米国によるロシア領攻撃への限定的な許可ではロシアの大規模な作戦の阻止は不可能=戦争研究所

米国の戦争研究所(ISW)は、バイデン米政権がウクライナに対して、米国供与の武器でロシア領内の軍事目標を攻撃することの限定的な許可を与えたことで減少したロシア側の地上の安全な空間は16%でしかないと指摘した。

6月9日付ISW報告書に書かれている

ISWは、米国は米国供与の武器の使用を制限することで、その武器の射程圏だが、ウクライナはその攻撃を許されていない広大な空間(聖域)を実質的に生み出したと指摘した。その空間を、ロシアはウクライナで軍事作戦を実施するための自らの戦闘部隊、指揮統制、兵役、後衛活動を守るために利用しているという。

報告書には、「米国の政策では、ウクライナのアタクムスの射程内にある領域である、ロシアの地上聖域の少なくとも84%が依然として維持されている」と書かれている。

具体的にISWは、米国が対砲撃用にGMLRSを使ったロシア領攻撃をウクライナに認めたが、それをハルキウ州と接する地域に限定したと指摘した。ウクライナ側はこれにより実質的に「ウクライナ国境付近に位置する」ロシアの軍事施設への攻撃はできるが、しかし、後衛やクルスク州やブリャンスク州の他の地区の、GMLRSの射程内の目標への攻撃は禁止されているという。

報告書には、「ウクライナ軍がウクライナのGMLRSを使ったハイマースの射程圏であるベルゴロド州、クルスク州、ブリャンスク州で全ての合法的なロシアの軍事目標を攻撃できると仮定した場合、2024年5月末にジョー・バイデン米大統領が行った、ロシア領内軍事目標に対する米国供与の武器の使用に関する限定的な政策変更は、ロシアの地上聖域の最大16%を取り除いたことになる。しかし、ウクライナがそれを行う許可を有しているかは全く明らかでない」と書かれている。

ISWは、米国の政策変更は、正しい方向への一歩ではあるものの、それだけでは不十分であり、ロシアの大規模作戦を崩壊させることはできないとし、西側諸国は、ウクライナに対して西側提供の武器使用をロシア領内後衛への攻撃にも認めることにより、ロシアの作戦を著しく妨害する能力を維持していると評価している。

これに先立ち、5月31日、米国のブリンケン国務長官は、バイデン米大統領がロシア領内の軍事目標に対して米国供与の武器を使う許可をウクライナに与えたことを認めていた