欧州議会、ウクライナへのEU加盟国候補地位の付与を勧告
同決議に賛成した欧州議員は438名。反対は65名、保留は94名だった。DWが報じた。
欧州議会は、決議により、EU理事会に対して、ヴェルサイユ宣言(2022年3月10、11日)がウクライナの欧州願望と同国のEU加盟申請を認めているとし、ウクライナの民との連帯を示す明確な政治的シグナルとして、ウクライナに対してEU加盟候補国地位を付与することに同意するよう勧告した。同時に、DWは、ヴェルサイユのEU加盟国首脳会談時の同宣言は、実際には表現が非常に慎重な内容となっており、認められているのは、ウクライナの欧州願望とウクライナが欧州家族に属しているということだけだと補足している。
DWはまた、欧州議会はこれまではEUに対して、「ウクライナへの加盟候補国地位付与に向けて作業する」ことのみ呼びかけていたと指摘している。今回の決議ではより明確に同地位の付与を呼びかける表現となっている。
決議には、モルドバとジョージアの欧州願望についても喚起されている。両国もウクライナに続いてEU加盟申請を行っているが、他方で同決議には、両国に対する加盟候補国地位付与は勧告されていない。
また欧州議会は、「ウクライナ政権が表明した必要に応じて、特に、欧州平和ファシリティと調整センターを利用し、またEU加盟国とウクライナ間の二国間合意に従って、遅滞なく武器を供与すること」を勧告した。なお、EUはすでに、欧州平和ファシリティを用いて、ウクライナによる武器購入のために20億ユーロを拠出している。
さらに決議では、「ウクライナが、他のどの国とも同じく、自らの政治連合、経済統合についての決定を他国の干渉なく独自に採択する主権的権利を有している」ことを確認するよう呼びかけられている。
また、欧州議員たちは、ウクライナにおいてロシアが行っている戦争犯罪の捜査と国連の特別法廷への呼びかけを支持するよう勧告した。
欧州議会は、EUはロシアが制裁を回避するのを支援する団体や第3国に対する二次制裁を発動すべきだとの主張した。決議ではまた、退路制裁の影響を詳細に分析することも呼びかけられている。
また、同決議は採択前に、「ロシアの敗北」を巡って議論が生じていた。採択された決議案では、「自由世界の戦略的目的は、ウクライナを支援し、ロシア侵略者に敗北をもたらし、ウクライナの国際的に認められた領土へのコントロールを回復することだ」と書かれている。これに対して、議会の社会民主党会派は、「ロシアの敗北」に関する記述を回避するよう求め、代わりに、ロシアによる「隣国の領土一体性に脅威をもたらし、国際安全保障を将来にわたって弱体化する」能力を弱らせること、という記述に修正することを提案していたが、この案は支持されなかった。
さらに、「ロシアによる2008年のジョージアに対する侵略と2014年のウクライナに対する侵略」への適切な対応の欠如が、ロシアに対して、ウクライナへの全面的侵略を含む、攻撃的軍事的・政治的キャンペーンを継続することを促すこととなった」という記述も維持された。
他方で、社会民主党会派は、プーチン露大統領がロシアを「全体主義の除け者国家」へと変えたとの記述を帰ることには成功した。代わりに、「ロシア連邦の対ウクライナ侵略戦争とロシアの欧州平和秩序への攻撃は、ロシア国内の市民社会と政治的野党への強固な弾圧を背景に行われており、それは強まる全体主義体制の生き残りを確保することを目的としている」との記述が330名の議員の賛成により採択された。