オランダからウクライナにスキタイの黄金細工が返却 裁判判決受け
国立歴史博物館広報室が伝えた。
発表には、約10年間の裁判を経て、アムステルダムの展覧会で展示されていたクリミアの4つの博物館の所蔵物がウクライナに戻されたと書かれている。アラルド・ピアソン博物館がウクライナ国立歴史博物館に同所蔵物を返却したのだとし、今後はクリミアの脱占領まで同所蔵物は同歴史博物館で保管されていくことになると説明されている。
これに先立ち、オランダのアムステルダム控訴裁判所は2021年10月26日、2014年のロシア連邦によるクリミア占領開始以前に、クリミアの博物館の所蔵品のスキタイ民族の金細工がオランダにおける特別展にて展示され、占領開始後の返還先を巡って争われていた裁判につき、展示品をウクライナ政府の支配が及ぶ領域へと返還することを命じる判決を下していた。
歴史博物館は、2014年2月から8月までアラルド・ピアソン博物館にて「クリミア 黒海の金と秘密(De Krim. Goud en geheimen van de Zwarte Zee)」展が開催され、ウクライナ国立歴史博物館とクリミアの4つの博物館(タウリヤ中央博物館、ケルチ歴史文化保護区、バフチサライ歴史文化保護区、ヘルソネス・タウリダ国立保護区)の所蔵物が展示されていたと伝えた。
2014年2月に、ロシアがクリミアを占領したところ、ウクライナ国立歴史博物館の所蔵物は展覧会が終了したらキーウに戻されたものの、当時クリミアの博物館はすでにウクライナ政権のコントロール下ではなくなっており、4つの博物館の所蔵物を元の博物館のところに戻すことができなくなっていた。他方で、ロシア政権が実質的に支配しているその4つの博物館は、展示物の返還を要求。この状況を受けて、オランダで本件に関する裁判が始まった。
第一審の判決は、2016年12月14日、アムステルダム地区裁判所が下している。一審で地区裁判所は、展覧会でクリミアの博物館の所蔵品から持ち出されていた展示品をウクライナへと返還するよう命令する判決を下していた。判決は、文化遺産は一時的展示のために貸し出した主権国家へ戻すことを定めたユネスコの条約に基づいて下されていた。
そして、オランダ最高裁判所は2023年6月9日、2014年のロシア連邦によるクリミア占領開始以前にクリミアの博物館所蔵品であるスキタイ民族の金細工がオランダで展示され、占領開始後の返還先を巡って争われていた事件につき、展示品をウクライナ政府の支配が及ぶ領域へ返還することを命じる最終的な判決を下していた。