オランダ公共放送、ロシアによるマレーシア機撃墜の新たな証拠を公開
オランダの公共放送協会「NOS」は、2014年7月17日のマレーシア航空機MH17がロシア軍の地対空ミサイルシステム「ブーク」にて撃墜される前と後のドネツィク州一部地域の武装集団の新しい会話記録を公開した。
11日、NOSが報じた。
公開された音声記録には、MH17撃墜事件で起訴されている4名の容疑者、イーゴリ・ギルキン(ロシア国籍、ロシア連邦軍元将校、ロシア連邦保安庁(FSB)元大佐)、セルゲイ・ドゥビンスキー(ロシア国籍、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)大佐)、オレグ・プラートフ(ロシア国籍、予備大佐)、レオニード・ハルチェンコ(ウクライナ国籍)の声が含まれている。
一つの会話では、ドゥビンスキー容疑者が、MH17撃墜事件当日、ギルキン容疑者が「モスクワに行った」と述べている。また、ドゥビンスキー容疑者は、武装集団構成員がスロヴヤンシクからの部隊撤退に関する「モスクワの決定」を待っていると述べる場面もある。
別の会話では、ドゥビンスキー容疑者の部下にあたるプラートフ容疑者がドゥビンスキー氏に対して、「戦車は要らない。必要なのは、射程距離の長い火砲と良質の防空兵器だ」と述べている。これに対して、ドゥビンスキー容疑者は、「ブーク」を提供することを約束し、「なぜなら、他には何もすることができないからだ。ブークに期待するだけだ」と述べている。
また、他のやり取りでは、MH17撃墜後、ハルチェンコ容疑者がプラートフ容疑者に対して電話をかけ、武装集団戦闘員がウクライナ軍の戦闘機を撃墜したと報告している。その後、ドゥビンスキー容疑者は、戦闘員が民間のMH17を撃墜したことに気付いている。
撃墜後、ギルキン容疑者がドゥビンスキー容疑者に対して、ブークをルハンシク州経由でロシアに運ぶことを指示している。
マレーシア航空機撃墜事件とは、2014年7月17日、アムステルダムからクアラルンプールへ向かっていたマレーシア航空機MH17がウクライナ東部ドンバス地方上空で武装集団により撃墜され、乗客・乗員合計298名全員が死亡した事件をいう。
2016年9月、国際共同捜査チーム(JIT)は、同事件の技術捜査の結果として、同航空機が、親露武装集団支配地域から地対空ミサイルシステム「ブーク」により発射された弾頭「9M38」により撃墜されたことを判明させた。
2018年5月24日には、JITは、MH17を撃墜したロシアのミサイルの破片を公開しつつ、ミサイルがロシアのクルスクを拠点とするロシア軍第53対空ミサイル旅団に属するものであることが判明したと発表した。
2019年6月、マレーシア航空機MH17撃墜事件の捜査を行う国際共同捜査チーム(JIT)は、同撃墜に関与した容疑者4名を公表している。
2020年10月、ロシア連邦は、MH17機撃墜事件捜査に関するオーストラリアとオランダとの三者諮問グループを一方的に離脱している。
MH17事件の公判は2020年3月9日にオランダにて始まっている。