ウクライナ軍へと送る無人機を家で自作する女性

ウクライナ軍へと送る無人機を家で自作する女性

ウクルインフォルム
ウクライナ西部チェルニウツィーのボランティアの女性、ヴィオレッタ・オリーニクさんは、アクセサリ作りで培った技術を用いてウクライナ軍が使う無人航空機を組み立てている。

約2か月前、オリーニクさんは、それまで行ってきたウクライナ軍のために完成品の無人航空機を購入する代わりに、無人機の組み立てを学ぶことを決めた。募金で集めた資金で部品を購入し、自分の手で無人機を作り始めたのだ。彼女は、最初の無人機の組み立てが一番難しかったと述べ、その後は段々素早く、上手に組み立てられるようになったと語る。

ウクルインフォルムの記者はヴィオレッタ・オリーニクさんと会い、FPV無人機(操縦者がリアルタイムで無人機の視点を確認しながら操縦できる無人機)の製作過程を見せてもらった。

執筆:ヴィタリー・オリーニク(チェルニウツィー)

主な発注者は、父親と兄弟

オリーニクさんは、住居の近くに作業場を作り、毎日数時間そこで過ごしている。彼女は、はんだ付けが独特の匂いを放つことから、自宅で作業はしたくなかったと言う。非居住用建物のその小さな部屋は、知り合いが使わせてくれたという。その部屋の良好なライトのついた小さなテーブルの上に、必要な器具ともう半分組み立てられたFPV自爆型無人機が置かれている。

現在の大戦争までは、オリーニクさんはアート活動を行っていた。様々な催しを運営したり、注文を受けてアクセサリーを製作したりしていた。しかし、ロシアの全面侵攻が彼女の生活スタイルを完全に変えることになった。オリーニクさんの父と兄と弟は、ロシアの侵攻後の最初の数日で、志願兵として戦争へ向かった。しばらくすると、彼女のところには、前線から「注文」が届くようになった。

オリーニクさんは、「ボランティア活動の経験はいくらかはありました。実際には、家族がボランティアを行う様子を見たことがあったという方が正確です。2014年、私の兄は戦争へ行き、右派セクターに入りました。父と弟は、その時はボランティアをしていました。私はまだ大学生だったので、その活動にはほとんど呼ばれませんでした。しかし、2022年、私は、ボランティア活動とは自分で行わねばならないものだと理解しました。なぜなら、父と弟も、戦いに行ったからです」と述べる。

大戦争の当初、前線の家族から色々な物の購入を頼まれた。銃弾、照準器、赤外線カメラなどだ。必要な物を探したり購入したりするのは、彼女のポーランドで暮らす母が助けてくれた。しばらくすると無人機と自動車のニーズが大きくなった。軍人のために物を買うお金を、彼女はソーシャルメディアで募り、またその他のボランティアも助けてくれた。特に、オリーニクさんの同僚の、ウクライナ系カナダ国籍のアーティスト、タラス・ポラタイコさんとその娘が海の向こうの友人たちから資金を積極的に集め始めてくれた。また、彼はアート・ファンドライジングを初めて、世界中のアーティストが自分の作品を展示して、その販売額をウクライナ軍の支援のために送った。

オリーニクさんは、「2年間、私たちの軍人のために活発なボランティア活動を行いました。私の親族は、3つの異なる部隊で戦っており、私たちはそれぞれの部隊を助けようとしています。しかし、私は今、これまでのボランティア活動と並行して、無人機製作も始めました。実はこの製作は、私の気持ちを安らげてくれています。一日中、前線の親族とメッセージのやりとりだけして暮らしている時に、ここで数時間過ごすと、穏やかな作業で少し注意を逸らすことができるので。これは独特な趣味ですが、私の完全な仕事になりました」と笑う。

無人機の自宅製作は誰でもできる

ウクライナ軍人の間でFPV無人機の必要が高まると、オリーニクさんは、それを自分で組み立てることを習おうと決めた。そのために彼女は、2つの無料の無人機組み立てオンラインコースを受講した。

オリーニクさんは、「それは全国向けコースです。1つは、『自宅で無人機』という名前の、爆弾投下型無人機と自爆型無人機の組み立てのためのプログラムです。もう一つのコースは『ヴィクトリー・ドローン』で、FPV自爆型無人機の作り方のみ教えるものです。私は、つい最近そのコースを終えて、理論の試験に合格したところです。ビデオ会議を通じてそのコミュニティに加わらねばならず、そうすると学習教材へのアクセス権が与えられます。また、先生と話して、アドバイスをもらう機会もあります」と話す。

今では彼女は、それぞれの無人機のモデルの違いや、飛距離についてや、無人機の飛行パターン、飛行の周波数など、何時間でも無人機について話すことができるという。全面戦争が始まるまでは、彼女は無人機とは全く関係のないことをしていた。また部品から完成品を組み立てるという経験も全くなかった。しかし、全てはオンラインコースで学ぶことができた。だから、彼女は、無人機を自宅環境で組み立てることは、望めば誰でもできることだと思っているという。

彼女は、「大切なことは、願望とお金と時間があることです。私が大戦争までにできた唯一のことで、今役に立っていることは、細かい部品のはんだ付けです。というのも、私は、アクセサリー作りをしていたからです。しかし、今ははんだ付けを学ぶための動画はたくさんあります。無人機組み立てのための他の知識は、私はコースで得ました。だから、ロシア占領軍の打倒に加わりたいという願いを持っている人全員に『ヴィクトリー・ドローン』のコースを受けることをお薦めします」と語る。

彼女はまた、無人機の組み立ての際に何かしらうまくいかなかった場合でも、それはコースの先生のところへ送ると、そのチェックが行われて、欠点が直されて、前線に送られると説明する。

彼女は、無人機組み立ての主な部品をAliExpress(アリエクスプレス)で購入している。いくつかの部品はウクライナでも購入できる。その場合は、値段は高くつくが、その代わり届くのは早い。コースでは、すぐに必要な部品のリストとそれが売っているオンラインショップへのリンクが渡される。

最初の爆弾投下型無人機の組み立てには1週間以上かかったという。無人機を調整して、室内でのテストをする専門家のところへ持って行った。その後、最初の作品を軍人のところへ送ると、彼らは結果に非常に満足していた。最初の無人機によるロシア占領軍に対する活動を写した動画を、彼女は何度も見たという。

オリーニクさんは、「最初の1機の組み立てができて、軍人がそれを試したら、気持ちが楽になりました。第一に、私は自分の力にそれまで以上に自信を持てるようになりました。第二に、その後の無人機の部品集めのための募金が集めやすくなりました。というのも、もう結果があり、その結果を人々に見せることができたからです。最初は、うまくいくかどうか、なかなかわからなかったですしね」と告白する。

彼女は、最近届いた箱を見せてくれた。そこには、もう1つの無人機の部品が全て入っているという。彼女のところに、同様に自分で無人機を組み立てようとした男性が連絡してきたという。彼は、部品を買ったが、状況が変わってしまって、彼は作業を最後までできなくなったという。そのため、オリーニクさんは、今計画している無人機の組み立てが終わったら、その仕事を引き継ぐという。

オリーニクさんの最初の9機の無人機は、もう前線でロシア占領軍を倒している。彼女はさらに4機の爆弾投下型無人機を、最近組み立て終えて、兄弟の内の1人が所属する第78独立空挺襲撃連隊へと送った。さらにリストには、父のいる部隊からの発注がある。彼女は、彼らのために自爆型無人機を6機組み立てている。

「戦闘用アクセサリー」へのクレームは届いていない

1つの自爆型無人機の原価は、最大で1万6000フリヴニャ(編集注:約6万3000円)で、爆弾投下型は約1万9000フリヴニャ(編集注:約7万4000円)だという。彼女が無人機の部品購入用を募る際には、アート仲間が手伝ってくれているという。彼女もまた、ソーシャルメディアで募金を呼びかけている(編集注:リンク先からPayPal用アドレスを通じてオリーニクさんに送金可能)。また、並行して、必要な時には、完成品無人機の「Mavic」を購入するための募金も行っている。

また、オリーニクさんは、名前入りの無人機も作ることができると述べる。募金をする人が無人機1機の原価分の募金をしたら、オリーニクさんが機体に名前を彫るのだという。そして、その募金をした人が考え出した言葉を動画の編集時に透かしで入れることができる。

オリーニクさんは、「組み立てた無人機の1つは『カナダ』という名前で、スイッチを入れた時にカナダの国歌のメロディーが流れるようにしたんです」と話す。

私たちが話している間も、彼女は、テーブルの上のFPV無人機の部品のはんだ付けを続けている。彼女は、前日、無人機のフレームを組み立て、回路基板に保護剤を塗った。それにかかった時間は1時間弱だという。

彼女は、「今日、私は、モーターを固定し、カメラとこの中央部の部品を取り付け、コンデンサーと電池に繋がる電源線をはんだ付けし、今は、モーターをはんだ付けしているところです。それから、上蓋を載せて、そこにカメラをはんだ付けし、それから2つの通信アンテナをはんだ付けします。その後、それを保護塗料を塗って仕上げ、上蓋をねじ止めして、家に持ち帰ります。今日はもう、1時間半ほど作業に費やしましたが、急ぐのでなければ、あと2時間ほどで組み立ては終わります」と説明する。

彼女の計算では、8時間の作業時間を割いたら、急ぐことなく1日で2つの無人機が組み立てられるという。その後、組み立てられた無人機は、調整され、テストが行われる。

「アクセサリーを作るのと無人機を組み立てるのとどちらの方が簡単ですか?」と尋ねると、オリーニクさんは笑顔で答えた。

「無人機製作の方が簡単ですね。アクセサリーは、私か発注者が気に入るか、気に入らないか、というのがありますが、はんだ付けはどれも同じで、一瞬で、強力です。誰もあなたに対して、『あなたの基板はあまり美しくない』などは言いません。私の無人機は、私のお客さん皆が満足していますし、クレームはまだ受け取っていません。」

写真:ヴィオレッタ・オリーニク提供

(編集注:日本からヴィオレッタ・オリーニクさんに募金をしたい場合は、このソーシャルメディア「X」アカウントの投稿にあるリンクからも可能です。)


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