ジョンソン英首相、ウクライナ訪問 「露の更なる対宇侵攻はプーチンにとっての敗北となる」
ジョンソン英首相がゼレンシキー宇大統領との共同記者会見時に発言した。ウクルインフォルムの記者が伝えた。
ジョンソン首相は、「ロシアのウクライナへの更なる侵攻は、政治的、人道的な惨劇となる。私は、それはロシアにとっても、世界にとっても軍事的な惨劇となると思っている。そして、その潜在的な侵攻は、プーチン大統領にとっての敗北ともなるだろう」と発言した。
またジョンソン氏は、ロシアが更なる侵攻に踏み切った場合の対露制裁について「私たちは、他国とともに、制裁パッケージやその他の方策を準備している。それは、ロシア兵の足がウクライナ国境を越え、ウクライナ領に踏み込んだその瞬間に発効する」と説明した。また、英国の制裁は英国法改正にも繋がるとし、法改正により、ロシアと同国国民、団体、商業主体の商業的利益を制裁対象とすることができるようになると伝えた。また、英国側は、米国側と同アプローチにつき調整が済んでいるとし、その制裁が同時発動されることへの期待を表明した。
同時に同氏は、「私たちはそれを、ロシアに対する敵対心を示すために行っているのではなく、侵略を前に、ウクライナの自由、民主主義、主権の防衛へのコミットメントを示すために行っているのだ」と強調した。
さらに同氏は、欧州を再び影響圏で分断するような「新たなヤルタ」は絶対に受け入れられないと発言した。同氏は、欧州安全保障機構一般についての話が行われている中で、「私たちは、プーチン大統領が、ウクライナのこめかみに銃口をつきつけながら、私たちにアプローチの変更を強制して、目的を達成することは望まない」と強調した。同氏は、「現在ロシアは、その(欧州の)機構を弱体化し、私たちの生活基盤を弱体化し、新しい『ヤルタ』を作ろうとしている。それは、ウクライナだけの話ではなく、ロシアの影響圏の話、モルドバ、ジョージア、その他の国の話でもある。それは絶対に受け入れられない。そのため、この瞬間は極めて重要であり、ウクライナの側に立つことが極めて重要なのだ」と発言した。
さらに同氏は、米国、フランス、ドイツ、イタリア、北大西洋条約機構(NATO)事務総長との協議を行ったとし、各国首脳はウクライナの自決権を支持するとの点で一致していることを伝えた。
その上で同氏は、「現在、ロシアが交代し、外交の道を選ぶことが極めて重要だ。私たちは、もちろん、対話に関与していく。しかし、制裁は準備ができており、私たちは、軍事的サポートを与えるし、私たちの経済分野の協力も集中的に行いたいと思っている。なぜなら、英国は、今後ウクライナの揺らがない同盟国となるからだ」と強調した。
ジョンソン氏はまた、英国は、ウクライナとのインフラやエネルギー分野の共同プロジェクトに約20億英ポンドの拠出を行うと発表した。同氏は、「一昨年、私たちは、政治協力、自由貿易圏、戦略的パートナーシップについての協定に署名した。それは、成功裏に機能しており、それにより私たちの二国間貿易は60%増加している」と伝えた。
加えて同氏は、「私たちは、全ての分野でのパートナーシップを拡大したい」とし、「私たちは、貿易自由化に関する協議を開始することで合意した。ウクライナの艦隊のための資金以外に、英国はウクライナとの、特にインフラとエネルギーの分野の、具体的かつ互恵的プロジェクトの実現のために約20億ポンドを拠出する」と発言した。
これに対して、ゼレンシキー・ウクライナ大統領は、同日の会談でロシア侵略の抑止方策について協議したとしつつ、「私の考えははっきりしている。『抑止』という言葉が自らのロジックを示している。どのような(抑止)方策も、何かが生じてからではなく、何かが生じる前に効果を発揮する。予防でなければならない。予防の方が、蘇生より良い」と発言した。
同時にゼレンシキー氏は、英国はそのような抑止に対する考えを理解しているとし、英国がウクライナ関連の制裁を強化する決定を採択したことを指摘した。
また同氏は、「私たちは、英国に私たちの欧州統合願望への支持についても感謝している」と発言した。
ゼレンシキー氏は、ジョンソン氏との協議において、ウクライナの防衛力強化が重要な議題だったと伝えた。同氏は、ウクライナは英国の17億ポンドの資金供与の決定に感謝しているとし、また「さらに私たちは、黒海地域の平和と安全を保障するための共同行動、サイバーセキュリティ分野の連携活性化についても合意した」と伝えた。
ゼレンシキー氏はまた、ジョンソン氏をウクライナで迎えられることを嬉しく思うとし、今回の訪問がウクライナにとって困難な時期に実現されたことを強調した。同氏は、「ジョンソン首相は、ウクライナの主権と領土一体性への完全な支持、クリミア・プラットフォームをはじめ、クリミア脱占領、全てのウクライナ領の回帰を目的とする更なる連携の準備があることを明言した」と伝えた。
その他、ゼレンシキー氏は、英国のウクライナ海軍支援につき、「ウクライナの海軍発展・構築問題とは、英国からウクライナへのサポートの問題、ウクライナ艦隊建設の問題である。それ(艦隊構築)が今日の話ではないこと、今日黒海にて私たちを守るものではなく、今日黒海やアゾフ海の障害を取り除くものではないことは、私はわかっている。しかし、それでも、それは強力なステップなのだ。独立した艦隊は、私たちの沿岸と海上を真に守っていく」と発言した。同氏はまた、英国とのウクライナ海軍支援問題につき、「私たちはその問題を数年前に始め、現在その件で実践面に到達している。そのことや、海軍基地などだ」と発言した。
なお、これに先立ち、ウクライナは、2035年までに、艦隊建設プログラムを実現する予定であることが伝えられていた。
写真:Andrew Parsons / No 10 Downing Street