ロシアは大規模ミサイル攻撃でウクライナの「パトリオット」ミサイルの備蓄を減らそうとしている=専門家
米ニュースサイト「ビジネスインサイダー」は、最近のロシアによるウクライナへの大規模なミサイル攻撃は広範な破壊をもたらしているが、その攻撃はさらに具体的な防空システム「パトリオット」のミサイルをウクライナに使わせるという目的を持っている可能性があると指摘した。
ビジネスインサイダーが複数専門家の見方を伝えた。
記事には、ロシアは米国議会が追加支援を決めようとしており、ウクライナがパトリオットのさらなるミサイルを入手することが制限される可能性があるタイミングをロシアは選んだと書かれている。そして、パトリオットが確保している防空がなければ、ロシアは、はるかに大きな損害を加えることができるようになり、攻撃失敗を恐れがなくなるという。
戦略・国際分析センターのシニア研究員を務めるロシア政治専門のジェイド・マックグリン氏は、パトリオットやその他のミサイルの備蓄を枯渇させることは「明らかに」ロシアの戦略の一部だと指摘した。
また、ウォール・ストリートジャーナルで外交担当チーフ記者を務めるヤロスラウ・トロフィモウ氏も同様の考えを示した。同氏は、ロシアはウクライナの保有するパトリオットの発射台の破壊もその後壊せるかもしれないと期待しながら、そのパトリオットのミサイルの備蓄を減らしたがっていると述べた。
記事には、ウクライナは、米国、ドイツ、オランダから、パトリオットの発射台を5基供与されていると書かれている。
なお、米国では、上院の共和党議員が、バイデン米大統領のさらなる対ウクライナ支援の採択要請を妨害しており、米国の南部国境への資金拠出という彼らの要求を履行して始めて、その支援を採択すると述べている。
マックグリン氏は、現在の米議会の情勢展開は、ロシアが12月末まで攻撃を控えていた理由を説明するものだとの見方を示した。
同時に、チャタムハウスのロシア専門家であるキール・ジャイルズ氏は、ロシアは、もしかしたら、自分の予定でミサイル攻撃をした可能性があるとし、ロシアは「米国の蛇口が閉ざされるかどうかには関係なく、外国からの供給量は制限されていく」ことを知っていた可能性を指摘した。
しかし、同氏は、米国からの保証された支援がないということが、ウクライナにとっての状況をはるかに複雑なものにしているとし、いつ防衛手段を使用するかということにつき、厳しい決断を迫られてしまっていると発言した。
これに先立ち、ロシア軍は昨年12月29日以降約300弾のミサイルと200機以上の自爆型無人機を使ってウクライナを攻撃していた。ゼレンシキー大統領は、これを受け、「さらなる防空システムとさらなる防空のためのミサイルがあれば、それは直接的に命を救う」と述べている。
なお、日本政府は、昨年12月22日、日本がライセンス生産を行っているパトリオット・ミサイルの米国への輸出を可能とする方針を決定している。これにより、米国がウクライナへと米国はより多くの防空システム用ミサイルを供与できるようにもなることが指摘されている。
写真:NOS