ドミトロ・クレーバ・ウクライナ外相
「平和サミット」後は、ロシアが自らの国際的イニシアティブを推進することがはるかに難しくなる
09.06.2024 00:44

ここ数日や今後1か月の国際行事の密度は、世界中の政治家、外交官、専門家の仕事を増やしている。しかし、これらの出来事のウクライナへの影響に関する予想は概ね、「コップの水は半分しか入っていない、あるいは、半分も入っている」というような、物事の見方に基づいている。

そのため、ウクルインフォルムは、ドミトロー・クレーバ外相と時計の針を調整することに決め、彼にウクライナの国益の観点からの移ろいやすい地政学的状況についてコメントを求めた。忙しいスケジュールのために、外相は、私たちの質問に書面で回答した。

私たちは、「平和サミット」によってモスクワでヒステリーが広まっていることに満足している

6月15、16日にスイスで開催される第1回「平和サミット」へは、現在107の国・国際機関が参加を認めています。ウクライナとロシアの間の外交的闘いは、現時点で、いくつの国を巡って行われていますか? 「サミット」の参加国の数は、あとどれぐらい変わる可能性がありますか?

それは私たちが今、全大陸、世界中の隅々で行なっているグローバルな外交闘争です。そして、「サミット」に近付けば近付くほど、この闘いは激しくなってきています。ロシアとウクライナの外交の力は、リソースの点では、控え目に言っても、同等ではありません。しかし、私たちの同盟国や、行動の質と体系性によって私たちは敵に勝っています。

過去数日、数週間のゼレンシキー大統領や彼のチーム。ウクライナ外交官全員のの外交活動の地理的広がりと集中力を見てください。ウクライナが積極的で、力強く、軍事用語で言うところの、特に敵の深く後衛部分で、行動していることがわかるでしょう。

私たちは、「平和サミット」によってモスクワにヒステリーが広まっていることに満足しています。私たちはそれを、彼らの行動や、「サミット」開催を妨害する試みで見ています。彼らは、世界がウクライナを支持する欧米と、ロシアを支持するその他の国々に分断されるという、ロシアの神話が、この「サミット」にかかっていることを理解しているのです。

実際、世界の大多数は国連憲章と国際法を支持しています。なぜなら、侵略者が隣国に侵攻し、蛮行を働き、他国の領土を奪うような世界に住みたいと思う者は誰もいないからです。「平和サミット」は、ウクライナの立場を強化し、私たちの国にとっての公正な平和を回復するための重要な一歩を踏み出すことをはっきりと確認するものです。

ウクライナは、「グローバル平和サミット」の結果がどのようなものなら成功だと考えていますか? ウクライナ側の見方では、「サミット」はウクライナの「平和の公式」を中心にして世界をまとめなければなりません。その目的はどれほど達成できていますか? 中国は、自分のウクライナ戦争解決計画をすでに20か国以上が支持したと発表しています。「サミット」の参加国と非参加国の間に分断線が生じているようには見えませんか?

ウクライナは、平和達成の手段に関する見方について中国と積極的な対話を行なっています。私たちは、領土一体性の原則は私たち両国にとっての基本であり、よって、それがあらゆる解決計画の基本でなければならない、ということで中国を説得しています。

私たちは、「平和の公式」こそが、領土一体性と国連憲章への尊重の原則に基づく公正な平和へと進む可能性を与える基盤だと確信しています。

ウクライナと中国の間には、現時点でそのテーマを巡る活発な対話が続いています。私たちは、中国の立場に公の場で回答し、今週北京で、両国外務省の間の政治協議が久々に開催されました。

私たちはまた、中国の「平和サミット」への参加は平和を近付け、ロシア・ウクライナ戦争に関する中国の真にバランスのとれた立場を示す正しい行動となるものだと確信しています。

ウクライナの目的は引き続き「平和の公式」の全項目の実現

報道によれば、スイスにおける「サミット」は、平和の公式の3つの項目、すなわち、核安全保障、食料安全保障、さらわれた児童の返還、に集中するとのことです。同時に、決定案には、ウクライナの「平和の公式」に関する協議のためにロシア代表者を今後関与させるという表現が入るとも伝えられています。

私たちの立場は非常に公正です。私たちは皆、ロシアが現在平和へ向けた準備がないことを理解しています。ロシアは、戦争を望み、ウクライナの破滅を望んでいます。このような条件下では、平和推進は段階的なものになります。だからこそ、「平和の公式」から最も広範なコンセンサスのある3つの項目が選ばれたのです。その3項目から始めつつ、その後、残りの項目に進んでいきます。強調しますが、ウクライナの目的は引き続き「平和の公式」の全項目の履行です。

並行してロシアを関与させるという原則は、2022年に「黒海穀物イニシアティブ」に関する協議の際にすでに行われているものです。ウクライナはいくつかの条件につきいくつかの国と協議しており、その後それらの国がそのことについてロシアと協議しています。当時は、トルコと国連でしたが、今は、それはよりはるかに大規模なイニシアティブであり、挑戦のレベルももっと大きくなっています。

いずれはロシアとの協議がなければならないとして、「平和サミット」はウクライナの立場をどれだけ強めるものなのでしょうか? というのも、「サミット」参加国が前述3項目を支持したところで、その項目をロシアに履行させられることにはならないでしょう。

「平和サミット」は、当然ながらウクライナの立場を強化します。「サミット」は、公正な平和達成の手段と国連憲章原則の支持に関するビジョンがウクライナだけのものではないこと、それが世界の大多数の意見であることを確認します。ロシアのような国ですら、世界の大多数の意見を完全に無視することはできません。

その行事は、多くの国の政府の算段も変えます。「平和サミット」後は、ロシアは自らの国際的イニシアティブを推進することがはるかに難しくなるでしょう。

私たちは皆、EUとの交渉のダイナミズムが勢いを増すよう、活動している

ウクライナは、EU加盟交渉に関する政府間会議が6月中に開催されるよう全力を尽くしており、ウクライナ政府チームは6月25〜27日の同会議に向けて準備をしています。今のところ、全てはウクライナの計画どおりに進んでいますか? その会議を開催する上で障害となり得ることは何でしょうか?

ゼレンシキー大統領個人が、ウクライナの欧州の夢を叶えるために、甚大な努力を尽くしています。現在、私たちはその困難な道の結果をすでに目にしています。非常に大切なのは、ウクライナの進展をEU側も認めていることです。正にそのために、私たちは、私たちの国のEU加盟を真に近付ける歴史的決定の採択を目にしているのです。

ウクライナは、欧州委員会の7つの勧告を履行しました。それは、EU理事会によるウクライナのEU加盟に関する協議枠組み採択の根拠となっています。

EU内部の議論とウクライナ・EU間対話の結果が示しているように、交渉枠組みの採択と、加盟交渉開始となる最初の政府間会議の開催が、ベルギーが議長である6月中に達成できそうになっています。当然、何らの緊急事態も生じなければ、ですが。

EU理事会の一般会合の後、暫定で、ルクセンブルクにて6月25日にウクライナとモルドバとの最初の政府間会議が予定されています。まずウクライナと、それからモルドバとです。それらは、オリヴェール・ヴァールヘイ(近隣・拡大政策担当)欧州委員のレベルで欧州委員会の代表者の参加を得た上で、加盟国の欧州問題相のレベルで開催されます。

実質的な交渉開始の後、最初のクラスターの枠組みでのスクリーニングに関する二者間会議は、7月のはじめにも始まるかもしれません。

交渉枠組みは現時点で、EU加盟国常駐代表委員会で同意を得ているところです。

私たち皆、協議プロセスのダイナミズムが勢いを増し、EU加盟国が政治的意志を発揮し、今月中に第1回政府間会議が開催され、協議枠組みと交渉の実質的開始を採択されるよう、作業しています。

勝利のために、あらゆる政治勢力、首脳と作業をしていく

ここ数日欧州議会選挙が行われており、新しい欧州議会は右派政党が立場を強めると予想されています。それは、ウクライナにとって新しい挑戦となり得ますか? 私たちはそれに向けてどのように準備することができるでしょうか?

暫定評価では、欧州議会選挙の後、ウクライナは主要な政治会派であるEPP(欧州人民党グループ)、S&D(社会民主進歩同盟)、欧州刷新、緑からの安定した支持を維持することを期待しています。

6月初旬の政治傾向は、親欧州中道勢力であるEPP、S&D、欧州刷新が欧州議会の次の構成で過半数を維持することができることを示しています。同時に、右派が強化され、まだ政治グループに属していない新しい欧州議員が多く現れることで、議題によっては、状況的連立が作られたりや、中道派へ合流したりすることもあり得ます。

私は、外国メディアのインタビューで、ウクライナはこれやそれやの選挙を気にしているか、私たちにはあれやそれやの結果を心配しているかと聞かれることがよくあります。心配はありません。なぜなら、組織的な外交活動を行なっているからです。ウクライナには、戦争で生き残り、戦争に勝利し、私たちの国に平和を取り戻し、ロシアによりもたされた破壊から復興する、という明確な課題があるのです。そのために私たちはあらゆる政治勢力と首脳と作業していきます。そして、必要な結果を達成していきます。

私たちの自信は何に基づいていると思いますか? 第一に、私たちは誰に対してもアプローチも見つけることができます。第二に、公正な平和の回復という問題は、欧州と世界の安全保障の問題です。どのようなパートナー国であっても、実に全ての政府がそのような情勢展開に関心を抱いているのです。他のシナリオはいずれも、それらの国々の安全保障と幸福にとって直接的な脅威となります。

ポーランド農家は、6月初旬にウクライナ・ポーランド国境の封鎖を再開しました。現在、ポーランドとウクライナの間に政治的レベルでこの問題の解決に関する可能性がありますか?

私たちにはもう、類似の出来事とその解決の大きな経験があります。そのような状況は、私たちの国のどちらにもメリットがありません。私たちは、ポーランド政府との間で積極的な対話を維持しており、ポーランドのパートナーたちが問題解決のための努力を行うことを期待しています。

私たちは、建設的態度と相互尊重の精神でどのような困難も乗り越える準備があることを常に示してきました。

私たちは、パートナーがロシア資産凍結に関して一歩ずつ決定に近付いているのを目にしている

G7首脳会議の重要議題となるのが、ウクライナ支援のためにロシアの凍結資産からの利益の利用手段です。イタリアでのG7首脳の次の会合から、画期的な決定を期待することはできますか?

私たちは、単に期待しているだけでなく、G7首脳会議でロシアの凍結資産利用に関して野心的な決定が採択されるように積極的に作業しています。

私たちは、パートナーたちのその措置の悪影響に関する懸念を理解しています。しかし、資産の収入の利用だけでなく、資産自体をウクライナのために利用することに関する全ての国際法的根拠が存在すると私たちは思っています。国際法は、それを十分明確に認めています。

準備通貨の安定性ないし法の支配原則維持の懸念も、かなり誇張されています。むしろ、そのような措置は、他の国を侵攻することで代償が生じるということを、全ての潜在的侵略国に示すことになります。大切なことは、決定が将来にとっての前例を作りだすことです。

概して、私たちは、私たちのパートナー国が一歩ずつその決定に進んでいることを見ています。収入利用の措置はすでにかなり重要なものであり、私たちはそれにつき感謝しています。最近、エストニアが資産自体の利用を法的に許可する法律を採択して、他国に例を示しました。

私は、エストニアのパートナーたちが前例を作る勇気を示していることに感謝しています。私たちは、他のパートナー国もまた野心的な措置をとるよう、作業していきます。その決定は遅かれ早かれ採択されることになるでしょう。

ジョー・バイデン米大統領の最近のNATOとウクライナに関する発言は、複雑な感情を呼び起こしています。一方で、彼は「ウクライナはもうNATOの一部だ」と言いましたが、他方で、彼は「ウクライナのNATO化を支持する準備のない人物」でもあります。あの発言のどの部分にあなたは力点を置きましたか?

バイデン大統領は、ウクライナの揺るぎない支持者であり、私たちはこの困難かつ決定的な数年間に彼が私たちの国のために行なってくれたこと全てに感謝しています。私は、彼は心からウクライナがロシアの侵略に勝利することを望んでいると確信しています。

ウクライナのNATO加盟に関しては、私は、それは歴史的な確定事項だと確信しています。ウクライナはNATOに加盟します。なぜなら、現代世界でウクライナと私たちの軍を抜きにした欧州大西洋コミュニティの安全保障を想像することは不可能だからです。誰がそれを気にいるか否かとは関係なく、それが現実です。

よって、それは可能性の窓の話です。今、私たちは、その歴史的瞬間に向けて最大限の準備をしています。その時が来れば、ウクライナのNATO加盟は数か月や数年ではなく、数週間で実現します。

ウクライナの結果はウクライナ人や国外の人々を驚かせるだろう

ヴァレリー・ザルジュニーの駐英大使任命プロセスは、3月に始まり、5月9日に大統領が関連の大統領令を発出しました。ザルジュニー氏自身はそのプロセスには一度もコメントしていませんが、任命に関わっている公的人物は、彼が将来の外交的活動の準備をしていると伝えています。その準備の程度はどのように判断されるものですか? 新大使が英国で活動を開始するのはいつになりますか?

そのプロセスはすでに最終段階です。そのテーマに対する関心の高まりは理解しますが、思い出して欲しいのは、全ての大使への評価は同じように、結果によって行われるということです。よって、何よりまず、私たちの新駐英大使の私たちの国のための外交活動における成功と結果を祈念しています。

昨年8月、あなたはウクライナ人に対して、非常に困難な政治的季節の到来を警告していました。あなたは、今年の秋についてはどのような予想をしていますか?

待ってください。まずは夏を乗り越えましょう。私たちは、期待値の非常に低い時期を過ごしています。しかし、逆説的に聞こえるかもしれませんが、私は、むしろウクライナの結果は良い意味でウクライナ人と国外の人々を驚かせることになると思っています。

大切なことは、敵が団結を弱めようとする中でも、その団結を維持することであり、皆で将来のために頑張って働き、希望を失わないことです。私たちは、国と人を守るためにあらゆることを行わねばなりません。私たちは、耐え抜き、助け合わねばなりません。私たちは勝利します。この信念を互いに維持して、前進しましょう。

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