ウクライナ政権による北方領土関連決定についての駐日大使と専門家の見方
コルスンスキー駐日ウクライナ大使がウクルインフォルムにコメントを提供した。
コルスンスキー氏は、「最高会議とウクライナ大統領の(北方領土に関する)決定は、日本社会にて、友好国の公正な行動として肯定的に受け止められている。日本は、北方領土を力で返還するつもりはないが、しかし、特にロシアの対ウクライナ侵略を考慮すると、政治・法の分野でのウクライナと日本の共通の行動が、侵略国への懲罰と同国が占領する全ての領土の返還を促進しなければならない」と発言した。
コルスンスキー氏はまた、ウクライナが北方四島を日本に属していると承認したことは公正であり、法的にも根拠のあることだと強調した。また、同氏は、北方領土はソ連によって占領され、現在もロシアの占領下にあることを喚起した。
さらに同氏は、「最高会議とウクライナ大統領の決定は、これまで存在した主権ある独立国家ウクライナとソ連の遺産の間に存在した対立を実質的に取り除くものだ」と指摘した。
加えて同氏は、ソ連はその日本の4島を違法に占領し、住民をそこから追放し、他国領土の実質的な「併合」を行ったのだと発言した。
同氏は、「ロシアはソ連の継承国であり、占領政策を継続している。しかし、それはウクライナにも、他の全ての民主的世界にも関係することではない。今後、ウクライナの立場は明確かつ理解できるものとなる。私たちは、択捉島、国後島、色丹島、歯舞諸島における日本の主権を認め、国際社会に対して、これらの日本への返還を呼びかける」と説明した。
その他同氏は、日本は長年北方領土問題を協議を通じた返還で解決しようとしていたが、成功はしなかったとし、他方でロシアはそのような返還は不可能だと何度も繰り返していたと発言した。
さらに同氏は、ロシアは、北方領土が合意に反して制圧されたことを隠しているが、自らの違法行為に疑問を抱くことを断固として拒否し続けていると指摘した。
また同氏は、択捉島がロシアによって軍事基地化されており、弾道ミサイル、巡航ミサイルが配備され、ロシア海軍が展開しているとし、「これらの領土は全く発展していない」と発言した。
また、ウクライナ中国研究者協会所属のオレクシー・コーヴァリ氏は、ウクルインフォルムへのコメントにおいて、ウクライナによる北方領土を日本領と承認する決定は、ロシアが始めた対ウクライナ戦争が続く中で、ウクライナにとっては論理的な行動だとの味方を示した。
コーヴァリ氏は、「それは論理的行動だ。現在ウクライナが置かれたロシアとの戦争という状況からして、ロシアが占領するその他の国の領土に関する自らの立場を表明するのは論理的だ」と発言した。また同氏は、それは、ロシアに占領されているジョージア領にも関わることだと補足した。
同氏はまた、日本政府は長年北方領土問題の解決努力をしてきたし、しばらくの間、ロシアとの間で合意を達成する道を模索する際に、ロシアによる4島の実質的占領についての言及を避けてきたとも発言した。
同氏は、「日本は、クリル問題(ママ)解決へと政治的、人道的、経済的なアプローチを提案してきたし、2島のみ(の返還)で和平合意署名にすら合意した(ママ)。それは非常に真剣な譲歩だ。しかし、ロシアは、全て拒否した」と指摘した。
さらに同氏は、日本政府は、長年の努力が失敗したことが判明した後、「北方領土は日本が主権を有する領土」であり、「日本の固有の領土」であるが、現在ロシアに占領されている、という以前の立場に回帰したと説明した。
そして同氏は、「日本人は、プーチンとは領土問題を協議で解決することはできないことを理解したのだ」と指摘した。
その他同氏は、ウクライナでもそのような立場の変遷があったとし、「ゼレンシキー宇大統領は、クリミア問題について15年間協議するという可能性を排除していなかったが、現在ウクライナは、平和的手段で問題を解決する能力をロシアに期待するのは無駄だと理解した。今、大統領は、軍事的手段での領土の奪還に代替はないと発言している」と指摘した(編集注:ママ。ゼレンシキー大統領は、クリミアに関して協議で返還されることの可能性も完全には排除しない発言もしている)。
同氏は、「ウクライナは、ロシアと合意することは不可能であり、意味がないという点で日本を支持しているのだ」と発言し、「それはまた、東アジア、アジア全体の状況について、ウクライナが無関心ではないこと、ウクライナは今後もこの地域へさらに注意を向けていくことを示している」と強調した。
これに先立ち、ゼレンシキー宇大統領は7日、ウクライナは、現時点でロシアの占領下にある北方領土を含めた、日本の主権と領土一体性への尊重を確認したとし、関連の大統領令に署名したことを発表していた。また、同日、ウクライナ最高会議は、北方領土問題において日本の立場への支持を表明した上で、国際社会に対して、北方領土の地位問題の解決を支持するよう呼びかける決議を採択していた。