ウクライナ専門家、記者による「自主検閲」の増加を報告
3日、ボンダレンコ調査員がウクルインフォルムでの独自調査の結果発表の際に発言した。
ボンダレンコ氏は、「(調査回答者の)78%が全面戦争開始以降に、記者の間で自主検閲の事例が増えたと発言した。記者が自主検閲を行った例の大半は、求められた時に情報源の確認ができないかもしれないことで、間違えることへの恐怖に駆られてのことだ」と説明した。
記者が自主検閲を行う場合の要因を尋ねた調査の結果によれば、45%の回答者は「自らの考え」、44%は「仕事を失うことへの恐怖」、38%は「社会の考え」、37%は「メディア所有者からの圧力」、35%は「政権機関からの圧力」を挙げたという。
また、ボンダレンコ氏は、2019年時の同じ調査の際は異なる傾向が見られたとし、当時は、74%が仕事を失うことへの恐怖を、55%がメディア所有者からの圧力を要因に挙げていたと伝えた。
同発表会にて、「市民の自由センター」のヤヴォルシキー調査員は、以前は記者にとっての主要な問題がメディア所有者であったなら、現在は問題が複数あり、その内、自主検閲と政権機関からの検閲が主要なものとなっていると指摘した。
ヤヴォルシキー氏は、「自主検閲に陥り、書けるはずのことを書いていないと答える記者の数が著しく増えた」と述べつつ、「戦争だから」「国益のため」という理由で自主検閲を行う事例が増えると、表現の自由の状況を悪化させる可能性があることを警告した。同氏は、「特に戦時下の国益だという理由が関わってくると、多くの記者が、戦時下の国益のために、ある種の情報の拡散において自らを制限する可能性がある。そして、それが続き、その制限が維持されていき、戦争がさらに続く場合、私は、より多くの記者がそれ(編集注:自主検閲)に傾いていき、それが表現の自由の状況の深刻な悪化に影響していく可能性を恐れている。表現の自由の制限を求める人、『国にとって必要だ』『戦争中だから』『そのような見方は社会では人気がない』という動機を記者に対して求める人がおり、それが最も危険な傾向の1つであろう。つまり、その3つの動機が現在、検閲導入を望む人を後押ししているのだ」と指摘した。
今回の調査「戦時下の表現の自由と記者たちにとっての挑戦」は、ウクライナの市民団体「人権センター『ズミナ』」が、国際NGO「フリーダムハウス」のウクライナ代表部の支援を受け、民主イニシアティブ基金に発注して実施されたもの。調査は、質的調査と数的調査に分けられている。質的調査は33名の記者と報道に関係する職業の専門家(ジャーナリズムを教える教師、報道機関オーナー、メディア専門家、ブロガー)を対象に2022年12月に実施。数的調査は、2023年1月18日から27日にかけて、ウクライナ各地の132名の記者に対して実施された。
比較対象となった調査は、2019年5月30日から6月14日にかけて127名の記者を対象に行われたものだという。
同日の発表の際、同調査の結果、回答者の95%が現在のウクライナの報道には何らかの形の検閲が見られると考えていることがわかったと報告された。