EU上級代表、露宇戦争につき中南米諸国との対話の必要性に言及

ボレル欧州連合(EU)上級代表は、ラテンアメリカ諸国がロシア・ウクライナ戦争の原因よりも被害をより懸念していると指摘しつつ、世界は何が食糧危機、エネルギー危機を引き起こしたのか知るべきだと発言した。

ボレル上級代表がニューヨークでのアトランティック・カウンシルの議論「ウクライナからアメリカ諸国へ:グローバルな震撼に対する防備された回復」の際に発言した。欧州委員会ウェブサイトにボレル氏のスピーチの動画が掲載された

ボレル氏は、「アメリカ大陸の国々の同僚たちと話をしている時に生じるある種の感情がある。(中略)ここ(編集注:ラテンアメリカ)の人々は、戦争の、原因ではなく、被害の方にはるかに強い懸念を抱いている。しかし、そこにはまた、状況からの出口へ向かう道標もある。人々はこの戦争の終結を望んでおり、早期終結を望んでいる。しかし、戦争はどのように終わるべきだろうか? 私たちは、ロシアがこの戦争に勝ってはならないというアイデアを守らねばならない。ロシアは隣国を侵略してはいけないし、隣国の一部を奪取していはいけない。それは、あなた方と私たちが国際社会、特にラテンアメリカに対して伝えねばならない重要なメッセージである」と発言した。

同氏はまた、ラテンアメリカの国々にとって、ロシアの対ウクライナ侵略の被害は非常に重大なものとなっていると指摘した。そして、この地域の経済発展指数が世界で最も低いこと、インフレ率が過去15年間で最も高いこと、貧困が急速に広まっており、多くの人が飢餓の脅威に晒されており、その数はコロナ危機の前には約400万人だったが、危機後には800万人になり、現在は3000万人まで増えていると指摘した。同氏は、そのためこの地域は真に経済的ショックを経験しているのだと強調した。

加えて同氏は、「この状況は食糧危機、エネルギー危機を反映したものだ。彼らにとって、それは食べ物、石油の危機であり、そしてかなりの程度、肥料の危機である。この地域は大きなストレス下にあるのだ。ここでは財政問題が強まり、地域は対外資本流入がほぼ半減している。それがロシアのナラティブが全世界で説得しようとしているような制裁のせいではないことを説明せねばならない。戦争がウクライナの穀物と肥料の妨害の原因なのだ」と発言した。

同氏はまた、EUは「グリーン」革命、デジタル移行、食糧安全保証分野の挑戦克服を含め、ラテンアメリカ諸国を全面的に支援し続けると述べ、全ての議題が協議テーブルにあり続けていると指摘した。同時に同氏は、この地域の国々が国際法の基本的原則を一貫して支持し続けることを期待していると述べた。

同氏は、「私たちがラテンアメリカの人々から必要としていることは、国際法支持、国境不可侵の原則、領土一体性、主権の支持への断固としたコミットメントである。ラテンアメリカの人々は、過去に自らの主権や領土が攻撃され、深い苦しみを味わってきたのであり、その点はよく理解している。そのため、本件は、グローバルな挑戦を前に団結する良い機会なのだ」と指摘した。

写真:DPA