ロシアはクリミアの記念碑を4000点以上着服=ユネスコ報告書

国連教育科学文化機関(ユネスコ)は、ロシアの占領するクリミアとセヴァストーポリの状況に関する報告書を公開し、現地の人権状況の継続的悪化、ロシア占領政権によるユネスコ世界遺産やその他の記念碑に対するひどい扱いや略奪の被害が生じていると報告した。

ユネスコが第212理事会会合に向けたクリミア自治共和国の状況報告書を公開した

なお、報告書に掲載されている情報は、ウクライナのユネスコ問題委員会と駐ユネスコ・ウクライナ常駐代表部がユネスコ事務局長の要請を受けて提出したものとのこと。情報には、ユネスコの管轄となる分野に関して、ロシア連邦により一時的に占領されているクリミア自治共和国・セヴァストーポリ(ウクライナ領)の状況概観が提示されている他、2020年1月から2021年7月末までの期間に更新された情報が掲載されているという。

報告書には、「占領の7年間で、クリミアの人権状況は著しく悪化した。体系的な政治的迫害、物理的・心理的圧力、独立報道機関の破壊、宗教的な特徴にもとづいた差別、所有権・言語権の侵害により、4万5000人以上のクリミア・タタール人とウクライナ人が被占領下にある半島を立ち去らざるを得なくなった」と書かれている。

また、ロシアがクリミアにある、4095点の国家・地方記念碑を含む、ウクライナの文化遺産を着服したと説明されており、「ロシアは、そのような着服を、クリミアの過去・現在・未来に対する自らの歴史、文化、宗教面での支配を強化することを目的とした包括的長期戦略の実現のために利用している」と書かれている。

加えて、ロシア連邦が被占領下クリミアから歴史関連品を持ち出しており、ロシア国内で展示しており、また許可のない考古学発掘作業を行ったり、クリミアにおけるクリミア・タタール人の文化的プレゼンスの痕跡を抹消したりしていると説明されている。

また、武力紛争の際の文化財の保護に関する条約(1954年ハーグ条約)の第二議定書の要件違反があるとし、2021年6月に、ユネスコ世界遺産に「ケルソネソス・タウリケの古代都市とその農業領域」(2013年)の名で登録されているヘルソネス・タウリアへの脅威をもたらしかねない重機を使った発掘作業が開始されたことが喚起されている。

さらに、被占領地とロシア領を結ぶケルチ橋と連結する「タウリダ」幹線の建設のために、イスラム教徒の墓地が破壊されたことも伝えられた。

バフチサライ市では、違法に設置された団体が「ハンの宮殿」の記念碑32点を着服したと説明されている。

報告書にはまた、ロシア占領政権がウクライナ人とクリミア・タタール人に母語で教育を受ける権利を与えていないことが指摘されている。