ベリングキャット、ウクライナの露傭兵集団拘束作戦失敗の調査結果を2週間以内に発表予定
民間調査グループ「ベリングキャット」のフリスト・グロゼフ(Christo Grozev)調査員は、ロシアの露民間軍事会社「ワグナー(ヴァグネル)」の傭兵を拘束するウクライナの作戦の失敗に関する調査のテキストは、もうすぐ公開されると発言した。
グロゼフ氏がウクライナのNV誌へのインタビュー時に発言した。
同氏は、ウクライナによるワグナー傭兵拘束作戦の失敗につき、「私は、ウクライナの透明な政治プロセスを通じて、その調査で真実がどれだけ公になるかにつき、非常に興味がある。私たちは、それがどんどん可視化されているのを目撃している。私は、私たちによる詳細の発表が公的な説明と食い違わないか心配している。調査文は公開の準備ができている。私たちは、おそらく数日以内、2週間でそれを公開する。その後、2時間の良質なドキュメンタリー映画を作ることに尽力する。それはオスカーを取るだろう。私は、そのために少なくともあと6か月はかかると確信している」と発言した。
同氏はまた、本件の調査を始めた理由として、「本件はロシアの特殊機関が実は皆が思っているよりもはるかに劣った仕事をしていることについての非常に素晴らしい証拠だからだ。本件は、ロシアの野党勢力が露特殊機関は完全無欠のモンスターではないと思えるようになる、希望を与えるものだ」と指摘した。
さらに同氏は、ウクライナ側は、失敗した作戦であれ、その結果について話すべきだった、話さなかったことがウクライナの過ちであるとし、「失敗というのは、作戦(の存在)を否定し始めた後の評価である。ただし、それは社会にて生じた評価である。それを失敗と呼ばないこともできたはずであり、『私たちは、(作戦を)最後まで遂行できなかったが、しかしロシアとその特殊機関を追いやる十分な証拠と情報は集めることができた。私たちは、それをオープンな空間に公開する』と言うこともできたはずだ。私の個人的考えでは、もし(ウクライナが)そうしていれば、それは成功となっていただろう」と指摘した。
その他同氏は、ワグナー傭兵のMH17事件への関与と、ウクライナの特殊機関がワグナー傭兵を雇ったことを報じたCNNの記事についても言及した。
同氏は、「その(編集注:ワグナー傭兵)内の2名は、(編集注:ブーク)発射地点にいたことを誇っていたが、正直に言って、それは客観的情報では確認されていない。その内の1人は、何らかの理由でベラルーシへ行くことを断ったが、もしかしたら、彼が最も賢かったのかもしれない。彼は、インタビューで、自らのキュレーターについて、彼を仕事に加えるべきだと説得しようとしていた。その際彼は、ブークを牽引していた車列と同行していたと述べ、そのブークの車列の宇露間国境からルハンシク州の配達ポイントまでの管理の役割を担っていたと述べていた。彼は、自分に指示を出していた露軍参謀本部情報総局(GRU)のキュレーターの名も出していた。彼は、全ての証言者の中で最も価値ある証言者かもしれないが、しかし彼はいなくなってしまった。あのような半分失敗した作戦の中でも、非常に多くの価値あるものがあるのだ。それは、傭兵が自らのウクライナ領での過去を話したあのような長いやりとりの中に見つけることができる。それは非常に価値ある証拠のデータベースなのだ」と発言した。
これに先立ち、9月8日、CNNがウクライナ東部での戦争犯罪容疑のかかっているロシアの民間軍事会社「ワグナー(ヴァグネル)」を拘束することを目的とし、昨年7月に失敗したウクライナの特殊作戦計画に関する独自調査記事を発表していた。
同調査では、CNNはウクライナの元情報機関職員(匿名)3名の話を伝えている。彼らの話によれば、彼らは特殊作戦の計画にて自らをロシアの民間軍事会社の傭兵のふりをしていたという。同社は、警備員の仕事だとして人々を雇いながら、彼らにベネズエラの石油施設の警護のために月5000米ドルの仕事の契約を提案していたという。
さらにウクライナ元情報機関職員の話では、米国があたかもウクライナの特殊作戦を「現金、技術、アドバイス」にて支援していたというが、他方で、CNNが米国政府の高官に問い合わせると、彼らは、そのような発言を否定し、「ウクライナのリスクある作戦が失敗したことの罪をなすりつける試みだ」と述べたと言う。
CNNは、その「ベネズエラの仕事」には何百ものロシアの傭兵が応募し、それが、ウクライナの情報機関にとってウクライナ東部での戦争犯罪容疑者を摘発するチャンスとなったと指摘している。傭兵たちは、自らが参加したウクライナ東部での軍事経験、戦闘行為に関する情報・証拠を示し始め、ウクライナ東部やその他の場所での自らの「活躍」に関する写真や動画の情報をを送り始めたという。
CNNは、その内の2名がMH17撃墜に関わり、さらに4名が、70名のウクライナ軍人が死亡したウクライナの軍用ヘリ撃墜に関与していたことを示したと伝えたという。
なお、本件は、昨年7月29日、ベラルーシ当局が、ミンスク近郊にてロシアの民間軍事会社「ワグナー」の傭兵を33名拘束した事件に関するもの。ウクライナ政権は、拘束された者のうち28名は過去にドンバス紛争に参加し、ウクライナ政権に対して戦っていた者だと指摘し、ベラルーシ側に対してウクライナへの引き渡しを要請したが、その後8月14日、ベラルーシは、これら拘束されたワグナー傭兵の内32名をロシア連邦に返還。ゼレンシキー大統領は、ベラルーシの決定につき「明らかに信頼、客観性、否定的影響への適切な評価を度外視した出来事だ」と伝えていた。
これに対して、昨年8月18日、ウクライナの記者のユーリー・ブトゥソウ氏が、ウクライナ治安機関内関係者発言だとして、ベラルーシで同国当局による露民間軍事会社「ワグナー」の傭兵の拘束はウクライナの特殊機関の特殊作戦がウクライナ大統領府からの情報流出により失敗したものだと発言。さらに、ポロシェンコ政権時の幹部であるオレクサンドル・トゥルチノウ元国家安全保障国防会議(NSDC)書記とユーリー・ルツェンコ元検事総長は、ベラルーシでの露民間軍事会社「ワグナー」傭兵拘束は、ウクライナの特殊機関の作戦が失敗したことによるものだとして、最高会議(国会)に捜査委員会を設置して捜査するよう主張していた。
一方、アンドリー・イェルマーク大統領府長官は、ウクライナ特殊機関がワグナー傭兵拘束の作戦を準備していたが、大統領府の会議の後の情報流出で失敗したかのような情報は、あらかじめ用意されていた偽情報キャンペーンだと発言した。