「それはプーチンの老いの空想」=ゼレンシキー宇大統領、いわゆる「イスタンブル合意」にコメント
ウクライナのゼレンシキー大統領は19日、2022年のいわゆる「イスタンブル合意」なるものは、ロシアがウクライナの降伏と独立放棄に関する最後通牒であり、実際にはその合意は存在せず、それはプーチンの「老いの空想」だと指摘した。
ゼレンシキー大統領がブリュッセルでの記者会見時に、記者から、いわゆる「イスタンブル合意」をもとにしたロシアとの協議へのウクライナの容易について質問された際に発言した。ウクルインフォルムの特派員が伝えた。
ゼレンシキー氏は、「概して、私は、何かしらに彼(編集注:プーチン)が準備があるとする彼の発言に驚いている。彼は、私が正統でないと常に話しているのに…。『非軍事化』『非ナチ化』…、最後通牒の中にもあったし、彼らはいつもそのことについて話している。今日惑星で一番のナチであるプーチンが、ウクライナ人の『非ナチ化』について語っているのだ…。ウクライナに軍が存在しないようにするという『非軍事化』、あるいは、何だったか、覚えていないが、4、5万などという話だった。彼はウクライナにただただ降伏するよう、紛争を凍結するよう、発展の向きを変えるよう、欧州もなく、NATOもなく、ロシア連邦へと向きを変えるように提案していたのだ。彼らが私たちの国を管理し、私たちから独立を剥奪するためだ。そして、その人物がそれは何らかの合意だと話しているのだ…。単なる老いの空想だ。彼は別世界、自らの水槽の中に生きているのだ」と発言した。
また同氏は、いわゆる「イスタンブル合意」なるものは一度も存在したことはないとし、2022年のロシアの全面侵略当初にあったのは最後通牒だとし、その後ロシアは色々な情報源や色々な人物を利用しながら、その最後通牒を詳細化したのだと説明した。
同氏は、「彼ら(編集注:ロシア)の様々な方面のメッセンジャーが、色々な情報源を利用しながら、私たちにその最後通牒の詳細を示したのだ。ウクライナにはそのメッセンジャーはいない。彼らはすでにロシアやら国外やらに走り去った者たちだ。いずれにせよ、ウクライナはロシアの最後通牒には同意しなかった。彼らは、次の行動を実行しようとした。彼らは、その最後通牒に関する立場を少し弱めた。ベラルーシやトルコの会合のことを彼らは『イスタンブル合意』と呼んだのだ。ウクライナは何にも署名していないし、いかなる合意も存在していないし、ロシアの最後通牒に対して返事をしたのだ」と発言した。
これに先立ち、ロシアや諸外国の報道機関が、「開戦直後の2022年3月に、ロシアとウクライナの直接交渉により和平達成の機会が生じていたが、米英が交渉を破綻させた」などと主張する記事を断続的に掲載していた。そのロシアとウクライナの和平達成に近かったと主張される協議は、協議開催場所から「イスタンブル合意」などと呼ばれることがある。
なお、2022年3月には、ロシア軍のキーウへの攻撃の失敗が明らかになっており、イスタンブルにおける最後の和平協議となった3月29日の協議より前に、ロシア軍は戦力再編を目的にキーウ周辺から撤退をすでに開始していた。またラブロフ露外相は4月7日に「和平提案は受け入れられない」と発言している。
英国のジョンソン元首相は、自身が2022年4月9日にキーウを訪問した際に、あたかもゼレンシキー宇大統領に対して、ロシアと和平交渉をするなと命じたとするロシアの主張を否定している。
写真:欧州連合(EU)