クルスク州突破によりウクライナは前線1か所で主導権を得た=戦争研究所

米戦争研究所(ISW)は11日、ウクライナ軍のロシア領クルスク州における作戦で、ウクライナは少なくとも前線の1か所の戦場にて主導権を一時的に奪いうことに成功したと指摘した。

ISWが11日付報告書で指摘した

ISWは、ロシアは2023年11月から前線の主導権を得てから、戦闘遂行の場所、時間、規模、要件を定めてきたとし、それによりウクライナは防衛作戦にて物的・人的リソースを割かざる得なくなっていたと指摘した。他方で、ウクライナのクルスク州での作戦により、クレムリンとロシア軍指導部は対応を余儀なくされ、ウクライナ軍が攻撃を始めた地域へ戦力を移動させなくてはいけなくなっているが、同時に、ロシア軍は、クルスク州で活発な戦闘行為を行なっていないと書かれている。

報告書にはまた、「ロシアはウクライナに圧力をかけ、ウクライナ戦力が将来の反転攻勢のために人員と物資を蓄積するのを阻止する一方で、ロシア軍が継続的な攻勢作戦を一貫して維持できるような戦闘のテンポを定めるべく、広範な戦域のイニシアティブの保持を活用してきた」と書かれている。

同時にISWは、プーチンとロシア軍事指導部は、おそらくウクライナがこの主導権に対峙する能力がないと誤って評価していたのであろうとしつつ、しかし、ウクライナの作戦上の奇襲をを達成し、広範な戦域の主導権を争える能力の存在は、ロシア側のウクライナにおける作戦上・戦略上の想定に疑問を呈するものとなっていると指摘している。

また、ISWは、概してクルスク州でのウクライナの作戦と今後のあり得る越境進攻により、クレムリンは、2022年秋以降休眠ラインとみなしていたウクライナとの間の北東国境を守る必要のある前線とみなすべきかどうか、決定を迫らられることになると予想している。

そして、「現在のウクライナの進攻は、ロシアのウクライナにおける軍事作戦とプーチンの体制の安定性へと著しい脅威をもたらし、関連の対応を要求するものである。ウクライナのクルスク州での作戦は、国境沿いでどのようなウクライナの作戦のタイプがあり得るかという、クレムリンの想像を広げ得るものである。ロシアが国境地帯を長期にわたり『休眠前線』として扱ってきたのは、戦略的な想像力の失敗である」と書かれている。