国連総会、クリミア人権決議を採択 日本など65か国賛成
16日、国連総会は、昨年から内容の更新された「一時的被占領下クリミア自治共和国とセヴァストーポリ市(ウクライナ)の人権状況」を採択した。
ウクルインフォルムのニューヨーク特派員が伝えた。
投票結果は、賛成65か国、反対25か国、保留85か国となった。日本は、これまでのクリミア関連決議と同様、賛成票を投じた。
反対票を投じた25か国は、ロシア連邦、アルメニア、ベラルーシ、ブルンジ、カンボジア、中国、コモロス、キューバ、北朝鮮、エリトリア、エチオピア、インド、イラン、カザフスタン、キルギス、マリ、ニカラグア、フィリピン、サウジアラビア、セルビア、スリランカ、スーダン、シリア、ベネズエラ、ジンバブエ。
今年のクリミア人権決議は、国連加盟国に対して、クリミア・プラットフォームにおける協力を呼びかけている。
また、同決議では、一時的被占領下クリミアにて設置されたロシア連邦の機関や役人は、違法であり、それらを「ロシア連邦の占領機関」と呼ぶことが強調されている。
国連総会は、この決議の基本となっている国連事務総長のクリミア人権状況報告書にて、ロシア占領政権により罰されている人々がいることにつき憂慮を表明した。また、政治的動機による迫害、拷問、恣意的拘束・逮捕、司法外殺人、誘拐、強制失踪は看過し得ないものであることが指摘されている。さらに、占領政権が迫害している人物の例として、具体的に、エミル=ウセイン・クク、ハリーナ・ドウホポラ、セルヴェル・ムスタファイェフ、ウラディスラウ・イェリペンコ、ナリマン・ジェリャルといった多くの人物の名前が掲載された。
決議ではまた、クリミアの先住民であるクリミア・タタール人を含め、ウクライナ国民が、自らの経済的、社会的、文化的権利の実現、並びに、自らのアイデンティティや文化を保護したり、ウクライナ語やクリミア・タタール語での教育を受けたりするための機会が制限されていることに注意が向けられている。
また、文化・自然遺産の破壊、違法な考古学的発掘、文化財の譲渡、宗教的伝統への抑圧の事実が列挙されている。
その他、ロシアがクリミアの若者の軍事化や同化を行っていること、特に子供たちに「軍事愛国主義」的教育システムが適用され、児童を軍事的に育てていることへの懸念が示された。
加えて、ロシア占領政権がクリミア自治共和国にて実施した国勢調査が違法であることが記されている。
国連総会は、占領政権は一時的被占領下の住民全てに飲料水を提供することが義務付けられており、その際に差別があってはならないことを強調した。
また、改めて、武力によるクリミアの奪取は国際法違反であり、占領地は速やかにウクライナに返還されねばならないことが強調されている。
今回の採択を受けて、クレーバ・ウクライナ外相は、ツイッター・アカウントにて、「私は、強化された国連総会クリミア人権決議を歓迎する。占領国であるロシアは、明白な人権侵害を止め、違法に拘束するウクライナ国民を解放し、先住民クリミア・タタール人の権利を守り、文化遺産と環境を保全しなければならない」と書き込んだ。
さらに外相は、同決議を支持した全ての国家に謝意を伝え、同採択はロシアが攻撃的行動を継続する中でのウクライナにとっての国際的サポートをまとめることになると伝えた。さらに、今回の決議がクリミア・プラットフォームを支持していることが非常に重要であると指摘した。
なお、国連総会のクリミア人権決議は、2016年から毎年内容を更新する形で採択されており、今回の採択で6本目となる。国連総会のクリミア関連決議により、ロシア連邦はウクライナ領クリミアの占領国と定義されている。
また、これに先立ち、12月9日、国連総会は、「クリミア自治共和国・セヴァストーポリ市(ウクライナ)及び黒海・アゾフ海の一部の軍事化問題」決議を採択している。