ウクライナ政権幹部、G7による「ウクライナ支援共同宣言」採択の意義を説明 【宣言全文】

ウクライナのイェルマーク大統領府長官は、12日にG7首脳がゼレンシキー宇大統領とともに発表した「ウクライナ支援に関する共同宣言」につき、これはウクライナのための安全の保証に関する最初の法的文書であり、今後、保証国との間で二国間合意が締結されていくと説明した。

イェルマーク大統領府長官がテレグラム・チャンネルに書き込んだ

イェルマーク氏は、「この文書は、開かれており、G7以外のその他の国にも安全の保証へと加わる機会を与えている。同宣言は、安全の保証の形での『傘』の存在を象徴化する最初の文書だ。重要なことは、2024年のワシントン北大西洋条約機構(NATO)首脳会議までに、私たちが戦争に勝利し、私たちの国ための安全の保証に署名することだ。それらはNATO加盟までの期間に機能していく」と説明した。

同氏はまた、この採択された「宣言」は、米国、英国、フランス、ドイツの国家安全保障担当補佐官のレベルのチームで数か月にわたり毎日作業が行われ、またその他のパートナー国とも対話をした上で作られた大きな成果だと強調した。

そして同氏は、「私は、この結果を、NATOへの道にあるウクライナの重要な勝利だとみなしている」と指摘した。

さらに同氏は、G7のこの宣言は、ウクライナの必要と同盟国の持つ可能性を考慮した共同の文書だと指摘した。加えて、「宣言自体は、一般的枠組み文書だ。次のステップは、ウクライナと、多国間連携の枠組みで団結した個別の保証国との間の二国間の安全保証合意のシステム締結となる」と説明した。

その他同氏は、同宣言の重要な点は、ウクライナの安全保障は欧州大西洋地域の安全保障の一部であるとの事実が確認されていることであり、この点を、ウクライナの将来のNATO加盟に関する言及が補強していると指摘した。

同氏はまた、安全の保証は、ウクライナの自衛と将来の侵略の防止を支援する方策を含んでいるとし、その方策とはとりわけ、武器供与、防衛産業構築支援、訓練、インテリジェンス・サイバーセキュリティ分野の協力のことだと伝えた。さらに、保証国は、ウクライナの経済、エネルギーの安定性向上を支援していき、技術・財政支援も提供していくという。

加えて同氏は、同宣言は、新たな侵略が生じた際には、ウクライナへと最短期間で防衛に必要なあらゆるものを提供するための、緊急協議を実施する方策を含んでいると説明した。

さらに同氏は、同宣言はロシアの侵略責任追及の支持や、ロシアを罰することを目的とした経済的・法的方策、並びにロシアの戦争への支出を増加させることを想定していると伝えた。具体的な支出増加策としては、制裁のさらなる強化、資産凍結、賠償金徴収メカニズム創設、ウクライナに対する犯罪の罪人追訴が含まれるという。

なお、G7首脳は12日、ビルニュスにてゼレンシキー大統領と共に、ウクライナへの長期支援に関する「ウクライナ支援に関する共同宣言」を発出していた

また、日本外務省は13日、ウェブサイトにて、同宣言の日本語仮訳を公開した。同宣言の全文以下のとおり。


ウクライナ支援に関する共同宣言

2023年7月12日

我々、G7首脳は、国際的に認められた国境内において自国を守り、将来の侵略を抑止することができる、自由で、独立し、民主的で主権国家としてのウクライナの戦略的目標に対する我々の揺るぎないコミットメントを再確認する。

我々は、ウクライナの安全保障は、欧州大西洋地域の安全保障と不可分であることを確認する。

我々は、ロシアによる違法でいわれのないウクライナへの侵攻は、国際の平和及び安全に対する脅威であり、国連憲章を含む国際法の明白な違反であり、我々の安全保障上の利益とは相容れないと考える。我々は、必要とされる限り、ロシアによる侵略から自らを守るウクライナとともにある。

我々は、共通の民主的な価値及び利益、とりわけ国連憲章並びに領土一体性及び主権の原則の尊重に根差した、ウクライナに対する長期にわたる支援について結束している。

本日、我々は、それぞれの法律上及び憲法上の要件に従って、この多国間枠組みと整合的な二国間の安全保障上のコミットメント及び取決めを通じ、主権及び領土一体性を守り、経済を再建し、市民を保護し、欧州大西洋共同体への統合を目指すウクライナに対する我々の長期にわたる支援を明確にするために、ウクライナとの交渉を立ち上げる。我々は、これらの議論を直ちに開始するよう我々のチームに指示する。

我々はそれぞれ、以下の事項に向けた、特定の、二国間の、長期的な安全保障上のコミットメント及び取決めについてウクライナと共に取り組む:

a)以下の継続的な提供を通じ、現在のウクライナを守ることができ、将来のロシアによる侵略を抑止することができるような持続可能な軍事力を確保する:

●防空、砲及び長距離兵器、装甲車両及びその他戦闘機などの主要な能力を優先し、また、欧州大西洋のパートナーとの相互運用性の向上の促進による、陸・空・海の各領域における安全保障支援及び現代的な軍事装備;

●ウクライナの防衛産業基盤のさらなる発展に向けた支援;

●ウクライナ軍に対する訓練と演習;

●インテリジェンスの共有と協力;

●ハイブリッドな脅威に対処することを含む、サイバー防衛、安全保障、強靱性イニシアチブへの支援

b)エネルギー安全保障を含むウクライナの経済的繁栄の促進につながる条件を創出するための、復興・復旧の取組を通じることを含め、ウクライナの経済的安定性及び強靱性を強化すること

c)ロシアの戦争に起因するウクライナの差し迫ったニーズのための、また、ウクライナの欧州大西洋への願望を進めるために必要となる、グッドガバナンスを支える効果的な改革アジェンダの実施の継続を可能にするための、技術的及び財政的支援の提供我々は、将来的にロシアによる武力攻撃が生じた場合には、適切な次の措置を決定すべく、ウクライナと直ちに協議する意図を有する。

我々は、それぞれの法律上及び憲法上の要件に従って、ウクライナに対し、迅速かつ持続的な安全保障支援、陸・海・空の各領域にわたる現代的な軍事装備及び経済支援を提供し、ロシアに経済的及びその他のコストを課し、国連憲章第51条に規定された自衛権を行使するウクライナのニーズについて協議する意図を有する。このため、将来の侵略の際に、ウクライナが自身の領土と主権を守ることができるよう、安全保障上のコミットメント及び取決めの強化されたパッケージについて、ウクライナと共に取り組む。

上記の要素に加え、我々はロシアの責任を追及することにより、ウクライナを支援することに引き続きコミットしている。これには、制裁及び輸出管理を通じたものを含めた、ロシアによる侵略のコストが増大し続けることを確保する取組や、重要な民間インフラへの攻撃を含め、ウクライナで、あるいはウクライナに対して行われた戦争犯罪やその他の国際的な犯罪に対して責任を有する者の責任を追及する取組への支援が含まれる。戦争犯罪及びその他の残虐行為に対する不処罰は、認められてはならない。この文脈で、我々は、国際刑事裁判所(ICC)のような国際的なメカニズムの取組を支持することを含め、国際法と整合的な形で責任を有する者の責任を追求するとの我々のコミットメントを改めて表明する。

我々は、それぞれの法制度と整合的に、ロシア自身がウクライナにもたらした損害を支払うまで、我々の管轄下にあるロシアの国家が有する資産を、引き続き動かせないようにしておくことを再確認する。我々は、ロシアの侵略によって引き起こされた損害、損失又は損傷の賠償のための国際的なメカニズムの設立の必要性を認識し、適切なメカニズムの構築のための選択肢を探求する用意があることを表明する。

ウクライナは以下のことにコミットする:

パートナーの安全保障及びパートナーの支援に関する透明性と説明責任措置の強化に前向きに貢献すること;

a)民主主義、法の支配、人権の尊重、メディアの自由へのコミットメントを強調し、経済を持続可能な軌道に乗せるような法執行、司法、汚職対策、企業統治、経済、治安部門、国家管理改革の実施を継続すること;

b)軍の民主的な文民統制を強化し、ウクライナの国防機関や防衛産業全体の効率性と透明性を向上させることによるものを含め、国防改革と近代化を推進すること。

EU及びメンバー国はこの取組に貢献する用意があり、そのような貢献の方法を速やかに検討する。

この取組は、ウクライナが将来的な欧州大西洋共同体への参加に向けた道筋を追求する間にも進められる。

自由で、強く、独立した、主権国家としてのウクライナを確保するためのこの取組に貢献することを望む他国は、いつでもこの共同宣言に参加することができる。