ゼレンシキー宇大統領、ウクライナ国民へ新年の挨拶【日本語全訳】

動画

ウクライナのゼレンシキー大統領は、自国民に向けて、新年の挨拶を行った。

ウクライナ大統領府が年明け約20分前にゼレンシキー大統領の挨拶動画を公開した。ウクルインフォルムによる日本語全訳は以下のとおり。


親愛なる民よ、親愛なるウクライナよ!

もうまもなく2023年は終わる。私たちの独立のもう一つの年、私たちの独立のための戦いのもう一つの年、戦争のさらなる1年が終わる。自らの大地を巡る、私たちの自由を巡る戦争の、お互いのための戦争の1年が終わる。

何百万人のウクライナ国民に、今年がどのような年だったか尋ねると、何百万の様々な答えが返ってくるだろう。一人一人が何かしら自分のことを思い出す。誰かしら自分の人を思い出す。一人一人に何か笑顔になることがある。うまくいったのだから。一人一人に涙を流すようなことがある。喪失のために。私たちの一人一人が今年闘い、働き、待ち、助け、生き、期待した。各人が、自分らしく。

しかし、一人一人が今年、ウクライナ人皆にとって何かしら共通のものを見つける。一年の主要な総括、今年の主要な達成は、ウクライナが以前より強くなったことだ。ウクライナ人は、より強くなった。

676日前、私たち皆に挑戦が投げつけられた。あらゆる方向から、私たちのところにミサイルが飛んできて、全ての方角から私たちのところに敵の侵略が向かってきた。

676日前、全く同じこの場所で、私たちはあなた方、ウクライナ人に呼びかけ、全面戦争の始まりにつき伝えた。私たちは、その時その先何が私たちを待っているのか知らなかった。多くの人が、私たちが1週間耐え切るとは信じてはいなかった。2022年を戦い切れると信じていた人は少なかった。2023年については、なおさらだ。しかし、今、私たちは2024年を迎えようとしている。

ウクライナは生存している。ウクライナは生きている。ウクライナは闘い、戦っている。ウクライナは進み、ウクライナは道を克服している。ウクライナは成果を得ている。ウクライナは働いている。ウクライナは存在している。そして、それらはいずれも、新年の奇跡ではない。それは、物語でも魔法でもなく、あなた方一人一人の功績なのだ。何千万人のウクライナ人一人一人の、今年ウクライナ人がより強くなっているということを、毎日、毎晩証明してきた一人一人の功績だ。

2023年が始まった時や、1月や2月、私たちは、誇張なく、史上最も困難な冬を克服した。ウクライナ人は寒さや暗闇より強いということを証明した。計画停電や全面停電よりも強いということを。ウクライナ人は、どんな電力不足も克服する。なぜなら、強靭性や勇敢さは不足していないからだ。私たちは闇の中に消えはしない。闇は私たちを飲み込まない。闇は私たちに敗れたのだ。

私たちの電力システムは耐え切った。私たちの国が耐え切った。今年の勝利だ。そして、私は、何よりそれを可能にした一人一人にお礼を伝えたい。

私たちの全ての安全保障・防衛戦力。私は、ウクライナの戦士一人一人のことを誇っている。あなた方がいる限り、ウクライナは存在する。私は、あなた方がこの期間ずっとどれほど勇敢かつ英雄的に私たちを守っているかを知っている。困難で、激しい毎日の闘いの時、1月1日の最初の1分から今まで、新年の夜ですらも、ウクライナの戦士は戦い、弱さを見せないでいる。あなた方は、さらに大きくなった悪を抑えている。しかし悪は何もできていない。なぜなら、あなた方が全ての方面、全ての道、全ての家で戦ってきたからだ。あなた方は強かった。あなた方は、青と黄の心を一切明け渡さなかった。私たちの自由を1キロメートルたりとも明け渡さなかった。それがあなた方だ。私たちの戦士皆。ウクライナ人は悪より強いということを証明している一人一人がだ。

そして、私は人々皆にお礼を伝えたい、私たちの民に。今日ここにいる人皆に。私は、あなた方一人一人を誇りに思っていると言いたい。ウクライナ国民一人一人に。強い人一人一人に。私は、今、皆にとっていかに困難だったかを知っている。人生を休止した人皆にとって。全てを勝利が来る日まで先送りした人にとって。「私は働いている、それは偉業ではなく、義務だ。私は募金している、それは偉業ではなく、ノルマだ」と述べている一人一人が困難だ。働き、日々闘っている人皆が。なぜなら、戦争は勝手に終わるものではないこと、戦争は終わらせるものであることを知っているからだ。勝利は受け取るものでも、贈られるものでもなく、築くものだということを知っているからだ。

そのために、私たちは今毎日ルールにしたがって生きなければならない。働くか、戦うか。なぜなら、私たちに対峙しているのは、世界最大のテロ組織だからだ。そして、私たちが今以上のことをしなければいけないこと、これまで以上に活発な活動をしなければいけないこと、私たちの団結と戦いがこれまで以上に強力でなければいけないことは明白だ。

それは、「私に何ができる?」と毎日自問せず、「できること以上のことをしなければならない」という公式にしたがって生きている人は皆が知っている。なぜなら、それこそが私たちの言語での「勝利」という言葉が意味することだからだ。勝利する、自らに打ち勝ち、圧倒し、並外れた努力を行い、最初思えたこと以上のことを行う。なぜなら、私たち一人一人が本当により多くのことができるからだ。

それは、私たちの英雄的な人々が毎日証明している。私たちの英雄。毎日前線で戦士を助ける私たちの衛生兵や、町や村で人々を救っている医療関係者。彼らはウクライナ人は痛み、怪我、死よりも強いことを証明している人たちだ。そして、ウクライナ人が火や瓦礫より強いことを証明している私たちの消防士、救助隊隊員。ウクライナ人がどんな環境よりも強く、袋小路よりも強いことを証明している人たち。戦争があっても子供たちに勉強を教えている教師たち。オンラインやオフラインの授業、あるいはハルキウの地下鉄で授業を行っている人たち。私たちの鉄道関係者、運転手、通信関係者、エンジニア。ボランティア、外交官、ウクライナのビジネス、税金を払い、ウクライナ人に雇用を与え、種を蒔き、収穫を得て、ウクライナ人にパンを与えている人たち、ウクライナ人に逃げ場を与える人たち、砲弾や弾薬を作っている人たち、直し、建設している人たち、修復し、再生させている人たち、毎日働き、毎日、ウクライナは疲れより強いことを証明している人たち。それはつまり、ウクライナ人はこの戦争より強いということだ。2月24日が私たちをそのことにつき確信させたのだ。

戦争は私たちに多くのことを教えた。多くのことを見せた。多くのことを私たちともに行い、私たちを変えた。

戦争は、残念ながら、家族をばらばらにし、息子や娘を奪ったが、同時に私たちを一つの大きな家族へとまとめた。2月24日、私たちは選択を行った。感情を省いたドライな戦争の真実とは、その選択が様々なものだったという点にある。ある者はここ、ウクライナに残り、ある者は逃げ出し、ある者は閉じ込められ、ある者は子供を逃し、ある者は前線へ行き、ある者は他者を救い、ある者は自分の家族を救い、ある者は出国し、向こうに残り、ある者は出国した後、家へ、ウクライナへ戻ってきた。

そしてそれは、人の物語、男性、女性の物語である。家に座っていられず、前線に向かった人たち、家から遠い外国のどこかには居続けられず、戻ってきた人たちの。「私にとって、それはどうでも良いことではない。私はここで必要とされている。私は勝利にとって必要、ウクライナにとって必要だ」ということを理解し、自らに向けて述べた人たちの。自らが恐怖より強いことを証明した人。疑念よりも強いことを証明した人。なぜなら、ある日、「私は何者なのか?」という問いを自らに投げかけねばならない時が来るからだ。何者でありたいのかという選択をしなければならない時が。犠牲者になるのか、勝者になるのか、難民であるのか、国民であるのか? 一人一人が答えを知っている。答えは、ウクライナだ。なぜなら、ウクライナ人は一緒であるときにこそより強くなるからだ。一緒である時は来ている!

そして、それは、一時的被占領下に現在いるウクライナ人皆が待っている時でもある。自分の中でウクライナを失わなかった人たち皆だ。占領者に自らの頭、自らの心を差し出さなかった人たち皆。自分の子供の中にウクライナを維持している人たち皆。私たちの国旗、ウクライナが戻ってくるという信念を守っている人たち。全ての期待が無駄ではないということを知っている人たち。そして、私は、あなたたちが私たちのあなたたちへのそのことについての感謝を感じて欲しいと思っている。あなた方一人一人なくして、ウクライナは完全ではないということを覚えておいて欲しいとも思っている。

今日、私たちは一緒に新年を迎える。私たちの時間帯で。0時ちょうどに私たちの国歌、ウクライナ国歌を一緒に歌う。ウクライナへの愛と共に。その愛は、占領より強いのだ。そのウクライナへの愛は、侵略者が恐れている原動力なのだ。そして、クリミア、ドンバス、ルハンシク州、ベルジャンシク、メリトポリ、マリウポリの全てが私たちのものであり、敵があなた方のことをとても恐れているということを知っておいて欲しい。政治的な呼びかけを行う国際機関ではなく、私たちが不自由、敵、この戦争より強いということを過去も今もこれからも証明していく、ウクライナの人々のウクライナの心を恐れているのだ。なぜなら、私たちはそういう民なのだから。

そのような人々は、ご覧のとおり、世界中を鼓舞する。そして、そのような国を欧州家族の中に見たがっている。それは、ウクライナのEU加盟交渉開始の決定が示している。それは他の人々が何十年もかけて求める決定だ。かつてはその決定を信じることは難しかったし、懐疑的な人が「それはすぐではない、明日ではない、ほぼ不可能だ、期待するな、信じるな、待つな」と述べてきた決定だ。しかし、2023年のウクライナは、目的意識を持ち、堅固で、一貫し、決断力があり、確信を抱いていた。ウクライナ人は、どのような妨害や拒否権、不信や疑念よりも強い。戦時下に極めて難しいが必要な改革、変革を実現している。そして、その結果として、今この国はEUに待たれているのだ。そして、それはもう単なる口約束ではなく、正式な決定、公的文書になっている。そのプロセスは確実に共通の欧州への完全加盟という論理的な帰結を迎える。リスボンからルハンシクまでの欧州だ。

そして、それは真に歴史的な勝利なのだ。そして、今年はそのような外交的勝利がたくさんあった。その全てが容易ではなかった。ウクライナの「平和の公式」は、すでに世界80か国が支持している。ウクライナのための安全の保証は、すでに30か国が加わった。「穀物回廊」については、「あなた方はロシアなしでは決して実現できない」と言われていた。私たちは封鎖され、脅されていたが、しかし、約1300万トンのウクライナの穀物が運ばれた。今年、ウクライナ人は、私たちは嘘よりも強いこと、情報心理特別作戦よりも強いことを証明した。落胆、分断、無気力よりも。ウクライナへの国際的支持を維持し、それを拡大し、ウクライナのための新しい分野、新しい展望を開拓している。今年だけで、首脳レベルで120の会談があり、防衛支援だけで156の支援が私たちに提供された。それは、ウクライナ人はどのような策略よりも、世界の連帯を弱めたり、同盟国の連合を揺らがす試みよりも強いということを証明している。連合はむしろ増えている。パトリオット連合、航空連合、戦車連合がある。

また私は個別に、ロシアがさらったウクライナの子供たちを取り返す連合に加わった国々にも感謝を伝えたい。私は、今年私たちのところに「パトリオット」「アイリス(T)」「ハイマース」「ナサムス」「エイブラムス」「レオパルド」などがあることについて、パートナーたち皆に感謝したい。そして、私たちのパイロットはF16を習得中であり、私たちはそれらを私たちの空でまもなく見ることになる。私たちの敵に私たちの本当の怒りがどのようなものなのかをまもなく見せられるようにするためだ。

そして、来年、敵は、国産製造業の怒りを感じることになる。私たちの武器、私たちの技術、火砲、砲弾、無人機、敵への海の「ご挨拶」、そして少なくとも100万のウクライナのFPV無人機だ。私たちが惜しみなくご提供する物だ。陸上、空中、そしてもちろん、海上においても。私たちの黒海において。そして、今年、敵は、そこ(黒海)に居場所はないということを、かつてないほど感じることになった。私たちの黒海での行動は、露シスト(編集注:ロシア+ファシストの造語)艦隊の歴史における黒き1ページとなったのだ。

それは、やつらの大型揚陸艦、ミサイル艦、哨戒艦によって公式に「確認」できている。私たちのズミーニー島には、もはや敵の蛇も三色旗もないのだ。

親愛なるウクライナ人よ!

今年を通じて、ウクライナは6000回の空襲警報を乗り切った。ほぼ毎晩、サイレンにて目を覚まし、シェルターへと降りて行き、子供たちを敵のミサイルや無人機から守ってきた。毎晩、毎日、私たちの防空戦力が活動し、ウクライナの空を英雄的に守った。私たちが警報解除の音を6000回聞くことができるようにするために。そして、6000回、外へ出て、空を見ては、ウクライナ人がテロよりも強いということを改めて証明できるようにするために。

敵が、私たちウクライナ人を破壊し、脅し、ウクライナを全て殺し、地中に追いやりたいと願った上で、ミサイルをどれだけ放とうと、どれだけ卑怯で残酷で大規模な砲撃、攻撃をしようとも、私たちはいずれにせよ、外へ出るのだ。なぜなら、私たちの空に地獄をもたらす者たちは、いずれそれを自分の窓から目にすることになるのだから。

676日前、私は、この執務室の自分の仕事場から呼びかけを行った。

私の後ろには、その時、ウクライナの大地の風景画があった。今、私の後ろには、私たちの戦士の標章がある。これら1つ1つが私たちの大地、私たちの空、私たちのウクライナ全て、私たちの人々を物語っている。私たちに何ができたのか、何ができるのかを。前に出て、戦っている人一人一人のこと、この地に生きている人、ウクライナ人であることを誇りに思っていく人一人一人のことをだ。なぜなら、世界が、ウクライナ人は今よりもっと強いということを知ることになるのだから!

私は、私たちの共同活動の中に居場所を見つけた人たち一人一人に対して、あなたのそばにいつでも肩を貸してくれる人、人生において失望させることのない人がいることを祈念する。私は、まだ迷っている人一人一人に対して、来年は勇敢な選択を下すことを祈念する。自らを、自分の国を守り、そのために働き、支援し、自分の国の中で自分を見つけるという選択だ。なぜなら、地球上、ここが唯一、私たち皆が自分について「私たちは家にいる」と言うことのできる場所だからだ。

そして昨年の12月31日と同様、今日私はこう述べる。「私たちは、新年が私たちに何をもたらすのか完全には知らない」と。しかし、今年、私たちは次の言葉を加えることができる。「何をもたらそうとも、私たちはもっと強くなる」と。そして今、私は、戦争の前には大したことのないように思えた言葉で、戦時下には貴重となった言葉を述べたい。

私はあなた方、あなた方の家族、近しい人、全ての親しい人が温かく健康であることを願う。

大切な人がいる人が長生きしますように。誰かを失った人は、その人が心の中に残りますように。

愛する人には、時間を。できるだけ多くの時間を。

子供たちの願いが叶いますように

皆に、人間的な幸せを。

私たちのウクライナには、勝利と平和を。

ウクライナ人よ、新年あけましておめでとう!

ウクライナよ、あけましておめでとう!

ウクライナに栄光あれ!