あらゆる領土面の譲歩に反対のウクライナ国民 51%

世論調査

ウクライナで2024年12月に実施された世論調査では、あらゆる領土面の譲歩に反対するウクライナ国民の割合は51%であった。また、譲歩の準備があるとの回答は、同年10月の調査時には32%だったが、12月の調査時には38%まで増加した。

キーウ国際社会学研究所が2024年12月2日から17日にかけて実施した世論調査結果を発表した

発表には、「2024年5月と10月初頭の間では状況がほとんど変わらなかったが、10月初頭と12月の間では、概して一定の領土面譲歩への準備があるという人物の割合の32%から38%への増加が観察されている。その際、一切の譲歩に断固として反対するという人の割合は減少した。ただし、あらゆる困難な状況下の中であっても、12月の時点で51%のウクライナ人があらゆる領土面の譲歩に反対した(10月初頭では58%だった)」と書かれている。

研究所は、10月初頭と比べて、あらゆる地域で譲歩への準備がある人の割合が一定程度増加する傾向があると指摘しつつ、同時に全ての地域で、譲歩に断固として反対する人が多数派である傾向は維持されているとも伝えた。

その他研究所は、あり得る「和平合意パッケージ」を3つ用意し、回答者に対して、受け入れ可能かどうかを尋ねている。各パッケージには、ウクライナにとって肯定的な要素と否定的な要素が含められている。回答者には、ランダムでその内の1つが提示され、受け入れ可能性が尋ねられたという。

3つのパッケージは以下のとおり。

第1パッケージ

・ロシアは現在占領している全ての領土のコントロールを維持する。

・ウクライナはNATO加盟を断念する。

・ウクライナはEUに加盟し、西側から復興のためのあらゆる必要な資金を受け取る。

第2パッケージ

・ウクライナは公式には認めないものの、しかしロシアはザポリッジャ州、ヘルソン州、ドネツィク州、ルハンシク州、クリミアの占領地のコントロールを維持する。

・ウクライナはNATOに加盟し、真の安全保障を得る。

・ウクライナはEUに加盟し、西側から復興のためのあらゆる必要な資金を受け取る。

第3パッケージ

・ウクライナは公式には認めないものの、しかしロシアはドネツィク州、ルハンシク州、クリミアの占領地のコントロールを維持する。

・ウクライナはザポリッジャ州とヘルソン州の全域のコントロールを回復する。

・ウクライナはNATOに加盟し、真の安全保障を得る。

・ウクライナはEUに加盟し、西側から復興のためのあらゆる必要な資金を受け取る。

この設問に対する回答につき、研究所は、「EUには加盟するが、現在占領されている領土の解放の延期とNATO加盟の禁止という選択肢(編集注:第1パッケージ)は、41%が支持したが、47%が断固として受け入れられないとみなした。(2024年)6月には、38%がその選択肢を受け入れる準備があり、54%が断固として反対していた。つまり、このパッケージを受け入れる準備がある人は増えているが、しかし、実際には、現在それを支持しているのは少数派である」と指摘した。

現在占領されている領土の解放は延期となるが、ウクライナがEU加盟だけでなく、NATOにも加盟するという選択肢(第2パッケージ)は、64%が支持する準備を示し、21%が断固として反対した。昨年6月時点では、この選択肢を支持する準備があったのは47%で、38%が断固として反対していた。「つまり、半年で、NATO加盟の代わりに現在占領されている全ての領土の解放を延期する選択肢への準備が著しく増加したのだ」と説明されている。

第3パッケージとなる、NATO・EU加盟、ヘルソン州とザポリッジャ州の解放、ドネツィク州・ルハンシク州とクリミアの解放延期の選択肢は、60%が受け入れ可能だと回答、26%が断固として受け入れられないと答えた。昨年6月時点では、この選択肢を受け入れ可能だと答えたのは57%で、反対は33%だった。つまり、過去半年で、第2パッケージほどではないが、同選択肢の支持も増加したことになると指摘されている。

これらの回答を踏まえて、キーウ国際社会学研究所は、「ウクライナ人は引き続き柔軟で、和平合意のパラメーターについての議論にオープンであるものの、他方で、『どんな条件でも良いので平和を』というものには全く同意しないということである。検討された選択肢への態度が示すことは、もしロシアの現在の要求(メディア空間に定期的に現れてくるもの)を選択肢に加えた場合、圧倒的多数がそれらを否定するだろうことを示している」と強調した。

今回の世論調査「全ウクライナ世論調査『オムニブス』」は、キーウ国際社会学研究所が2024年12月2日から17日にかけてCATI方式で実施したもの。今回は、研究所の意向で、定期的に尋ねている設問に加えて、トランプ氏の勝利への受け止め方に関する設問が足された。ウクライナ政府がコントロールしているウクライナ全ての地域の住民985人に対して実施。対象は、18歳以上の成人のウクライナ国民で、質問の際に、ウクライナ国内の政府コントロール地域に居住している者。

理論的誤差は最大で±4.1%だと書かれている。また研究所は、戦争という条件下では上述の理論的誤差の他に、一定の体系的な偏差が加わるとしつつ、同時に、今回の調査はそれでも高い代表性が維持されており、世論の理想的な分析を可能にするものだとの見方を伝えている。