国際海洋法裁、「ウクライナ対ロシア」の公聴会開始

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23日、オランダ・ハーグの平和宮にて、1982年付国連海洋法条約(UNCLOS)に従った沿岸国の権利侵害に関する「ウクライナ対ロシア」裁判の提訴内容に関する公聴会が始まった。

ウクルインフォルムのハーグ特派員が伝えた。

ウクライナ側の代表者は、アンドリー・コリネヴィチ外務省特命大使。同氏の同日の発言は、ウクライナ外務省広報室が公開した

コリネヴィチ氏は、「ロシアは、アゾフ海とケルチ海峡の領有を望みながら、国際航行を制限し、主に自らの小型の河川船舶を通すために、その入り口に大きなゲートを建設した。ロシアは今、ケルチ海峡とアゾフ海、もしかしたら黒海の一部すらも、自らの海域だとみなしている。ロシアは、これらの海域が21世紀のロシア帝国の一部だとみなされることを望んでいるのだ。あなた方は、ロシアの専門家が、アゾフ海は湖や河川に似ていると述べているのを聞いているだろうが、ウクライナはその発言を断固として否定しているし、この法廷もまたそれを否定せねばならない。アゾフ海は湖ではないし、小さな川の三角州でもない。それは、3万7000平方キロメートル以上の半閉鎖海域である」と発言した。

同氏はまた、ケルチ橋は「違法であり、それは解体せねばならない」と述べ、ケルチ海峡の通行はその航行障害が生じる前と同様にならねばならないと発言した。

さらに同氏は、「ロシア連邦は、その極めて重要な海路(編集注:ケルチ海峡)の通行への恒常的障害を違法に建設した。その橋は、ロシアの調査結果で記されているよりも低く、ロシア自国の商業利益が要求するよりも低く、現在国際海峡で建設されているどの他の橋よりも、どの建設予定のものよりも低い。そのせいで、国際貿易に利用される基本的クラスの船舶のいくつかは、同海峡をもう通ることができない。それら船舶はかつてウクライナの鉄鋼、穀物、その他食料品を世界の他の場所に運んでいた。現在、その橋は、通行を妨げているだけでなく、ロシアによってクリミア半島領へと兵器を恒常的に運ぶためにも利用されている」と発言した。

そして同氏は、「この係争の基本には、他の単純な疑問もある。それは、ロシアは、海峡水中環境や、海峡がつなぐ2つの個性的な半閉鎖海域への影響を評価することなく、橋、パイプライン、海底ケーブルを建設することができるのだろうか?古代の船の遺跡を操作したり、ロシア国家元首のものを含む写真の撮影を行ったりすることを素人に認めることで、ロシアの行動が貴重な遺物を脅威にさらすことにはならないだろうか?というものだ。またしても、それら質問への答えは、ノーであるべきだ」と発言した。

同氏は、ロシアはケルチ海峡を通じた航行とアゾフ海の航行を妨害してきたことを強調し、「同国はウクライナへ向かう1600隻以上の船の臨検のために自らの国境警備庁の武装した人々を派遣した。臨検は、ロシアへ向かう船に対するものよりもはるかに頻繁に行われた。それは、アゾフ海のウクライナの港へ向けて通行したがっていた船舶を40時間にわたり拘束していたが、ロシアへ向かっていた船に対しては3時間だけだった。ロシアは、外国戦によるケルチ海峡の通行を6か月にわたり勝手に禁止した。ロシアは、ケルチ海峡の片道通行を義務付け、水先案内人制度を設け、ロシア船のみがそれを回避できるようにした。これは、航行の自由に関する違反でしかない」と発言した。

ハーグで国連海洋法条約違反裁判「ウクライナ対ロシア」の公聴会が始まる 写真:イリーナ・ドラボク/ウクルインフォルム

同日、ロシアを代表したのはゲンナジー・クジミン氏で、ウクライナの提訴は国連海洋法条約の枠を超えているというものだった。

クジミン氏は、ウクライナの主張は「軽薄」なものであるとし、「国際司法制度の体系的悪用の一例に過ぎない」と発言した。

その際同氏は、ウクライナの主張の大半は国連海洋法条約の枠から外れていると主張し、「私はあなた方に対して、ウクライナとロシアの間の係争状況に関する何らかの結論を得ようとするウクライナの根拠のない絶望的な試みに屈しないよう、もう一度強く求める。ロシアの弁護士が示すように、ウクライナの全ての主張は無根拠で、あなた方の管轄権を超えており、完全に拒否されるべきである」と発言した。

なお、今回の公聴会は、10月5日まで続く。

本件は、2016年9月14日、ウクライナが、ロシア連邦に対して、後者の国連海洋法条約(UNCLOS)への違反に関する訴訟を主導し、ウクライナの黒海、アゾフ海、ケルチ海峡におけるウクライナの権利の確認を求めているもの。

2017年5月にUNCLOSに則った第一回手続会合が開催されており、その際に仲裁裁判所が設置された。

覚書と呼ばれる、ウクライナ側が提出した証拠に関する文書のパッケージには、黒海、アゾフ海、ケルチ海峡におけるロシアのウクライナの主権侵害の事例が掲載されており、2018年2月19日に同仲裁裁判所に提出されている。ロシア側は、本件に関する同裁判所の管轄権を否定する立場を同裁判所に提出している。