ウクライナはモルドバ被占領地を支援する用意があるが、先方からの反応なし=ゼレンシキー宇大統領
ウクライナのゼレンシキー大統領は12日、同国はモルドバの被占領地であるトランスニストリア地域へ石炭で支援する用意があるが、同地域を支配している人々からの反応は見られていないと発言した。
ゼレンシキー大統領が同日夜の動画メッセージで言及した。
ゼレンシキー氏は、最近サンドゥ・モルドバ大統領と電話会談した際に、両首脳はトランスニストリアにおける人道危機の克服手段について協議したと発言した。
その際同氏は、「そこではロシアの意図的な行為によって、エネルギーの真空が生じている。人々が苦しんでいる。そして、それはロシアが、選挙を前にしたモルドバの世論を悪化させるために、意図的に行っていることである」と強調した。
さらに同氏は、ウクライナは同地を石炭で支援することができるが、今のところトランスニストリアの状況を実質的に支配している人々からの関連の反応は目にしていないと伝えた。
そして同氏は、「彼らがロシアに協力するのなら、それはそれだが、彼らが本当にトランスニストリアの人々を助けたいのなら、それは別のことだ。私たちからの用意はある」と明言した。
これに先立ち、ロシア国営企業「ガスプロム」は、昨年12月28日、モルドバの「モルドヴァガズ」に負債があると主張した上で、モルドバへの天然ガス供給を止めると発表していた。ガスプロムは、モルドバの負債額を7億900万ドルだと主張。他方で、モルドバ政府は、同国の負債は860万ドルだと訴えており、残りはトランスニストリアが消費した天然ガスのものだと指摘している。
モルドバは、同年12月16日、エネルギー部門の非常状況体制を導入。12月31日、同国エネルギー省が、2025年1月、モルドバのエネルギーの大半を隣国ルーマニアから輸入しており、残り30%をモルドバの火力発電所の発電が担っていると報告していた。
トランスニストリアのいわゆる「政権」(占領政権)も、非常状況体制を導入。1月1日に天然ガスの供給が停止されると、同地の中央暖房が停止され、天然ガスは調理を行うのに使えるだけとなっている。「政権」のデータによれば、残っている天然ガスは20日分だけだという。モルドバ国家地区発電所(MDRES)は、1月1日から石炭での発電に移行している。
1月3日から、トランスニストリア地域では、計画停電が導入されている。1月4日、同地では「モルダビア冶金工場」が操業を停止。被占領下リブニツァでは、1日に約2トンのパンを作っているパンコンビナートが営業を停止した。
トランスニストリア「政権」は、2024年12月11日に導入された1月10日に非情経済事態の効力をさらに30日間延長していた。
モルドバのサンドゥ大統領は今年1月9日、現在のモルドバ被占領地トランスニストリアにおけるエネルギー危機は、ロシア国営企業「ガスプロム」がモルドバとの契約があるにもかかわらず、人工的に作り出したものだと指摘していた。
ウクライナのゼレンシキー大統領は8日、モルドバのサンドゥ大統領と電話会談を行なった際に、ウクライナはモルドバを石炭提供などで支援する準備があると発言していた。
写真:ウクライナ大統領府