独仏宇露4国協議会合開催 参加者は停戦・ミンスク諸合意を支持 成果文書なし
10日、ベルリンにて、独仏宇露4国からなり、ロシア・ウクライナ武力紛争解決協議を行う「ノルマンディ・フォーマット」の首脳補佐官級会合が開催された。会合は9時間以上に及んだ。ウクライナを代表したイェルマーク大統領府長官は、会合参加者は停戦とミンスク諸合意への支持が表明されたが、成果文書は採択されなかったと述べた。また、次期会合開催時期は未定ながらも「すぐに」開催されると発言した。
イェルマーク大統領府長官が会合後記者会見を行った。ウクルインフォルムの特派員が伝えた。
イェルマーク氏は、「今日、私たちはもう一度、ノルマンディ・フォーマット参加者全員が停戦体制の無条件維持への支持を確認した」と発言した。また、「全員が今日、ミンスク諸合意があること、それを履行せねばならないことを確認した」と述べ、ウクライナ側は建設的な対話を行う準備があると強調した。さらに、同氏は、今日参加者全員が協議を継続する準備があることを確認したとし、「皆、ノルマンディ・フォーマットで協議が行われることに関心がある」と補足した。
同時に同氏は、「今日、私たちは、共同文書に至ることはできなかった」と報告した。また、次期会合に関しては、同氏は「私は、具体的な日程を述べることはできないが、私たち、政治担当補佐官は、必ず、もうすぐ会う。私たちは、このプロセスを止めない。私たちは、どこで(会う)かは決めなかったが、しかしこのプロセスは必ず生じる。私たちは、必ず対話を継続する」と発言した。
さらに同氏は、ウクライナとロシアの間に見解の相違や、調整を要する立場の違いはあるものの、しかし、ノルマンディ参加者には「継続と合意の意志がある」とも発言した。同氏は、「プロセスは生じている。ウクライナ代表団も、ドイツとフランスのパートナーたちも皆、関心がある。そして、ロシア代表者たちもまた、確かに準備しなければならない、首脳会談を可能にしなければならないと言っている」と指摘した。
イェルマーク氏は、ドイツの役割に言及し、「私たちは、ドイツによる、ウクライナの主権と領土一体性への支持を高く評価している。私たちは、ドイツが和平プロセスにて重要な役割の一つを担い続けることを強く期待しているし、そう信じている。ドイツは、ノルマンディ・フォーマットの参加国の一つなのであり、私たちは、ウクライナの地に平和をもたらし、領土を取り返すプロセスにて、ドイツの努力がウクライナを助けることになることを期待している」と発言した。
また、同氏は、2月14日のショルツ独首相によるウクライナ訪問を待っているとし、「内容の詰まった、非常に濃密な訪問となるだろうと思っている」と強調した。
同氏はまた、ロシア・ウクライナ・欧州安全保障協力機構(OSCE)からなる「三者コンタクト・グループ」(TCG)の次期会合にて、「被拘束者の交換、(コンタクト・ライン上の)通過検問地点の開通といった人道問題の障害が取り除かれること」を期待していると発言した。同氏は、コンタクト・ライン上のウクライナ側の通過検問地点は、すでに1年以上前から開通準備ができていることを喚起した(編集注:ルハンシク州の政府管理地域・被占領地間のコンタクト・ラインを一般国民が越えるための通過検問地点「シチャースチャ」と「ゾロテー」のこと。2020年11月10日に三者コンタクト・グループにて両地点の相互開通に合意したが、ロシア武装集団側は当日になっても開通を行わなかった。このため、ルハンシク州では、現在、スタニツャ・ルハンシカの徒歩専用通過検問地点しか稼働していない)。
また、トルコが自国でのTCG会合開催を受け入れると表明していることにつき、イェルマーク氏は、ウクライナ側は同国での開催の準備があると発言した。同氏は、「私たちはよろこんで(同提案を)受け入れた。全ての当事者が同意すれば、もちろん、ウクライナは、協議継続のためにトルコで会合を行う準備がある」と指摘しつつ、現在TCG会合はビデオ会議形式で行われていることを喚起した。また、同氏は、重要なことは協議が生産的であることであり、開催の場所は最も重要なことではないと指摘した。また同氏は、同日のノルマンディ協議ではTCGでの協議活性化についても話し合われたと伝えた。
さらにイェルマーク氏は、現在ウクライナ国境周辺で起きていることは、「誇張抜きに、世界秩序の主要な問題の一つだと思っている」と発言した。同氏は、情勢緩和、ウクライナ国境からのロシア軍の撤退なくして、平穏や情勢正常化について話すことは不可能だと強調した。
同時に同氏は、情勢解決のための協議は、ノルマンディ協議を含めて、さまざまなフォーマットで行われているとし、国際パートナーのサポートに謝意を伝えた。同氏は、「ウクライナにおける戦争の終結なくして、欧州の安全保障システムはあり得ない。そして、もちろん、今日、私たちは、そのことを非常に明確に何度も話した。ウクライナのエネルギー安全保障は、全体の安全保障の一部である。私たちは、ノルド・ストリーム2を、そのエネルギー安全保障の一部だと思っている。そして、ワシントンにて、ドイツと米国が合意したように、ウクライナは、何らかの保証を得るべきである。私たちは、パートナーたちが自らの義務を履行することを信じているし、ウクライナが経済的なものだけでなく、安全保障全般の保証を得ることになることを信じている」と発言した。
一方、ロシアを代表したコザク大統領府副長官は、会合後記者会見にて、次期ノルマンディ・フォーマット首脳補佐官級会合の開催については、TCG協議の後に「TCGでの協議結果を考慮して」決められると伝えた。
その際、コザク氏は、ロシアは、ウクライナが「(三者)コンタクト・グループで政治的条件が協議されるという、紳士的な口頭合意」を履行し始めなければならないと発言した他、「その後(TCG会合後)、いつ私たちが集まるかについての決定が採択される。見解相違が生じるなら、(三者)コンタクト・グループでのその相違の克服を促すために(集まる)」と発言した。
なお、今回のノルマンディ・フォーマット首脳補佐官級会合は、1月26日のパリ会合に続き、今年2回目のものとなる。会合前、イェルマーク大統領府長官は、ウクライナにとっては、同会合で「三者コンタクト・グループ」(TCG)の活動にとっての障害を取り除くことが目的の一つだと指摘していた。
同時に、クレーバ外相は10日、ロシアがウクライナ政府と武装集団「ドネツィク/ルハンシク人民共和国(DPR/LPR)」との直接対話を要求するのをやめれば、ミンスク諸合意の履行は進展させることが可能だと説明していた。クレーバ氏は、ロシアがウクライナと武装集団の直接対話を望む理由として、「なぜなら、ロシアは、もしウクライナがドネツィク・ルハンシクと直接対話をしたら、ロシアのこの紛争における地位が変わることを理解しているからだ。現在、ロシアは紛争の当事者であるが、もしキーウ、ドネツィク、ルハンシクの直接対話が成立したら、ロシアは紛争の仲介者に変身できるからだ」と指摘しつつ、ウクライナがそのクレムリンの要求に同意することはないとし、なぜなら、ロシアが紛争の当事者であることは皆にとって明白だからだと強調していた。
なお、ウクライナ東部におけるロシア・ウクライナ武力紛争は2014年から続いている。ウクライナや、日本を含むG7はじめ、欧米諸国は、ロシアが同紛争の当事者であると説明しており、ロシアに対して、ミンスク諸合意の履行を要求している。他方、ロシア政権は、自国は紛争の当事者ではないと主張し、ミンスク諸合意に関しても履行の義務はないと主張している。