ウクライナで起きていることはウクライナだけのことではない=ブリンケン米国務長官

7日、ブリンケン米国務長官は、ウクライナで起きていることはウクライナのみに関することではなく、それはロシアによる広範で危険で違法な行動パターンの一部なのだとする見方を示した。

ブリンケン米国務長官が記者会見時に発言した。ウクルインフォルムの特派員が伝えた。

ブリンケン国務長官は、ロシアが偽情報を拡散しているとし、「同国はウクライナがロシアを脅かしている、ウクライナが紛争を引き起こそうとしていると主張している。そして、ロシア軍の増強や戦車や重火器は、全て純粋に防衛的なものだと主張している。それは、狐が、鶏小屋の居住者がどういうわけが脅威をもたらしているとして、その鶏小屋を攻撃しなければならないと言っているようなものだ」と指摘した。

同氏は、ロシアは2014年にウクライナに侵攻しておきながら、自らがあらかじめ準備していた軍事行動を正当化するべく、ウクライナが侵略者であると主張したことを喚起し、そして現在ロシアはウクライナ、北大西洋条約機構(NATO)、米国に対するプロパガンダを活発化させ、偽情報の拡散や、出席者に「ロシアではなくウクライナが地域の緊張を高めている責任がある」と信じさせる会議の開催などを行っていると指摘した。

また同氏は、「ロシアが挑発や事件に着手し、その後それを軍事介入の正当化に利用しようとしていることで、驚くべきではない。(中略)この状況で、ウクライナが侵略者だという考えは、馬鹿げている。ロシアこそが約8年前にウクライナに侵攻したのであり、ロシアこそがウクライナの一部、クリミアの軍事占領者なのであり、ロシアこそがウクライナ東部の戦争に燃料を注ぎ続けているのであり、ロシアこそが、ミンスク諸合意の履行を行っておらず、その多くに活発に違反し、自らが紛争の当事者であることを認めようとしていないのだ」と強調した。加えて同氏は、ロシアがウクライナの民主主義を何度も標的としてきたこと、そして現在、もう一度、ウクライナ国境に軍を送っていることを指摘した。

ブリンケン氏は、「これら全ての行動が、ウクライナの主権への侵害であり、欧州の平和と安定に対する即時かつ緊急の挑戦なのだ」と強調した。

また同氏は、7日、NATO加盟国外相級臨時オンライン会合にて、ウクライナ国境沿いへのロシア軍の集結と高まるロシアの脅威、同国の激しいレトリックに対する調整された返答の形成について協議が行われたと伝えた。

同氏は、「2014年、ウクライナの人々は民主的な欧州の未来を選んだ。(中略)ロシアは、それにウクライナ領への侵攻で返答し、約1万4000人の人々を殺害し、力、軍事侵攻でウクライナの国境を変更し、民主的機構を弱体化し、ウクライナ政治と選挙に介入し、エネルギー供給を遮断し、プロパガンダと偽情報を利用した。ロシアは、昨年3月から、ウクライナ国境沿い意に軍事力と装備品を集結させ、現在約10万人の兵力を集めており、しかも非常に短期間での兵力倍増を定めた動員計画を伴っている」と指摘した。

加えて、2014年のロシアの侵攻以降、ウクライナ国民の間でNATO加盟支持が25%から60%に増えたことを喚起した。

さらにブリンケン氏は、「ウクライナで起きていることは、ウクライナだけに関係するのではない。それは、不安定化をもたらし、危険で、しばしば違法なモスクワの振る舞いの広範なパターンの一部なのだ。なぜなら、同国は、かつてソヴィエトの支配下にあった国々を覆う影響圏の建設に努めているのであり、それらの国が完全に主権的で独立した国家として、民主的な願望を実現することを阻止しようとしているのだ」と説明した。

同氏は、過去20年間で、ロシアはウクライナとジョージアという2つの隣国に侵攻し、またモルドバ領に同国の政府の意志に反する形でロシア軍を駐留させ続け、米国をはじめとする多くの国の選挙に介入し、ロシアの政敵の殺人のために化学兵器を利用し(国外での利用もある)、独裁者を支持し、シリアにて非人道的犯罪を実行していると喚起した。

その上で同氏は、平和と安全にとって決定的重要な基本的国際原則である、国境と領土一体性の不可侵を議論対象とするモスクワの行動は欧州における新たな前例を作るおそれがあると指摘し、「それら原則はウクライナも欧州も越えるものだ。それらは、私たちがともに建設し、維持し、必要なものとして、適合することを模索し続けてきた、国際秩序を支えるものである。ロシアは、それに挑戦することで、国際システムへの挑戦、大西洋間同盟、一体性の破壊、民主主義の弱体化を試みているのだ」と強調した。

同時にブリンケン氏は、ロシアが「この危機の解決のための唯一の責任ある道」である民主主義を選択することへの期待を表明し、米国はロシアと内容ある対話を行う準備があると発言した。

同氏は、ロシアに懸念があるなら、「クレムリンにも同様に返答し、自らの危険と不安定化の振る舞いを止める準備がある場合、米国、我々のNATOの同盟国、我々の欧州安全保障協力機構(OSCE)のパートナー国は、彼らの声を聞き、それらに返事をする準備がある」と発言した。

他方でブリンケン氏は、「現在ロシアは、ウクライナへの侵略から注意をそらすために、米国とNATOが、中東欧の同盟国の領土に駐留するNATO兵力の撤退と、ウクライナの将来のNATO加盟を禁止することについての協定に署名することを要求しており、NATOについての議論に私たちを巻き込みたがっている」と述べた。

同氏は、ロシア政権が、NATOがロシアを脅かしている、NATOがロシアとの紛争を引き起こすためにウクライナに軍事インフラを設置したがっているとする偽のナラティブを拡散していると指摘した。

その上で同氏は、NATOは防衛を目的とする同盟であり、侵攻のための同盟ではないと強調した。

同氏は、2014年にロシアがウクライナに侵攻するまでは、NATOは冷戦後、自らの通常・核の軍事力を著しく削減し、欧州における防衛地点の強化を行っていなかったと指摘した。さらに同氏は、NATOが新しい加盟国を受け入れないと約束したことは一度もないと強調し、オープンドア政策は、1949年の北大西洋条約の基本項目であると喚起した。