「ウクライナの反転攻勢は前進する中、ロシアは自らを引き裂いている」=元米国務省特別代表論考
30日、ヴォルカー氏がCEPAにウクライナの反転攻勢の戦況に関する論考を掲載した。
ヴォルカー氏は、論考の冒頭にて「ウクライナの自由を巡る戦いについて、楽観的になれる良い理由がある」と指摘している。
同氏はまた、西側のコメンテーターの中には、ウクライナの反転攻勢があたかも失敗しているとか、キーウが戦術的にも戦略的にもひどい決定を採択しているとか、西側はこれ以上ウクライナを軍事的にも財政的にも現在の水準で支持できないだとか、ウクライナはもしかしたら失った領土を取り返せず、ロシアと協議を始めねばならないとかの主張をしている者がいると指摘した。そして、同氏は、ウクライナ人は、現実を直視せよ、という言葉で、実質的には「あきらめろ」と言われていると説明した。
その際同氏は、「(編集注:そのようなウクライナへの協議開始の呼びかけは)何が何でも、ロシアとの関係を安定させたいという願望を重視する人から来ている」と指摘した。
その上で同氏は、他方でウクライナ軍は、ロシア軍を整然と弱体化させ、疲弊させており、ロシアの兵站に多大なダメージを加え、戦争をロシアのホームであるモスクワへと送り込み、さらにはロシアの軍用飛行場、海軍戦力、海運に対して包括的な無人機攻撃を仕掛けていると伝えた。
同氏は、「ロシア軍はバフムートを破壊し、一時的に占領して以来、領土を獲得していない。一方で、ウクライナ軍は、前線全体に圧力をかけ続け、ロシアに複数の地域で防衛を強いている。南部のロボティネ近くでは、重地雷敷設地域の第一線を突破した。これにより、クリミアとヘルソン州とザポリッジャ州へのロシアの補給路を遮断する道が開かれつつある」と説明した。
同時に同氏は、「ロシアでは、私たちは、深刻な反乱、政権が画策したモスクワ近郊での飛行機爆破による蜂起指導者の暗殺、徴兵回避のためのロシアの若者100万人の逃亡、民族的にロシア人ではない民族の地域で高まる苛立ちなどが見られる」と指摘した。
その上で同氏は、現状を「ウクライナは一歩ずつ前進しているのに対して、ロシアは自らをばらばらに引き裂いている」と形容した。
また同氏は、ウクライナの反転攻勢で迅速に甚大な領土を奪還できると期待していた人たちは、その期待が間違っていたのだと述べた上で、ロシアと異なり、ウクライナは自軍兵士のの命を守ることを重視し、慎重かつ整然と、忍耐強く前進していると指摘した。
他方で同氏は、「もちろん、戦車M1A1『エイブラムス』や、戦闘機F16や、長射程ミサイル『エイタクムス』をすでに保有していれば、全てはもっと速く進んでいるかもしれないが、西側の意思決定の遅さにより、それらの兵器はまだ戦場に届いていない。そして、それでも、ウクライナは前進しているのだ」と強調した。