マレーシア航空機撃墜事件、新たな証拠が公開=露報道
2014年のウクライナ東部上空で撃墜され乗客・乗員全員が死亡したマレーシア航空機MH17撃墜事件につき、ロシアのマスメディアが公開した文書が、同機撃墜に用いられた兵器がロシア国内からウクライナへ持ち込まれたことを示す追加的証拠となり得る内容となっている。
5日、ロシアのノーヴァヤ・ガゼータ紙が、同紙の入手した文書にもとづき報じた。
同紙が入手した文書の一つは、「秘匿」対象のものではなく、2014年6月のロシア軍の移動の際の車道の一般使用時の安全確保に関する内容となっている。また、野戦食の確保と配布のために、地対空部隊の軍人を当てる命令も含まれている。
2014年6月22日の通信記録は、クルスクとボロネジのロシア軍軍車両査察(VAI)の長官に対する命令で、6月23日に軍用技術品の一般道を使った移動に関する内容となっている。ノーヴァヤ・ガゼータ紙は、このロシア軍第56クルスク・第47ヴォロネジ軍事車両査察(VAI)への命令は、(ロシアのクルスクからウクライナ被占領地ドンバスまでの)ルートの存在を改めて確認できる内容だと説明している。
更に、これに先立ち、2017年に民間調査グループ「ベリングキャット」が、露クルスクからの兵器の移動は第69旅団の人員・輸送車が使用されていた可能性があると伝えていたが、この通信記録はその可能性を裏づける内容だと指摘されている。
同紙が公開した、第69旅団のアラジイン中佐の署名が入っている別の文書には、クルスクからベルゴロドまで移動する複数車両と運転者のリストが掲載されている。その中に、国家所属の黒ナンバー「4267AN」の軍事輸送車カマーズとその運転手ブチコフA.N.の名前があるとしつつ、パヴロ・カニギン記者は、「このカマーズが後に、(地対空ミサイルシステム)『ブーク332』をミレロヴォに運んでいるところを民間人により動画に収められるのである」と説明している(編集注:露ロストフ州ミレロヴォ(Миллерово)は、対ウクライナ(ルハンシク州)国境まで約50キロ地点に位置する)。
更に、同紙は、第32406基地の臨時指揮官代行であるデミドフ中佐と臨時本部長代行のゴルバチフ少佐の署名の入った命令文書を公開。この命令からは、2014年7月15日にクルスクの対空ミサイル旅団の軍人170名以上がウクライナとの国境に近いミレロヴォに到着したことが判明している。
記者は、今回入手したこれらの文書からは、対空ミサイル旅団の軍人たちはミレロヴォに兵器そのものの到着より3週間も後に到着していたことがわかると説明し、同時に野戦食は5日分しか配給されていないと指摘している。
続けて、記事には、「これらの詳細から判断するに、対空ミサイル旅団の軍人たちは、国境から30キロ地点に長期に滞在するつもりではなかったのだろうということ、そして、野戦食をもってミレロヴォから別の場所へ出発したのだろうということである。そうではないか?そして、そのすぐ後、クルスク対空ミサイル旅団の車両の一つが、国境の向こう側(編集注:ウクライナ側)で目撃されていることは、どう説明できようか」と書かれている。
また、記事には、2014年7月15日にクルスク基地から国境に近いミレロヴォに露軍人が到着したことは、疑念を強めるばかりでなく、国際共同捜査チーム(JIT)の捜査官が2018年に提起した問題、例えば、誰がブークを発射現場に移動させ、誰が元の場所に戻したのか、移動の際誰が運転していたのか、といった問題に光を当てるものであると指摘されており、今回公開の文書にある、国境まで「交代のために来た」ロシア軍クルスク第53対空旅団からの約170名の軍人のリストの中に、その人物がいるのか、誰がその彼らに命令を出したのか、といった問題が提起されている。
マレーシア航空機撃墜事件とは、2014年7月17日、アムステルダムからクアラルンプールへ向かっていたマレーシア航空機MH17がウクライナ東部ドンバス地方上空で武装集団により撃墜され、乗客・乗員合計298名全員が死亡した事件をいう。
2016年9月、国際共同捜査チーム(JIT)は、同事件の技術捜査の結果として、同航空機が、親露武装集団支配地域から地対空ミサイルシステム「ブーク」により発射された弾頭「9M38」により撃墜されたことを判明させていた。
同時に、民間調査グループ「ベリングキャット」は、MH17を撃墜した「ブーク」がロシア軍第53対空旅団発のものであることを判明させていた。ベリングキャットは、ソーシャル・メディアとオープンソース情報の独自の分析を通じて、MH17撃墜に関与した20名のロシア軍人を特定させた報告書を発表した。これら軍人の名前が写真付きで示されているこの報告書は、オランダの検察に渡されている。
2018年5月24日には、JITは、MH17を撃墜したロシアのミサイルの破片を公開しつつ、ミサイルがロシアのクルスクを拠点とするロシア軍第53対空ミサイル旅団に属するものであることが判明したと発表した。