ゼレンシキー大統領、国民へ呼びかけ 「ウクライナは決して明け渡さない」
ヴォロディーミル・ゼレンシキー大統領は、ウクライナ国民に対して、ドンバス地方紛争の解決に関する政権の最近の行動、特に、「シュタインマイヤー・フォーミュラ」とは何かにつき説明をした。
3日、大統領が呼びかけ動画を公開した。
大統領は、ウクライナ国民に向け、「もしかしたら、これから、誰かをひどく悲しませるかもしれない。しかし、『裏切り』なるもの(編集注:シュタインマイヤー・フォーミュラのこと)はなくならない。どうしてか説明する。だから、よく聞いてほしい」と述べた。
大統領は、戦争の終結とウクライナの全領土の奪還は、現時点でノルマンディ・フォーマット(編集注:ドイツ、フランス、ウクライナ、ロシア4国の協議フォーマット)の首脳レベルにおいてのみ議論しうるものだと述べた。
大統領は、そのような会談は、「シュタインマイヤー・フォーミュラ」という障害があったから、開催することができなかったのだと強調した、同時に、大統領は、この「フォーミュラ」が過去数週間人々への「脅かし」に用いられてきたと指摘した。
大統領は、「シュタインマイヤー・フォーミュラ」は、クリミア併合を認めるものでも、ドンバス地方を明け渡すものでもなく、ドネツィク・ルハンシク両州一部地域の地方選挙が「明日、機関銃の銃口を突きつけられる中で」行われるわけでもないと強調した。
そして、大統領は、「このフォーミュラは、いわゆるドンバス特別地位法が発効するのはいつかという、そのたった一つのことを述べているだけなのだ。その発効は、その地でウクライナ憲法とウクライナ国内法にのっとり地方選挙が行われた後であり、欧州安全保障協力機構(OSCE)による、その選挙が国際的な民主的基準にのっとっていたかについての報告書が発行された後である。ミンスクで、正にそのことにウクライナは同意したのだ」と強調した。
大統領は、ウクライナ側は、「DPR」や「LPR」との共同の合意文書には署名したわけではないと強調し、「私たちは、このフォーミュラの文書に関する同意が示された個別の書簡をサイディック氏(三者コンタクト・グループOSCE特別代表)に送ったのだ」と指摘した。
その上で、大統領は、「今後、フランス大統領、ドイツ首相、ロシア連邦大統領と出席するノルマンディ・フォーマットの会談が開催され、そこで、私たちは、ドンバス戦争終結の手段について協議する。私のこの問題における立場は、明確かつ分かりやすいものであり、全てのウクライナ人と同じ立場である。すなわち、私たちは皆、ドンバスはウクライナであり、そこには平和が訪れなければならない、完全な停戦が生じ、外国軍が撤退せねばならない、と理解しているのだ」と発言した。
さらに、大統領は、ウクライナ・ロシア間国境のウクライナ側にはウクライナの国境警備隊員がいなければならないと補足した。
大統領は、「人質交換が起こらねばならず、ウクライナ国民皆が故郷に帰らなければならない。選挙は、機関銃の銃口が向けられる中で行われてはならず、ウクライナ国内法によって、ウクライナの政治勢力の候補者のアクセスを得て、ウクライナのマスメディア、国際選挙監視員の参加を得て、全ての国内避難民の選挙権を実現した上でで行われなければならないのだ」と強調した。
大統領は、これらのすべての問題を、ノルマンディ・フォーマット会談で議論すると指摘した。
大統領は、「その会談で、新しい特別地位法に署名するかって?しない。現行法は、2019年12月31日まで効力を持つ。新しい法律は作られる。その新しい法律を、私たちが勝手に作って、急いで採択するかって?しない。私たちは、その法案をみんなで書く。ウクライナの社会全体と協力して、公の場で議論して、一切レッドラインを越えることなくだ。そうすることで、一切の『降伏』などなく、ウクライナの国益の譲渡も一切なく、談合も一切なく、ウクライナ国民の合意ない行動も一切行われない」と強調した。
同時に、大統領は、憲法が保証する国民の抗議の権利を尊重していると発言した。大統領は、「私は、あなた方の声を聞いている。信じて欲しい。私は決してウクライナを明け渡さない。同時に、私は、あなた方に皆に、均衡を保ち、落ち着いて、状況に向き合うよう、そして、印象操作や挑発に屈しないようお願いする」と発言した。
なお、これまでの報道にあるように、1日、ヴォロディーミル・ゼレンシキー大統領が、記者会見にて、ウクライナは「シュタインマイヤー・フォーミュラ」のテキストに同意するとの返答をマーティン・サイディックTCG・OSCE特別代表に伝えたと発表した。
また、2日、クチマTCGウクライナ代表の広報官であるダルカ・オリフェル氏が、ウクライナが同意することを表明した、いわゆる「シュタインマイヤー・フォーミュラ」のテキストの含まれる書簡を公開している。
一方、2日夜、キーウ(キエフ)をはじめ、ウクライナ各地で、「シュタインマイヤー・フォーミュラ」への同意に反対する抗議集会が開催されていた。