独仏日ポーランド、露の黒海穀物合意離脱にコメント
29日、ロシアが黒海に設定した穀物回廊を通じた農産物輸出の合意からの離脱を発表したことを受け、30日、ドイツ、フランス、日本、ポーランドの政府関係者がコメントした。
ベーアボック独外相は、ロシアに対して、自らの義務を履行するよう要請した。独フランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング紙が報じた。
ベーアボック氏は、「世界の何百万の人が飢えているのに、ロシアはまたしても穀物貨物船の安全を脅威に晒している。それは止められねばならない。(中略)レバノンやニジェールやバングラデシュの家族が次の昼食のための支払いができるかどうかが、ロシア大統領の軍事計画に左右されてはならないのだ」と発言した。
同氏はまた、現在ウクライナからその他の国へと穀物を運ぶ貨物船がそのルートの途上にいると指摘した上で、「私たちは、ロシアに対して、これらの船の安全を脅威に晒すことのないよう、そして国際社会に対する自らの義務を履行するよう要請する」と呼びかけた。
コロンナ仏欧州・外務相は30日、ツイッター・アカウントにて、欧州はウクライナの穀物の陸路での輸送を継続すると伝えた。
コロンナ氏は、「欧州は、大陸を通じた『連帯の回廊』を続けている。世界の食糧安全に必要なウクライナの穀物の半分以上が、そのような形(陸路)でウクライナから出発したのだ」と述べ、これまで陸路での60%のウクライナの穀物が陸路(『連帯の回廊』)で輸送されたことを示すインフォグラフィックを掲載した。
さらに同氏は、ロシアは穀物合意離脱の決定を見直すべきだと強調し、「穀物合意への参加停止により、ロシアは、自らの対ウクライナ侵略によって生じた世界の食糧危機を強めている。同国は、重たい結果をもたらすその決定を見直すべきだ」と主張した。
日本首相官邸広報室は、松野内閣官房長官が31日の記者会見時に、ウクライナ産の農産品の黒海海洋港からの輸出を可能としている黒海穀物輸出イニシアティブへの参加をロシアが一方的に停止すると発表したことは遺憾だと発言したと発表した。
松野氏は、同イニシアティブは、ウクライナから黒海を通じて、900万トン以上の穀物の世界各地、特にアフリカや中東への輸出を実現してきており、世界の食糧市場の価格低下と安定化に大きく貢献してきたことを指摘し、「日本としても、これまでの当事者の努力を高く評価している」と発言した。
また同氏は、今回のロシアの参加停止が世界の食糧供給にもたらす影響、特に途上国における飢餓の拡大など、脆弱な層への影響を深刻に懸念し、注視をしていると述べた他、「廉価で栄養価の高い食物へのアクセスは、世界のあらゆる人々が必要とするベーシックヒューマンニーズだ。今後黒海からの穀物輸出が停止し、食物価格が高騰し、全世界、とりわけ後発開発途上国など、最も脆弱な人々の食糧安全保障を危うくする事態をもたらすことは受け入れられない」と強調した。
その上で同氏は、「日本政府として、ロシアがただちに4者合意に基づく穀物輸出枠組みへの協力を継続することを強く求めていく」と主張した。
ポーランド外務省は30日、ツイッター・アカウントにて、同国とEU加盟国は、ウクライナによる穀物の輸出を引き続き支えていくと発表した。
ポーランド外務省は、「ロシアによる、穀物イニシアティブ参加停止の決定は、同国がいかなる国際合意も遵守するつもりがないことのさらなる証拠である。ポーランドは、EUのパートナーたちと共に、ウクライナや、必要な商品の輸送を必要とする人々を支援するべく、今後も活動する準備がある」と伝えた。
これに先立ち、29日、ロシアは、黒海に設定した穀物回廊を通じた農産物輸出の合意からの離脱を発表していた。
ウクライナのゼレンシキー大統領は、ロシアは9月の時点ですでに、農作物を載せた貨物船の航行を妨害することで食糧危機を意図的に悪化させ始めていたと指摘していた。
バイデン氏は、ウクライナからの穀物輸出を可能とする国連主導の合意からのロシアの離脱発表につき「純粋に言語道断」なものだとし、それは「飢餓を増やす」ものだと批判した。
欧州連合(EU)のボレル上級代表は、ツイッター・アカウントにて、ロシアの発表につき、「ロシアによる黒海合意参加停止の決定は、ロシアの対ウクライナ戦争により生じたグローバルな食糧危機解決のためにとても必要とされている穀物と肥料の輸出の主要な輸出ルートをリスクに晒す」と指摘していた。
その他、ロイター通信は、30日、ウクライナ、トルコ、国連は、現在トルコ領海に入っている16隻の船の航行の計画につき合意したと報じている。
写真:ウクライナ・インフラ省