT)は、同事件の技術捜査の結果として、同航空機が、親露武装集団支配地域から地対空ミサイルシステム「ブーク」により発射された弾頭「9M38」により撃墜されたことを判明させている。
同時に、民間調査グループ「ベリングキャット」は、MH17を撃墜した「ブーク」がロシア軍第53対空旅団発のものであることを判明させていた。ベリングキャットは、ソーシャル・メディアとオープンソース情報の独自の分析を通じて、MH17撃墜に関与した20名のロシア軍人を特定させた報告書を発表した。これら軍人の名前が写真付きで示されているこの報告書は、オランダの検察に渡されている。
2018年5月24日には、JITは、MH17を撃墜したロシアのミサイルの破片を公開しつつ、ミサイルがロシアのクルスクを拠点とするロシア軍第53対空ミサイル旅団に属するものであることが判明したと発表した。
なお、2019年6月、マレーシア航空機MH17撃墜事件の捜査を行う国際共同捜査チーム(JIT)は、同撃墜に関与した容疑者4名(イーゴリ・ギルキン(ロシア国籍、ロシア連邦軍元将校、ロシア連邦保安庁(FSB)元大佐)、セルゲイ・ドゥビンスキー(ロシア国籍、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)大佐)、オレグ・プラートフ(ロシア国籍、予備大佐)、レオニード・ハルチェンコ(ウクライナ国籍))を公表している。
MH17の公判は、2020年3月に始まっている。