ゼレンシキー大統領、秋のロシアの大型演習終了まで危険な状況が続くだろうと予測

ヴォロディーミル・ゼレンシキー大統領は、ロシア連邦による情勢激化は同国の軍事演習「ザーパド2021」が終わる9月末までは常に生じる可能性があるとし、またベラルーシ領側から危険な行動が取られる可能性も排除できないと発言した。

ゼレンシキー大統領がドイツのフランクフルター・アルゲマイネ・ツァイトゥング紙へのインタビュー時に発言した。1日、大統領府がインタビュー全文をウェブサイト上に掲載した

ゼレンシキー大統領は、「私の見方では、9月末まで激化はいつでも起こり得る、というものだ。言うなれば、9月12~16日までは確実だ。私たちは、演習『ザーパド2021』が行われることを知っている。そのため、その時までは情勢は非常に危険だと思っている」と発言した。

大統領はまた、春の情勢激化の際のロシア側兵力につき、3万~3万5000人の兵力がドネツィク・ルハンシク両州一部地域に駐留、ウクライナ・ロシア間国境沿いには時期に応じて5万から8万の兵力が駐留、被占領下クリミアには約3万3000人~3万5000人の兵力が駐留していたと説明した。

大統領はまた、(ドンバス)被占領地には、3万~3万5000人の戦闘員に加え約3000人のロシア将校がいるとも発言した。

その上で大統領は、欧州と米国がロシアに圧力をかけ始めたことで、情勢激化の可能性は小さくなり、クリミアからは3500人の兵力が撤退したが、その他の全ての兵力はその場に留まっており、軍事機材の90%のその場に残されていると指摘した。

その他大統領は、ロシア側からの軍事行動は多くの可能性があり得るとし、その中には海からの作戦もあり得ると指摘した。大統領は、「私たちは、それを非常に懸念している。現在、ロシアの船舶によるアゾフ海・黒海地域の封鎖が行われている。彼らは、国際法に違反する形で地域を支配している」と発言した。

さらに大統領は、一時的被占領下にあるウクライナ東部からの情勢激化の可能性もあり、「ドネツィク・ルハンシク両州境界線への電撃的進攻」もあり得ると発言した。

加えて大統領は、その他の方面からの「サプライズ」となる情勢激化の可能性もあるとし、「現在ベラルーシが非常に危険な状況となっている。それは私たちの北の国境である。私たちは、ロシアとベラルーシが重要な地政学的な、おそらく防衛面での協定を常に検討し、合意しようとしていると理解している。それが締結されたら、ロシアからの真に深刻な影響が生じ得るし、ベラルーシ軍が深刻に調整・コントロールされ得る。その際には、私たちは、そちら側から(ベラルーシ方面から)のリスクも検討することになる。私たちは、その同盟国家創設協定の詳細は知らないのだ」と発言した。

これに先立ち、3月から4月にかけて、ロシア連邦がウクライナの国境付近と占領下クリミアに軍を集結させ、その数が約11万となっていたことが伝えられていた。これを受け、ウクライナや欧米諸国が懸念を表明し、ロシアに対して、軍の撤退を呼びかけていた。その後、4月22日、ロシア連邦のセルゲイ・ショイグ国防相は、「ロシアは4月23日から南部・西部軍管区の部隊を通常配置地点に撤退させ始める。軍部隊の確認は終わる」と発言した。

しかし、5月6日、ゼレンシキー大統領とキーウ(キエフ)訪問中のブリンケン米国務長官は、ウクライナ国境付近や被占領下クリミアに集結していたロシア軍部隊の大半は撤退発表後もその場に駐留し続けていると指摘している。同日、ストルテンブルグ北大西洋条約機構(NATO)事務総長も、ロシアは国境付近や占領下ウクライナ領に大きな軍事プレゼンスを維持していると指摘した。