ウクライナのクルスク州での作戦は「レッドライン」論の誤りを示している=専門家

スウェーデン国際関係研究所のウムランド専門家は、ウクライナのロシア領クルスク州での作戦の効果と目的は、部分的に、ロシアの「レッドライン」論の誤りを改めて示すことにあるかもしれないと指摘した。

ウムランド氏がフォーリン・ポリシーに論考を寄稿した

ウムランド氏は、以前、米国やドイツやマスメディアの間では、第三次世界大戦や核戦争の始まりとなり得る、ロシアのあり得る「レッドライン」についての議論が盛んだったことを指摘した。同氏はまた、その議論における「レッドライン」の1つは、西側武器を使った上でのロシア領への戦争の持ち込みだったと補足した。

そして同氏は、「最後のそれはすでに生じている。クルスク作戦の効果と目的は部分的に、『レッドライン』論の誤りを改めて示すことにあるのかもしれない」との見方を示した。

さらに同氏は、クルスク州での作戦はウクライナによるサプライズを起こして、突然の突破を利用する能力を示すことだとし、ロシアは全面侵攻開始以降、その点でいつも失敗を喫ししていると指摘した。

同氏は、「キーウは、現場での軍事的ナラティブを変えたのみならず、もしかしたら、協議ナラティブも変えようとしているのかもしれない。『領土と平和の交換』合意から、『領土と領土の交換』合意へと」と主張している。

その他同氏は、それはプーチン氏を困難な状況に追いやるものだとし、なぜならロシア領の一部のコントロールを失うことはクレムリンにとって絶大な恥だからだとしつつ、同時に、ロシア人にとって、プーチンが保持したがっているウクライナの占領諸地域は、彼が防衛せねばならない「国土」の一部となっていると指摘した。

また同氏は、ウクライナの新しい戦略は、ロシア首脳陣の「ハト派」(もしそのような人物がいるのであれば)に、プーチンに影響力を行使させる機会を与えること、彼らに、ロシアの領土一体性回復のために、ウクライナ領の併合を解除することを訴えさせることかもしれないとの見方を示した。

同氏は、「ウクライナがロシアにおける支配地を維持できる限り、モスクワ支配下にある領土奪還に向けたプーチンに対する強力な圧力が続くであろう」と主張している。