駐ウクライナG7大使、同国の司法改革の進展を期待
ウクライナに駐在するG7の大使たちによるウクライナ国内改革支援グループ「G7大使ウクライナ・サポート・グループ」は12日、ウクライナ大統領府のスミルノウ副長官と会談し、ウクライナの司法改革に関する協議を行った。
G7大使ウクライナ・サポート・グループがツイッター・アカウントで報告した。
大使たちは、同日のスミルノウ副長官との会合にて、高等司法評議会と高等裁判官選考委員会の活動や憲法司法の改革を含め、ウクライナの司法改革をさらに進めることの重要性につき見解を共有したと伝えた。その際、大使たちは、それらの改革はウクライナのEUへ進む道にとって決定的に重要だと指摘した。
また、同会合につき、ウクライナ大統領府も発表を行った。
発表によれば、スミルノウ副長官は、国際パートナーから司法改革における、高等司法評議会と高等裁判官選考委員会の刷新を考慮した今後の行動に関する勧告を受け取ったと発言した。
同氏は、「私は、その提案に強く感謝している。特に、最高裁判所の活動の補完と国家司法運営局改革に関する意見の一致が見られることをうれしく思っている」と発言した。
また同氏は、12日に裁判官大会が自らの選出枠を使って、高等司法評議会のメンバーを選出したことにつき歓迎しつつ、同時に今後は規律検査官局を設置する必要があると伝えた。
スミルノウ氏はまた、憲法裁判所裁判官の透明で競争ある選考の導入、憲法裁判所裁判官への懲戒手続きと倫理要件の強化についての勧告につき、多くの問題は、最高会議(国会)がまだ採択していない、憲法手続き法案にて解決されるだろうと指摘した。
これに対して、現在G7大使グループの議長を務める松田日本大使は、司法改革がG7大使館とウクライナ政権にとっての優先課題であることが重要だと強調した。
ブリンク米大使は、司法改革は、多くの努力を要するものであり、投資の安全の重要な保証だと指摘した。同氏は、改革が人を移動させるだけのものではなく、強固で効果的な機構を作るものだとするスミルノウ氏の立場を支持した。
大統領府は、大使たちは裁判官大会による自らの選出枠を使った高等司法評議会の8名のメンバーの選出の決定につき歓迎し、今後の司法改革での進展への期待を表明した。
なお、ウクライナ裁判官大会は、11日に5名、12日に3名の高等司法評議会の新しいメンバーを選出していた。
これに先立ち、ウクライナに駐在するG7の大使たちによるウクライナ国内改革支援グループ「G7大使ウクライナ・サポート・グループ」は10日、裁判官大会が高等司法評議会の8人の新しいメンバーを任命することと同評議会の速やかな活動の開始への期待を表明していた。
ウクライナでは、1月11日〜13日に、臨時ウクライナ裁判官大会が開催されている。同大会の2つの主要な議題は、8名の高等司法評議会の8名の新しいメンバーの選出と、ウクライナ憲法裁判所の2名の裁判官の選出となっている。
なお、2021年、ウクライナ最高会議は、同国の裁判(司法)改革を行う上で重要な法案を複数採択していた。
同年8月3日、ゼレンシキー大統領は、裁判改革を実現するための重要法とされる、高等裁判官選考委員会再編法(第3711ーd)と、高等司法評議会再編法(第5068)に署名し、発効させていた。両法は、国際専門家を参加させた上でのウクライナ司法政権の人員刷新を定めている。
とりわけ、高等司法評議会再編法は、高等司法評議会のメンバーの公正性の調査手続きを定め、また裁判官に対する懲罰手続きも変更するもの。「高等司法評議会」とは、裁判官の任命や、裁判官への懲罰、解任を最終的に決定する、司法システム上の重要機関である。同法は、「倫理評議会」の設置を定めている。同評議会は、ウクライナ裁判官評議会が定める裁判官あるいは退官裁判官から計3名と、国際機関が定める3名(国際専門家)の計6名で構成される。この際、倫理評議会では、「公正選考委員会」同様、国際専門家が決定的投票権を得る。
この倫理評議会は、高等司法評議会のメンバー候補の専門倫理と公正さの基準を調査、及び評議会設立後3か月以内に高等司法評議会現職メンバーの専門倫理と公正さの基準を調査する。倫理評議会は、評価に応じて現職メンバーの解任勧告を行うことができる。
2022年6月17日、欧州委員会は、ウクライナへのEU加盟候補国地位付与の勧告に並び、今後ウクライナにより行われる課題のリストを公開していた。その際の勧告には、主に、法の支配強化と汚職対策の分野の課題が記されており、その中には「高等司法評議会メンバーの候補の倫理評議会による公正性審査と、ウクライナ高等裁判官選考委員会創設のための候補選択の終了」も含まれている。