ゼレンシキー宇大統領、ショルツ独首相に対して「ウクライナとロシアの間でバランスを取ってはいけない」

ウクライナのゼレンシキー大統領は、ドイツが対露関係における自らの優先課題を明確に定めた上で、ショルツ首相がキーウ(キエフ)訪問の際に、ウクライナの欧州連合(EU)問題への支持を示すことを期待している。

ゼレンシキー大統領がドイツのZDF局へのインタビュー時に発言した

ゼレンシキー氏は、「私は、彼(ショルツ独首相)が個人的に私たちを支持すること、彼個人が、ウクライナはEUに加盟できる、6月にウクライナに加盟国地位が付与されると確信することを期待している」と発言した。

また、同氏は、ウクライナ政権はショルツ首相から、ドイツはウクライナを支持するとの確証を得ることを期待していると述べた。

同氏は、「彼(ショルツ氏)と彼の政府は、自分のために『股割り状態で、ウクライナとロシア関係の間でバランスを取ることはできない』という決定を下さねばならない。どこに優先課題を据えるかを、自分のために選ぶべきだ」と強調した。

その際ゼレンシキー氏は、ドイツは経済的挑戦を受けているのであり、一方を選ぶのが難しいことへの理解を示した。同時に同氏は、「あなた方がウクライナ側を選ぼうとロシア側を選ぼうと、それは経済的に苦しいものとなろう。しかし、あなたがより痛みの小さい道を選ぶのなら、それは誤ったアプローチとなる」と警告した。

同氏はさらに、ウクライナとドイツの国民の間の関係は素晴らしく、首脳間の関係も良好だが、ドイツ政権幹部には、ショルツ首相が就任するよりも以前から、ウクライナに対するある種の懐疑主義があるとし、その懐疑主義は特に、ウクライナのEUと北大西洋条約機構(NATO)への将来の加盟に関する場面で現れると指摘した。同時に同氏は、その姿勢は変わるだろうとの確信も示した。

ショルツ首相がドイツはウクライナに対して非常に大量の軍事支援を行っていると発言したことにつき、ゼレンシキー氏は、ドイツは、政治的にはすぐにウクライナを支持したが、武器供与に関しては、フランスと共に「他の私たちの隣国から少し遅れてやってきた」と指摘した。そして、ゼレンシキー氏は、「しかし、その時、戦争の始まりの時は、私たちには政治が必要だったのではなく、支援が必要だったのだ」と強調した。

同氏はまた、戦争の終結はロシアが戦争を最後まで完遂したがるかどうかに左右されると述べた。また、ウクライナが強くなればなるほど、ウクライナ軍がより良い装備を得れば得るほど、ウクライナからロシア軍を追い出す時間が短くなり、ロシアの終戦への準備が早くなるだろうと指摘した。

そして同氏は、「ウクライナが強くなるのが早くなればなるほど、また、ロシアを資金の大きな流れから遮断すべく、欧州が制裁において一体性をもって行動するのが速ければ速いほど、ロシアはより弱くなっていく」と述べ、時間はロシアのためにこそ有利なのであり、今行動しなければならないと発言した。

ロシアとの和平協議に関しては、ゼレンシキー氏は、以前と異なり、今は「何とか合意する」ためのバランスを見つける可能性は模索していないと発言した。同氏は、「私たちは、あちら側が戦争に終止符を打つ準備ができた時にのみ、協議を行う準備がある。そこに疑いはない。私たちには、むだなおしゃべりのための時間はないのだ」と発言した。

同氏はまた、2月24日以前の予防的な対露制裁発動の必要性、黒海地域戦略やパートナー国による黒海艦隊創設、防空システムなどについてのウクライナの意見に西側諸国がきちんと耳を貸さなかったことを批判した。「もし私の話を聞いていたら、ウクライナはロシア連邦の侵攻を止めるチャンスをもっとたくさん持っていただろう」と述べた。そして、ゼレンシキー氏は、バイデン米大統領をはじめとするウクライナがパートナー国の警告に耳を貸さなかったとする意見を否定しつつ、西側はまもなくロシアによる全面的な侵攻があることを確実に把握していたにもかかわらず、どうして飛行禁止空域が設定されず、どうして侵攻開始前にウクライナへ武器が供与されず、どうして一時的な予防制裁が発動されなかったのだろうか、と発言した。

同時にゼレンシキー氏は、全てのパートナー国に対して、サポートにつき謝意を表明した。

なお、ショルツ独首相は、今週ウクライナを訪問する予定だと報じられている。

写真:大統領府