IAEAとロシアの間には占拠されるザポリッジャ原発を再稼働しないという理解がある=グロッシーIAEA事務局長

国際原子力機関(IAEA)のグロッシー事務局長は、現在IAEAとロシアの間には、ロシアが占拠するウクライナ南部のザポリッジャ原子力発電所の再稼働は行わないということで明確な理解があると発言した。

グロッシーIAEA事務局長がウクルインフォルムへのインタビュー時に発言した(リンク先はウクライナ語)。

グロッシー氏は、ザポリッジャ原発をロシアが再稼働させる可能性について、「私は、ロシアが同発電所を廃止するつもりはないというのが、非常に重要な点だと思っている。彼らがそれをコントロールしている間、彼らは、それを廃止する予定はないということをはっきりさせている。だから、私たちは本件(編集注:再稼働)を提起したのだ。私たちはそれについて議論した。そして、カリーニングラードでの私の最近の技術的協議の際に、再稼働、あるいはより正確には、即時再稼働はない、という意味で、明確な理解に達した」と発言した。

また同氏は、IAEAは、ロシア側に対して、「再稼働の可能性だけでも検討する前には、敷地、発電所、原子炉全体の安全に関する体系的な評価の実施が不可欠」であることをロシア側に示したと伝えた。

さらに同氏は、IAEAはザポリッジャ原発の核燃料の使用期限が切れる問題についても分析しているとし、ウクライナの原子力規制当局やアメリカの核燃料生産企業「ウェスティングハウス」とのやりとりの他に、ロシア側とも「技術的協議」を実施していると発言した。同氏は、ロシアはザポリッジャ原発へと自国の燃料を持ち込むことも理論的にはあり得るが、しかし、現時点ではロシア側がそれを予定しているかどうかについては自身は知らないと発言した。

ロシアが占拠するザポリッジャ原発に自国の燃料を投入した場合のIAEAの反応はどのようなものになるか、との質問に対して、グロッシー氏は、「もう1度言うが、彼らはウクライナに属する物を占拠しているのだ。そのため、本件のどのような行動もこの最初の占有行為によって理論的には無効である」と発言した。

同時に同氏は、IAEAは、ロシア占領政権のザポリッジャ原発における決定を技術的観点からのみ追っていると指摘した。同氏は、「しかし、彼ら(ロシア)が今そこにいる限り、彼らは運用上の決定を採択する。私たちがそこで行っていることは、それらの決定を技術的観点から見ることだ。それが安全なのか、危険なのか、などだ。そして、『それはあなた方の物ではない』と毎回繰り返すわけではない。それは事実として受け入れられている。それがウクライナの核施設だと私が言った瞬間から、その施設の所有者は明らかなのだ。その後は、私たちは、技術的要因、採択される技術的決定を見ている」と発言した。

なお、ザポリッジャ原子力発電所は、2022年3月4日からロシアに占拠されている。同原発では、2022年年末から、全ての原子炉が冷却停止状態に置かれる決定が下されている