過去4年間、1万1000名以上のウクライナ軍人と治安機関職員が、カナダの訓練ミッション「UNIFER」の一環でカナダ指導官が無償で提供する訓練コースを受けた。UNIFIERは、ウクライナの防衛能力向上のためにカナダが実施している支援の一つである。同ミッションは、2022年まで継続されることが最近決定されている。
このミッションが始まったのは、2015年末であり、今日までに、約200名のカナダ軍人がローテーションをしながらウクライナに常駐している。ウクルインフォルムは、第6ローテーションの指揮官の一人、ヴィンセント・ガノン上級曹長から話を聞くことができた。ガノン上級曹長は、最近ウクライナでの半年間の職務を終えたところである。
最大の困難は言語問題
カナダの軍人は、すでに4年間ウクライナ軍人を訓練しています。カナダの訓練プログラムは、現状の要請に合致するものでしょうか。
これまでの6度のローテーションの間、ミッションは著しい変化を経ています。最初のローテーションが主に集団訓練に焦点を当て、リヴィウ州ヤヴォリウの国際平和維持・安全保障センターで活動していたのと比べ、過去数年は別の内容も訓練プログラムに加えられています。とりわけ、若い将校、エンジニア、衛生兵の育成です。さらに、私たちは、一か所でなく、ウクライナ全土の9つの異なる場所で活動しています。
ウクライナ側は、カナダの訓練に関心を持っていますか。
ええ、彼らは、私たちの提案しているもの、具体的には、北大西洋条約機構(NATO)加盟国が行っているのと非常に似た、訓練への体系的アプローチに非常に関心を持っています。
訓練の際の最大の困難は何でしょうか。
複数の挑戦があります。その一つは、言語です。私たちの部隊は、フランス語が活動言語です。英語は、私たちのコミュニケーションにおける2番目の言語です。一方、ウクライナ側は、ウクライナ語と英語を使います。そのため、私たちはしばしば、通訳者に支援を依頼せざるを得なくなっています。コミュニケーション関係は大きな困難です。
ハルジット・サジャン加国防相は、UNIFERミッションは経験の相互交換プロセスであると発言していました。ウクライナ側は、カナダ側に何を教えられるのでしょうか。
2014年以降、ウクライナ人は、定期的に軍事作戦に参加しており、非常にフレッシュかつ注目に値する経験を有しています。私たちはそれを受けとることができています。
ウクライナ軍人の精神状態と決断力は高い
ウクライナでの一定期間の活動を終えたあなたは、ウクライナ軍についてどのような考えを抱いていますか。ウクライナ軍はどの程度プロフェッショナルなのでしょうか。
ウクライナ軍は、非常に急速に進歩しています。彼らの精神状態は非常に高いまま推移しています。ウクライナの軍人は、彼らの装備、サポート、総合運用が改善されていると述べています。ウクライナ軍の専門性は、ハイテンポで成長しています。
ウクライナ軍の最大の長所は何でしょうか。
私は、決断力だと思います。彼らは、最新かつ長期にわたり引き伸ばされた紛争に加わっているからです。決断力と精神状態がウクライナの軍人の決定的特長です。それがなければ、彼らは前線を維持することができていないでしょう。
ウクライナ軍が対峙する現在の最大の挑戦は何でしょうか。
紛争の長期化です。軍人の疲弊、疲労蓄積の兆候があります。それは、彼らが何年にもわたり前線にローテーションで赴いているからです。しかしながら、私たちが理解する限り、ウクライナ国民がこのことを理解しており、軍人が物理的にも精神的にも健康であり続けられるような支援を提案しています。
あなたのチームには、ウクライナ系のメンバーがいますか。もしそうなら、彼らは自らの仕事に特別な役割を感じているのでしょうか。
数人ウクライナ系軍人がいます(編集注:カナダは、ウクライナ系カナダ国民が多いことで知られる)。彼らはウクライナ語を知っているので、通訳やアドバイザーとして活躍しています。彼らは積極的に役割をこなしており、いわば「ホーム」へ戻るこの機会を非常に誇っています。
ウクライナ市民社会はカナダ軍人を歓迎
あなた方はは、地元住民ともコミュニケーションをとっていますか。住民は、カナダ軍人のプレゼンスにどのように反応していますか。
私たちは、ウクライナ国内を軍服でオープンに移動していますが、どこでも非常に肯定的に受け止められています。ウクライナ西部、キーウ(キエフ)、その他の地域を問わず、どこでも非常に肯定的です。
カナダ軍の訓練が実際の戦場で役に立ったといったような情報が入ってきますか。
ええ。私たちはそれを「フィードバック・ループ(feedback loop)」と呼びます。私たちは、集団訓練や個人訓練を行っており、様々な視点から私たちの訓練の有効性を見ることができます。集団訓練後のフィードバックを受け取ってみると、課題が有益であったことがわかります。最善の例は、衛生兵が能力を習得したことです。彼らの活動は、ウクライナ軍人の命を救うという、現実的な結果を出しています。
カナダは、他国でも軍事訓練ミッションを行っていますか。行っているのであれば、ウクライナでのUNIFERと他国でのミッションは何が違うのでしょうか。
カナダは、確かに、別の国、たとえば、アフガニスタン、イラク、アフリカの複数の地域にて、治安面での可能性を発展させる支援をしています。ウクライナ軍と、私たちがこれまで協力したことのあるその他の軍との違いは、規模がより大きく、より成熟しており、より進歩的な組織である点です。
可能な限り長く持続する効果の実現を目指している
ウクライナ軍人は現在9つの地点でカナダの訓練を受けています。しかし、UNIFERの枠組みでは、カナダ軍人は全体で200名程度しかウクライナに滞在していません。定められた課題を履行するのに、この人員数は十分なのでしょうか。
理想的に全てをこなそうとすると、人員は常に不足するものです。しかし、私たちは、人員を含め、現状のリソースを非常に効果的に利用しています。私たちは、不可欠な能力を有す軍人を複数の正しい地点に派遣していることで、通常より多くの人員をひつようとするような課題が遂行できていると確信しています。
あなた方は、ウクライナ軍司令部に諮問的サポートも与えていますか。
それは、よく検討すべき良い問題です。ローテーションが6回行われており、私たちは集団訓練も始めました。現状は、より構造的効果・長期的効果を達成することに努力を向けています。よって、ウクライナ軍におけるより上層の司令部を関与させることは、今後のステップとなります。
現在のミッションのマンデートが対象としていない訓練はありますか。
私たちは、定められた課題の枠組み内でのみ活動しています。私達には、複数の訓練グループがあり、これらが異なる努力を行い、できるだけ根源的な結果を残せるように、可能性の拡大を常に模索しています。その際、私たちは常に、私たちの活動は長期的効果を有さねばならないということを意識しています。
マクシム・ナリヴァイコ、オタワ
写真:Aviator Stéphanie Labossière, Joint Task Force-Ukraine
写真:Aviator Stéphanie Labossière, Joint Task Force-Ukraine