BBCの動画を模した偽情報「ウクライナがハマスにNATOの武器を提供した」
英BBCが公開したかのような作りで、あたかも公開情報の分析調査で知られる民間調査グループ「ベリングキャット」が調査したかのような内容の偽情報がロシアのソーシャルメディアで拡散されている。
執筆者:ドミトロー・バルダク
ロシアのテレグラム・チャンネルやマスメディアがこの偽BBC動画を拡散している。この動画では、ウクライナがNATOから受け取ったものが、テロ集団「ハマス」に渡って使われていることをベリングキャットが「明らかにした」と主張されている。
この動画は、BBCの動画を模して、ベリングキャットのロゴを用いた上で作られた偽動画である。BBCやベリングキャットの公式ウェブサイトには、この「調査」に関する情報は一切ない。
ウクルインフォルムがベリングキャット創設者のエリオット・ヒギンスに問い合わせると、ヒギンス氏は、動画はフェイクであり、ベリングキャットは関係していないと強調した(編集注:ヒギンス氏は、ソーシャルメディア「X」アカウントでも同動画が偽物であることを報告している)。
なお、ロシアによる対ウクライナ全面侵攻開始以降、ウクライナが供与されている外国の武器を第三国に渡しているという言説は、ウクライナの軍事・政治主導部の信頼を落とし、西側諸国からウクライナの支援を止めることを目的に、ロシアのプロパガンダ拡散者によって活発に広められている。ロシアのプロパガンダは、小規模のテレグラム・チャンネルや、タスをはじめとするロシアの国営メディアを通じて、ラヴロフ露外相の発言を引用するなどして拡散している。
ハマスがイスラエルを襲撃して以降、プロパガンダ拡散者はこの情報キャンペーンを活発化させているが、ウクライナ国防省はテロリストへの武器の供与の可能性を否定している。
また、ミハエル・ブロツキー駐ウクライナ・イスラエル大使は、イスラエルはウクライナからハマスへと武器が渡ったという情報を有していないと発言した。
その他、ロシア側は、ウクライナによる第三者への武器提供に関する偽情報を、武装集団「DPR」の首長デニス・プシーリンの発言を引用する形で伝えていたが、この偽情報はウクルインフォルムがファクトチェックで否定している(編集注:リンク先はウクライナ語)。