ドイツ裁判所、オニシチェンコ容疑者のウクライナへの引渡しを認めず
ウクライナにて汚職犯罪の容疑がかけられており、ドイツにて拘束されているオレクサンドル・オニシチェンコ容疑者(元ウクライナ最高会議議員)につき、独オルデンブルク高等土地裁判所は27日、同容疑者のウクライナへの身柄引渡しを認めない判決を下した。
独DW通信が報じた。
報道には、「ウクライナの拘置所における然るべき拘束に関する保証が不足していることから、裁判官は、元最高会議議員であり汚職スキーム創出容疑のかかっているオレクサンドル・オニシチェンコ容疑者身柄引渡しに関する検察の要求を認めなかった」と書かれている。
判決説明文には、オニシチェンコ容疑者を引渡した場合、「拘置所における拘束条件に関して、欧州人権条約を含む国際法の最低基準が遵守されない可能性が著しく大きい」ため、引渡しは認められないと書かれている。
DW通信は、ドイツの裁判所は、ウクライナ政権に対して、キーウ(キエフ)市でのオニシチェンコ容疑者が拘置所にて拘束される場合の条件につき、「詳細な記述」を要請していたとし、しかしながら、ウクライナ側は裁判所に対して、国際的基準は遵守される、といった一般的な内容のみ回答していたと伝えた。ドイツの裁判所にとってはその情報では不十分であったと指摘されている。
ドイツの裁判官たちは、2017~18年にウクライナの刑務所を訪問した欧州拷問防止委員会の専門家たちが集めた情報を根拠とする、欧州評議会の報告書を参照している。裁判所の発表には、報告書にて「人間の尊厳を侮辱する非人道的な拘束条件」が記述されていたことを指摘している。
加えて、オルデンブルク高等土地裁判所は、オニシチェンコ容疑者の逮捕命令も取り消したとのこと。
なお、オニシチェンコ氏は、2016年夏にウクライナから出国し、以降、一度も帰国していない。同氏には、犯罪組織の設立の嫌疑がかけられている。国家汚職対策局(NABU)は、同組織が、2013年1月から2016年6月まで、天然ガス分野で違法に16億フリヴニャ以上を稼ぎ、その結果、ウクルハズヴドブヴァンニャ社(編集注:天然ガス採掘を行う国営ナフトガス社の子会社)に対し、7億4000万フリヴニャ以上の損失を与えたと発表している。
昨年11月29日にウクライナ側要請を受けてドイツにてオニシチェンコ容疑者が拘束され、ウクライナへの引渡し決定が待たれていると報じられていた。
本年5月13日、ウクライナ高等反汚職裁判所は、オニシチェンコ容疑者に関与容疑がかけられている「ガス案件」の審理を開始していた。