独立約30年で「ウクライナ国民」アイデンティティが過去最高に
キーウ国際社会学研究所が7月6日から20日にかけて実施した世論調査結果を公開した。
調査結果によれば、領土・政治的文脈におけるアイデンティティを問う、「あなたは何よりもまず自分を何者とみなすか?」との設問に対して、84.6%が「ウクライナ国民」と回答した。
「ウクライナ国民」との回答には、年齢、地域、言語・民族、性別、町・村の差といった回答者のカテゴリーの間に大きな差は見られなかった。ウクライナ東部住民の間の81%が「ウクライナ国民」との回答を選び、ロシア語話者民族的ウクライナ人の間では81%、ロシア語話者民族的ロシア人の間では78%だった。
続いて、自分の居住する「自治体の住民」(4.8%)、「地域(州・地方)の住民」(1.3%)との回答を計6.1%が選んだ。「自民族代表者」との回答は3.3%、旧ソ連国民との回答は0.9%、欧州国民は1.6%、世界国民は2.2%だった。
また、キーウ国際社会学研究所の調査結果では、ウクライナの独立以降の年月を通じて、ウクライナの住民の「国民」アイデンティティが約2倍になっていることがわかる。グラフを見ると、1992年の調査時には、「ウクライナ国民」との回答が45.6%だったのに対し、今回の調査では84.6%となっている。
社会学博士のデンビツィキー氏は、ウクライナではいわゆる「市民動員」と呼べる、社会における国民アイデンティティを強める出来事が3回あったと指摘している。同氏によれば、1回目は2004年(編集注:オレンジ革命)の際で、国民アイデンティティが目立って強化されたものの、ウクライナ社会が強靭な進化を遂げるには至らなかったという。
2回目は、2013年の革命(編集注:尊厳革命、マイダン)を背景とする革命的変化だという。これにより、社会における国民アイデンティティの受け止め方に強い肯定的な変化が起き、しかもそれはその後の8年間にも徐々に強まっていったとという。同氏は、それに伴い、ウクライナ社会における「地元・地域」アイデンティティは後退していくが、同時に同アイデンティティは比較的広域に高い水準を維持もしていたと指摘した。
今回、2022年のロシアの対ウクライナ全面的侵略は、3回目の国民アイデンティティにおける革命的変化をもたらしたという。同氏は、この変化により、地元・地域アイデンティティは周辺的なもの、あるいは補完的なものとなったと説明した。
デンビツィキー氏は、「私は、今後、ウクライナの持続する民主的発展の中で、国民アイデンティティが75%を下ることはないと見ている」と発言した。
今回の世論調査は、2022年7月6日から20日にかけて、電話インタビュー方式(CATI)にて、ウクライナの全ての地域の居住者2000人を対象に実施したものだという。