ウクライナの報道倫理委員会、最近の記者への圧力を「民主主義にとっての脅威」と警告
ウクライナの報道倫理委員会は18日、昨今の調査報道を行う国内の記者に対する圧力行為に対する怒りを表明し、それら事件はウクライナの民主主義と未来にとって危険な脅威だと指摘した。
報道倫理委員会が声明を発出した。
声明には、「盗聴、盗撮、住居への勝手な訪問、ソーシャルメディア上での嫌がらせ、法律違反だと主張する非難、これらは全て、私たちが調査報道記者とそのチームに対する脅迫と評価している。最近のユーリー・ニコロウとデニス・ビフスへの攻撃は、記者の社会における信頼を落とすことを目的とした事前に計画された一連の行動に見える。そのような攻撃の目的は、著名な記者の評判を落とし、ウクライナにおける調査報道への不信を引き起こすことだ」と書かれている。
また委員会は、報道関係者の私生活への介入によって、秘匿情報源が明かされてしまうおそれがあると強調した。それは情報源にとって脅威を生み出し、将来記者全員にとっての情報探しが困難になると指摘されている。
さらに委員会は、ウクライナにおける調査報道は戒厳令下、情報不開示、社会における政権コントロール行為の機会の制限という条件下において、大きな役割を果たしていると訴えた。
声明には、「報道倫理委員会は、脅迫や圧力を背景に記者が自己検閲に陥ったり、鮮烈なテーマを断念したりすることは受け入れられないと考えている。罪人が真に追及されることによってのみ、恥ずべき記者への脅迫、彼らの活動の侮辱という一連の行動を止めることが可能となる」と強調されている。
その上で委員会は、国民の憲法上の権利遵守の保証者はウクライナ大統領であるとし、大統領に対して、民主主義と表現の自由の防衛能力を示すよう要求した。
さらに委員会は、「私たちは、保安庁(SBU)、検事総局、国家警察をはじめ、法執行機関に対して、前述の圧力事例につき包括的かつ偏りのない捜査を行うよう要請する。ウクライナの民主主義と議会主義への深刻な脅威という観点から、議会に対して、記者に対する攻撃捜査の独立した監視も要請する。このような犯罪が負処罰であってはならない」と強調した。
これに先立ち、16日、調査報道プロジェクトとして知られる「Bihus」のデニス・ビフス代表は、Bihusのメンバーが禁止された物品を使用したなどとする挑発的な内容の動画が拡散されたと発表し、さらに、メンバーが違法に尾行されたり、盗聴されたりしてきたと発表した。
これを受けて、ウクライナの報道機関を調査する市民団体「マス情報研究所(IMI)」のオクサーナ・ロマニューク所長は16日、ウクライナの報道関係者が体系的な圧力を受けているとして、政権に対応を要求した。同氏は、メディアを狙った攻撃、追跡、秘密裏の動画撮影というのは、民主国家では看過し得ないものだと訴えていた。
また、同国最高会議(国会)で「表現の自由」委員会の委員長を務めるヤロスラウ・ユルチシン委員長(野党会派「声党」所属)は、法執行機関に対する要請を準備しているとコメントしていた。
ゼレンシキー大統領は17日、最近国内で起きている報道関係者に対する攻撃事案につき、記者に対する圧力はどんなものも看過できないとコメントしている。