クリミア・ハン時代の宮殿、ロシア占領政権が修理と称して破壊=文化相
被占領下クリミアのバフチサライ市にある、クリミア・ハン時代のハン(君主)が利用していた宮殿を、占領政権が勝手に「修理」しているが、この作業が実際には世界的価値のある歴史建築の破壊となっている。
12日、イェウヘン・ニシチューク文化相の発言をクリミア・タタール系テレビ局「ATR」が伝えた。
ニシチューク文化相は、「(修理と呼ばれる作業は)世界的価値のある歴史的建築物の破壊である。議論の余地もない。私たちは、この犯罪行為に関する、写真も情報も持っている。これは、『修理』という名のもとに、歴史的建築物の真の姿を破壊するという、例となっている」と発言した。
同大臣は、ウクライナ政府はユネスコ(国連教育科学文化機関)の監視団が速やかに「ハンの宮殿」を訪問し、この破壊を停止することを期待していると述べた。ユネスコ監視団のクリミア訪問は、本年春に実現を予定しているとのこと。大臣は、国際的な専門家が直接占領者が「ハンの宮殿」に対して行っていることを見ることが重要であると指摘した。
大臣は、17~18世紀に建設されたこの木造の宮殿に、現在、金属やコンクリートを使って「修理」が行われていることを指摘した。
これまでの報道では、マズール文化次官が、ウクライナは被占領下クリミアのバフチサライ市にあるハンの宮殿を保護するために、同宮殿をユネスコのリストに入れることを検討していると述べていた。
クリミアに存在するロシアの占領政権は、「ハンの宮殿」の「修理」を主導しており、宮殿施設内のモスクの屋根の瓦(かわら)を詳細な分析なく変更したり、宮殿の外装や内装を変更したりし、宮殿の保存状態を害していることが判明している。また、宮殿の主要施設の周辺に、鉄骨建築物が建てられており、これにより地盤沈下の恐れが生じていることが指摘されている。さらに、墓石や宮殿の壁に刻まれた文字などが保護されていない他、木造部分をコンクリートに代える作業も確認されている。
バフチサライの「ハンの宮殿」とは、世界で唯一、クリミア・タタール式宮殿建築物として残っているものである。ロシアによるクリミア占領の前に、同宮殿は、ユネスコの暫定文化遺産リストに加えられ、保護対象となっていた。