ウクライナ情報当局、ロシアによる特殊作戦「マイダン3」を警戒

ウクライナ国防省傘下情報総局のユソウ氏は、ロシアがウクライナに対して今年の3〜5月に実現を目指すとする特殊作戦「マイダン3」には、クレムリンがセルゲイ・キリエンコ露大統領府第一副長官やウラジスラフ・スルコフ元大統領補佐官などを関与させること決めていると発言した。

国防省広報メディア「アルミヤインフォルム」がユソウ氏の発言を伝えた

ユソウ氏は、ウクライナへの特殊破壊作戦、コードネーム「マイダン3」に関与させる人物のリストには、キリエンコ露大統領府第一副長官、スルコフ元大統領補佐官の他、ウクライナで国家反逆罪を犯してロシアへ逃亡した人物や、現在ウクライナ国内にいる人物も含まれていると発言した。

その際同氏は、「具体的な名前に関して言えば、キリエンコはそうであり、スルコフもそうだ。現在モスクワに匿ってもらっているあらゆる敵対協力者・裏切り者全員が入ることは当然であるし、彼らも何らかの形で活動することになる」と指摘した。また同氏は、「残念ながら、今影響力の対象となってウクライナにいる人々の名前もある。それは、彼らがすでに同意していることは意味しない。その情報は確認中である」と発言した。

同氏は、ウクライナ国内で防諜方策が恒常的に行われていると指摘した。

また、情報総局は2月27日、ロシアの対ウクライナ特殊作戦「マイダン3」が2024年3〜5月にピークを迎えるとするウクライナ大統領管轄情報委員会の声明を発表した

同声明には、「ロシアによる全面侵略戦争開始から2年経つ中で、ウクライナは国家として、国民として、自由かつ平等な人々の共同体としての存在に対する客観的脅威に晒されている。現在の血まみれのロシア・ウクライナ戦争からの国際社会の注意を意図的にそらすために、侵略国首脳陣は、計画的破壊工作、情報特殊作戦、明白な挑発行為の実現に動き出した」と書かれている。

発表によれば、敵の主な活動方向性は、ウクライナの動員を妨害し、ウクライナが勝利を達成できないとする偽情報を拡散し、世界中に「ウクライナ疲れ」に関する偽情報を拡散し、そうすることで、国際社会では、ウクライナ支援を減らすことを目的にしているという。

また、ウクライナ国内では、国民の士気を下げ、パニックを引き起こし、軍人と民間人の間にくさびを打ち込み、政治指導者や市民社会を含め、人々の間に対立を作り出すことが目的となっていると説明されている。

発表には、「ロシアの情報機関は、ハイブリッド戦争遂行の分野にて大きな経験を有している。ウクライナに対する情報攻勢にて、彼らは、通常戦と同程度の資金を費やしている」と指摘されている。

さらに、委員会は、昨年11月、特殊作戦「マイダン3」の一環で、ロシアは「テレグラム」に反ウクライナ感情を拡散することを目的に2億5000万ドルを費やしたと伝えた。同時に、同特殊作戦の総予算は15億ドルという巨額であるとし、これはロシアの特殊作戦史上最も高額なものとなっていると説明されている。

特殊作戦「マイダン3」は、2024年3〜5月にピークに達すると予想されており、今後数週間にわたり、ロシアは世界の安全保障にとって破壊的なナラティブの拡散や、ウクライナ国内や、ウクライナを効果的に支援している世界の様々な場所での対立を先導する試みに最大限の努力を費やすことが警告されている。

この作戦の手法は、ロシア情報機関が古くから採用しているものだと指摘されており、それは、5月20日以降にウクライナで下される決定の正当性に疑問を投げかけ、パニックと不信を広め、民間人と軍人を意図的に対立させ、ウクライナと同盟国を対立させ、社会に様々な「陰謀論」を拡散することだと説明されている。

委員会は、「これは、ロシア連邦による、新しい型の超兵器の開発に関する公的発言を背景に行われていることである。ロシア人は、それが今後10年間、西側諸国に対するロシアの技術的優位を保障するものだと考えている。そこから、ロシアのウクライナにおける目的に抵抗することは世界にとって危険である、だからロシアはウクライナ抜きにウクライナに関して直接対話するよう他の国に働きかける、という流れになっている」と解説している。

また、ロシア側は、6月前半にはウクライナ情勢を動揺させることに成功し、その状況を使う形で、ウクライナ東部でウクライナを軍事的に敗北させることを考えているのだという。委員会は、「この作戦の重要な考えは、その点にある」と説明している。

その上で、委員会は、ウクライナ社会や国際社会に対し、得に情報空間での共同抵抗と安全保障措置を強めるよう呼びかけ、「私たちは社会の団結を必要としている」と強調した。

これに先立ち、2023年11月、ゼレンシキー大統領は、ロシアは国内に混沌を作り出すことで、ウクライナ社会の分断を望んでいると発言していた。同氏は、その偽情報計画は「マイダン3」と呼ばれていると述べていた。

また、2024年2月、米ワシントンポスト紙は、欧州情報機関が入手したクレムリンの情報工作に関する内部文書を入手・調査した記事を公開していた。同記事には、ロシアがゼレンシキー宇大統領やザルジュニー当時軍総司令官の対立に関する当時噂されていた緊張を利用して、ナラティブを拡散しようとしたり、ウクライナ国民の不安を利用しようとしたりするロシアの情報工作の手法や、キリエンコ露大統領第一副長官が2022年後半にウクライナを標的とする偽情報チームを立ち上げたことなどが説明されている。