「イスタンブル合意」は公正ではなく、全く新しいものが必要=ケロッグ米特使
米国のケロッグ・ウクライナ・ロシア問題特使は6日、2022年3、4月にウクライナとロシアが協議していたとされるいわゆる「イスタンブル合意」と呼ばれるものは、将来の合意の公正な枠組みとはみなすことはできず、新しい文書が必要だとの見方を示した。
ケロッグ特使が米外交問題評議会(CFR)で「ウクライナにおける戦争の現状と戦争とどのように終わらせるか」という題目で演説した際に発言した。
司会者が、米国のウィトコフ中東問題特使が、いわゆる「イスタンブル議定書」がウクライナとロシアの間の和平合意の基盤になり得るとの見方を示していたことを喚起した上で、ケロッグ氏に同文書をもとに作業が行われているかと質問すると、ケロッグ氏は否定した。
その際ケロッグ氏は、イスタンブルでの要求は「非常に弱っていたウクライナ」に対して突きつけられたもので、全面侵攻から30日しか経っていない時のものだと喚起した。また、ケロッグ氏は、その文書は「出発点」にしかなり得ないと指摘した。
そして同氏は、「しかし、私は、私たち皆にとってそれは公正な枠組みだとは思っていないし、私たちは全く新しい何かを策定しなければならないと思っている」と発言した上で、全ては「交渉グループがどのように前進していくか」にかかっていることだと補足した。
さらに同氏は、ウクライナがその際いくつかの条件に同意していたとしても、それが行われていた時の時期を考慮すべきだと述べ、「あなたは3年前には戻れないのだ」と指摘した。
その他、トランプ政権はウクライナへの軍事支援の引渡しを一時停止したことで何を求めているのかと質問されると、ケロッグ氏は、それは交渉を促すことが目的だと発言した。
同氏は、「私は、目的は彼らを外交活動に携わらせることだと思っている。(中略)私たちは、双方に合意に関して見解相違が生じることを知っている。そのため、私は、それは、和平協議、和平合意へと移行したいという認識へ移行するための、一種の強制機能だと思っている」と説明した。
さらに同氏は、一時停止の決定は、トランプ大統領が下したと述べ、いつ米国が一時停止を止めるかも大統領が決めると述べた。
同氏はその際、「政権の誰も、私たちの内の誰も、大統領を代表して話そうとしてはいけない。それは彼の権利だ。そして、私は、彼がそれが公正だと思った時、あるいは一時停止を解除すべきだと思った時に、決定を採択する権利を彼に委ねる」と述べた。
また同氏は、先週金曜日にホワイトハウスで生じた米宇両大統領の間の協議の失敗は自身にとっては驚きだったと述べた。
その際同氏は、「それは私たちが予期していたものではなかった。(中略)公の場で議論をしたり、大統領執務室で、ロシア側ではなく、本当は私の側に立つべきだとして、米国大統領の意見に挑戦しようしたりすべきではなかった」と発言した。
これに先立ち、ロシアや諸外国の報道機関が、「開戦直後の2022年3月に、ロシアとウクライナの直接交渉により和平達成の機会が生じていたが、米英が交渉を破綻させた」などと主張する記事を断続的に掲載していた。そのロシアとウクライナの和平達成に近かったと主張される協議は、協議開催場所から「イスタンブル合意」などと呼ばれることがあるが、両国は当時いかなる文書にも合意していない。
なお、2022年3月には、ロシア軍のキーウへの攻撃の失敗が明らかになっており、イスタンブルにおける最後の和平協議となった3月29日の協議より前に、ロシア軍は戦力再編を目的にキーウ周辺から撤退をすでに開始していた。またラブロフ露外相は4月7日に「和平提案は受け入れられない」と発言している。
ウクライナのゼレンシキー大統領は2024年12日、2022年春のいわゆる「イスタンブル合意」と呼ばれるものは、ロシアがウクライナの降伏と独立放棄に関する最後通牒であり、実際にはその合意は存在せず、それはプーチンの「老いの空想」だと指摘していた。
ウクライナのクレーバ当時外相は2024年5月、、「2022年春にウクライナとロシアは実は合意に近付いていた」とする話はロシアと親露的な人々が好んで広めている嘘で、注意深く事実を見れば、それはどのような批判にも耐えられるようなものではないと説明していた。
英国のジョンソン元首相は、自身が2022年4月9日にキーウを訪問した際に、あたかもゼレンシキー宇大統領に対して、ロシアと和平交渉をするなと命じたとするロシアの主張を否定している。