もう一つのクリミア決議:国連総会、露によるクリミアでの人権侵害に関する決議を採択
22日、国連総会は、「クリミア自治共和国・セヴァストーポリ市(ウクライナ)における人権状況」決議(А/С.3/73/L.48)を採択した。
賛成は65か国。反対は27、棄権は70となった。日本は、先週の「クリミア軍事化」決議に続き、賛成票を投じた。ウクルインフォルムのニューヨーク特派員が伝えた。
これはウクライナがイニシアティブをとるクリミアの人権状況に関する国連総会の3つ目の決議となり、これまで2016年、2017年と採択されてきているもの。なお、17日に採択された「クリミア軍事化」決議とは異なり、「クリミア人権」決議はロシアによる人権侵害に焦点が当てられている。
今回の決議は、国連関連の全ての文書にどのように正しくクリミアについて記述するか等を定めるものとなっている。
具体的には、「(総会は、)国連のすべての国際機関・特別機関に対し、ロシア連邦の統計データに関するものを含め、公式文書、コミュニケ、発表物においてクリミアについて言及する場合、『ロシア連邦により一時的に占領されているクリミア自治共和国とセヴァストーポリ(ウクライナ)』という表現を用いるよう呼びかける」と書かれている。
なお、12月17日に採択された「クリミア軍事化」決議は、ロシアに対して自国軍をクリミアから撤退するよう呼びかけていたが、今回の「クリミア人権決議」でも、クリミアをウクライナに返還するよう直接的な呼びかけが記載された。
決議には、「クリミアの武力による奪取が違法であり、国際法に反していること、またこの領土が返還されなければならないことを確認する」と書かれている。
また今回の決議の特徴は、政治囚問題、クリミアにおけるウクライナ人・クリミア・タタール人活動家への迫害、拷問・違法収監、証拠隠滅、クリミア住民の行方不明事案、司法外の殺人、宗教上マイノリティーへの迫害、信仰の自由・表現の自由の制限に焦点が当てられていることである。国連は、ロシアによる被占領地でのこれらの人権侵害を非難するとともに、ロシアが過去の2本の決議の要件を履行しておらず、状況が前回決議採択時点より悪化していることを指摘している。
政治囚部分に関しては、具体的に、拘束・逮捕されている映画監督のオレフ・センツォフ氏や、クリミア在住ウクライナ国民のヴォロディーミル・バールフ氏やエミール=ウセイン・クク氏といった個人名を挙げて、2014年以降、ロシアが、偽造された証言を得るための拷問を行い、政治的動機の迫害行為を行なっていることに関し、国連総会の深い懸念が記された。
その上で、ロシアに対して、被占領下クリミア及びロシア領における被拘束者の人権と基本的自由の確保、健康状態確認のための医師や国際赤十字委員会や欧州拷問等防止委員会といった国際機関のアクセス確保を求めた。
決議はまた、国連事務総長に対して、来年の国連総会第74回次期会合までに、今回の決議の勧告部分を含めた履行状況の特別報告を準備するよう呼びかけている。