2018年の10の出来事
ウクライナにとっての2018年は、多くのドラマや損失こそあったけれど、希望と改善の年であったと言える。
2018年は、ウクライナの独立100周年に関連する多くの記念日のある年であった。ウクライナ人民共和国臨時政府(ディレクトーリヤ)成立、ウクライナ軍創設が100周年を迎え、そしてウクルインフォルムも生誕100周年であった。100年前、キーウ(キエフ)では、全ウクライナ教会会議が開催され、ロシア正教会から独立したウクライナ正教会の創設への支持を表明した。私たちは、今年、これらの重要な100周年を祝ってきた。そして、今年起こった歴史的出来事は、どういうわけか、この100周年と重なるように、100年前に描かれた多くの夢を実現する形で起きたのである。
ここでは、私たちの考える、今後長きにわたり私たちの生活に影響を与える社会的・政治的に重要な2018年の出来事を振り返りたい。
1.ウクライナ正教会の独立承認プロセスの開始
教会法上の新しい教会の創設と独立のプロセスは、様々な出来事の積み重ねであった。大統領から全権委任された人物や外交官が真剣な外交努力を重ね、そしてウクライナの議会は、完璧かつ迅速な投票を行った。最高会議(国会)議員は、ヴァルソロメオス1世コンスタンティノープル総主教への呼びかけを採択するとともに、同総主教による恒常的利用のためにアンドリー教会を譲渡提供することも決定した。
2.ケルチ海峡でのロシアの攻撃開始
11月末、ロシアは、国際法にのっとってケルチ海峡を通行しようとしたウクライナの小型砲艦に対して砲撃し、船員を拘束した。国際社会は、ロシアが陸上だけでなく、海上でも侵略国であるということを目撃することとなった。そして、この事件は、ウクライナ国内10州に戒厳令を発令する原因の一つとなった。
3.米国、対戦車ミサイル「ジャベリン」をウクライナへ無償供与
この供与は、同盟的なサポートの象徴であるとともに、ウクライナの外交的勝利でもあった。この勝利は、ウクライナがロシア・ウクライナ戦争における被害者であることを示すことにもなった。
4.ストックホルム仲裁裁判所における対ガスプロム社訴訟の終了
ストックホルム商工会議所仲裁裁判所は、ロシアのガスプロム社とウクライナのナフトガス社の間の係争に関し、46億7000万ドルの支払いというナフトガス社の要求を認める判決を下した。この判決は、最終的なものであり、市場に基づいて平等なパートナー関係を形成することは可能であると主張したウクライナのナフトガス社のガスプロム社に対する勝利である。この勝利により、この戦争でロシアを負かすことはできないだろうとの考えが覆ったのである。
5.EU・NATO統合路線記載の憲法改正
欧州連合(EU)と北大西洋条約機構(NATO)への統合路線を憲法に記入する改正を大統領が主導。この改正により、東方の政治体制への回帰が不可能であることが示された。なお、2020年には、NATO議員総会のウクライナでの開催が予定されている。
6.高等反汚職裁判所法の採択
汚職との闘いにとって重要な機関である、高等反汚職裁判所の設立法が最高会議で採択された。317票という、昨今稀なほどの圧倒的多数の議員が賛成(過半数は226)。
7.あいさつ「ウクライナに栄光を!」の採択
最高会議は、ウクライナ蜂起軍(UPA)の伝統的あいさつ「ウクライナに栄光を!」「英雄たちに栄光を!」をウクライナ軍の公式なあいさつに定めた。このあいさつは、1918〜1921年のウクライナ革命時にウクライナ人の間で広まったものであり、その後、ウクライナ・ナショナリストやウクライナの独立を求めて戦う兵士達の間のスローガンとなった。ウクライナ独立以降、キーウ市内の独立広場で、学生のハンガーストライキ、2004年のオレンジ革命、2013年のユーロマイダン(尊厳の革命)といった革命が起こる度に、このあいさつが使われた。特に、2013年末、尊厳の革命時に広まり、ウクライナにスポーツの試合で訪れる外国人の間でも人気となった。そして、その後のロシアによる対ウクライナ軍事侵攻が始まると、このあいさつはウクライナ軍の間に広まっていく。2018年8月24日、第27回独立記念日兼ウクライナ国家誕生100周年の記念式典のパレード時、このあいさつが用いられた。2018年10月4日、最高会議は、このあいさつを、ウクライナ国軍と国家警察の公式あいさつに定めた。
8.米国議会上下院、「ホロドモール」を対ウクライナ民族のジェノサイドとして承認
米国議会上下院が、同国共和党・民主党のイニシアティブで作られた、1932〜33年にウクライナで起きた人工的大規模飢饉(ホロドモール)をウクライナ民族に対するジェノサイドであると承認する決議を満場一致で採択した。アメリカ議会が法的効力のある文書で本件を承認するのは史上初めて。
同決議は、1988年4月22日の「ウクライナの飢餓に関する米国委員会」による結論「ヨシフ・スターリンとその周辺人物は1932~33年にウクライナ民族に対してジェノサイドを実行した」を承認する内容を含んでいる。
9.最高会議、ウクライナ軍及びその他軍事機構での兵役時の男女平等権利・可能性保障法を採択
この法律は、非常に重要である。これまでの女性が狙撃兵になることはできたが、公式には何らかの事務職に配属していることになっていた。この法律は、性別差を問わず、契約時や予備兵となる際や、戦争税徴収の条件が平等となり、課題遂行時の責任を一元化するものとなっている。この法律の採択により、数千の女性がウクライナ国軍内で活躍するための道が開くことになった。
10.政府、民間人向けガス料金を25%増
この値上げは、国際通貨基金(IMF)からの支援を可能とし、国内エネルギー産業の発展を助けるものとなっている。
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どの決定も、よく考えられ、多くの困難を乗り越えて採択されており、また他の決定と連携するものとなっている。例えば、「ウクライナに栄光を」のあいさつの採択に続き、20世紀にウクライナの独立のために戦った戦士たちの社会保障強化法も採択された。法律名に「UPA」の名前を入れることは避けられたが、年老いた戦士たちが公正な年金を受け取れるようになったのである。他には、NATO統合路線の憲法改正は、ウクライナが同機構加盟候補となる可能性に関する情報をもたらしている。軍での女性の地位平等化は、保安庁(SBU)軍事医療局長が、女性として初めて将軍の称号を得ることにも繋がっている。
この一年を振り返ってわかることは、色々なドラマがあり、失ったものもあったが、今年が希望と改善の年であったということである。そして、希望の後には、常に勝利が来るものである。
ラーナ・サモフヴァロヴァ、キーウ