キリロ・ブダーノウ国防省情報総局局長

早期停戦は可能だが、和平はそうではない

※このインタビューは、2月24日、つまりロシアの全面侵攻開始から3年目に行われた。

現在39歳のキリロ・ブダーノウ氏は、敵陣の背後で大胆な作戦を展開する精鋭部隊に所属した後に、2020年に情報総局の局長に就任した。彼は、作戦で何度も負傷した経験を持つ。

2021年11月、ブダーノウ氏は『ミリタリー・タイムズ』紙のインタビューで、2022年1、2月にロシアがウクライナに侵攻する計画を詳細に説明していた。

ブダーノウ氏は、軍事情報機関のトップとしては異例のオープンさを示し、頻繁にインタビューに応じている。情報機関の人物としては異例となるこのような公開性により彼は認知されるようになり、情報総局局長として数年連続で国民の信頼度の上位に入っている一因であろう。

最近の作戦で最も成功したと思うもの何か? なぜロシア軍は3日でキーウを占領できなかったのか? 敵の軍事、経済、人的資源はどれぐらいあるか? ロシアの政治エリートはどうしているのか? ウクルインフォルムがブダーノウ氏に尋ねた。

聞き手:セルヒー・チェレヴァティー

写真:キリロ・チュボチン


この3年間、私たちの国は数で勝る敵と勇敢に戦ってきました。当時クレムリンは、キーウを3日間で陥落させると脅していました。しかし、そうはなりませんでした。ウクライナ軍と国民の英雄的な抵抗のおかげです。あなたは、ロシア軍とロシアの現在の状態、彼らができること、彼らが望んでいることをどう評価していますか?

第一に、ロシア連邦の目標に変更はなく、彼らはそれを断念していないし、そう公言しています。そして最高指導者は、「特別軍事作戦」の目標を達成しなければならないと述べています。あなたが的確に言及した「3日間でキーウ」(制圧計画)は、「全面侵攻3年間」に変わったのです。つまり、明らかに、何かが「うまくいかなかった」わけです。私の今の彼らの状態の評価はこうです。2023年までにプロの軍隊は一掃されており、その後ロシアは動員された兵士で戦っています。形式的には彼らは皆契約兵ですが、しかし、アプローチは同じで、人を集めては、最大2週間で前線に送っています。彼らは純粋に数で戦っているのです。

目標は同じと言うことですが、当時専門的な軍隊を持っていたにもかかわらず、自分たちが望んだ最低限の目標も達成できず、いまだにドンバス地方を制圧できていない中で、彼らはどうやって目標を達成しようとしているのでしょうか。 彼らの軍事的、政治的指導者は何を期待しているのでしょうか。

2022年2月21日の地図と現在の地図を見比べてみてください。彼らが何も達成していないというのは、正しくありません。彼らは、期待していたものとは全く違うペースながらも、前進しています。確かに、ほとんどの地域では彼らを止めることに成功しているし、特定の地域では恒久的な制止に成功している。よって、彼らは、この戦争が、私たちにとってと同様に、彼らにとっても散々なものであることは正しく理解しているのですが、しかし、彼らには前に進むだけの能力があるのです。

では、その彼らの能力はいつまで続くのでしょうか。なぜなら、そうは言っても、(ロシア軍は)人員も兵器もかなり失っているのでしょう?

この戦争は、概してかなりコストの高い戦争です。1日の彼らの戦費は10億ドル弱で、莫大な額です。ロシア連邦の人的潜在力についてですが、ここでも自分を誤魔化すべきではありません。ロシアの潜在力、動員リソースは、推定で、彼らが前進することが可能なものです。

ただし、そのペースと犠牲者の数は無視できませんし、彼らはそれを考慮しています。

人的な能力について言えば、北朝鮮部隊が関与していること、中央アジアやアフリカ諸国からも外国人が別途リクルートされていること、そして北朝鮮やイランの武器が関与していることもわかっていますね。

イラン製は最小限です。今では、ほとんど全てが北朝鮮製です。

しかし、それからすると、これはすでに第三次世界大戦、あるいはその前哨戦と言えるのでしょうか?

それは哲学的質問ですし、どのようにそれを見るかによるものです。私にとっては、そうです。世界の圧倒的多数の最も強く、最も発展した国が引き込まれています。それは単に事実です。

あなたのところには、最も優秀な分析部門があると理解しています。私たち側と相手側、特に敵側の、他の戦力を関与させていく情勢の展開シナリオはどのようなものがあると予想していますか?

北朝鮮の関与という事実から始めましょう。自らをほぼ世界のリーダーであると自称している国、あるいは、少なくとも、世界で2番目に強力な軍隊であると自称する国であるロシア連邦にとって、それは屈辱的な事実です。それは屈辱的なことなのですが、しかし、現実として、彼らはそうせざるを得なかったのです。

複数の「極」がどのように動くかは興味深い問題です。現在北朝鮮にとっては、全てが好ましい状態です。彼らは、このプロセスの主な受益者となっています。彼らの軍隊は1950年代以来得ていなかった戦闘経験を、今積んでいるからです。そして、ロシアでの訓練後の最初の彼ら(北朝鮮軍人)の投入は酷いものでした。彼らは現実の条件にあるいずれのことに対しても全く準備ができていなかったのです。彼らは帰還し、軍の再訓練を始めるでしょう。それから、彼らはここで最も激しい戦いの中で、自らの兵器の実験をしています。

提示したい最も興味深い事実は、北朝鮮の弾道ミサイル「KN23」の使用です。それは最初に使用された時は、命中精度が低く、1.5キロメートル以上の誤差がありました。それが、ロシアの専門家たちが北朝鮮の専門家たちと工場で作業し、ミサイルを再設計し、改良したところ、現在そのミサイルは目標に命中するようになっています。さらに、北朝鮮はドローンとは何かを学びました。それまで彼らはどのようなものかを知らなかったのです。今、それらら全てが(北朝鮮に)戻っていき、軍が再装備され、再訓練が行われるでしょう。太平洋地域に新たな脅威が出現するのは明らかです。そのため、もう1つの点ですが、日本海側に(北朝鮮がミサイルを)発射すると、皆が、神経質になっていました。それでも、以前は、率直なところ、(そのミサイルの)精度が(西側のミサイルと)同じでないことを誰もが理解していましたし、その品質についても、それがどう作用するかは誰にもわかりませんでした。今後は、それらが全て変わっていきます。そして、それはごく小さな側面に過ぎません。

他に何がありますか?

私たちは、世界中を同じように見て回っても良いです。何が起きているか見てみてください。多くの人が、「ロシアはアフリカに進出した」などと言っています。確かに彼らは、アフリカを西から東、あるいは東から西、何と呼んでも良いですが、それらを切り離すという戦略的目標を達成しようとしています。アフリカを単純に切断し、動くもの全てがそこを通過させるようにするためです。彼らが成功していないと言う指摘は正しくないです。確かに現地では圧力をかけられているし、いくつかの国では彼らの計画は潰されていますが、彼らは引き続き実現しようとしています。(ロシアの)アフリカ軍団は活動を全く止めていません。彼らはシリアからは追い出され、現在はリビアに移動しています。彼らは体系だって移動しています。ラテンアメリカでは問題を抱え、中央アジアで努力しており、ミャンマーにすらロシア人はいます。彼らは軍人です。

つまり、彼らはソビエト連邦にあったパラダイムを繰り返しているということですか?

全く同じです。ロシアはソ連ではないし、問題は十分な資源があるかどうかということです。ソ連は意気揚々と進んでいましたが、完遂するだけの資源が足りなかったのです。ロシアは自らの帝国を復活させようとしていきますし、そのためにはロシア、ベラルーシ、ウクライナが必要です。他の選択肢はありません。ベラルーシは、今概ね快適でいるようですが、その中でも正直なところでは、ベラルーシは、彼ら(ロシア)と何かほんのわずかでも差別化しようと、間接的な行動をとっています。それでも彼らは、(ロシアの)絶対的な同盟国ですし、公式には連合国家です。しかし、彼らには、ウクライナが不足しています。

ロシアの経済的潜在的はどの程度強力で、どれだけ問題がすでに生じていますか? 私たちが活用できるような、危機的現象はどのようなものが今後現れる可能性がありますか? あるいは、彼らに問題は今後生じないのでしょうか?

問題はすでに現れていますが、自分を騙してもいけません。公式の数字でも、41%が防衛費です。これは異常な数字であり、この予算を実行するためには、医療、教育などのほとんど全ての社会プログラムが縮小されています。つまり、ロシア連邦への財政・経済的な悪影響はすでに実感されています。しかし、改めて言いますが、石油、天然ガス、貴金属、石がある限りは、彼らはバランスを保っていきます。

ナイェウ将軍は最近のインタビューで、(全面)戦争前夜に、敵の攻勢がいつどこから始まるのか、公式の情報も文書も全く持っていなかったと言いました。これについてどうコメントしますか?

2021年10月頃、私は、米国でのインタビューで、どのような戦力によって、どの方面で、どのように侵攻が行われていくかの図を示したことがあります。これは、当時の時点ですでに公開されていた情報です。つまり、わかるでしょう、私たちが何かを公開したということは、その時点では間違いなく、それがあらゆる場所に出回っていたということを意味します。もう一度言いますが、それは10月のことでした。確認可能です。今、オープンソースで見つけることができます

開戦前夜、あなた方は執務室に集まって準備をしていたと言いましたね。またシルシキー将軍は、情報総局の部隊がキーウ防衛で重要な役割の1つを果たしたと述べていました。私は、彼(シルシキー現軍総司令官)としばらく一緒に仕事をしたことがあるので、彼がこの手のことに非常に几帳面であることを知っていますし、彼の話を聞く限り、本当にキーウ防衛に大きな貢献があったということでしょう。もし、何らかの興味深い詳細があれば…、それがホストメリにおいて行われたことは知っていますが、どのように準備し、敵の撃退にどのように参加したのか教えてもらえますか?

返事はシンプルです。2月24日に私たちは加わりました。総司令官がそのことに言及してくれたことは、私はとても嬉しいです。当時のことはとてもよく覚えています。私たちはあらゆる支援を行い、司令官(シルシキー当時陸軍司令官)は当時、キーウ方面の防衛を指揮していました。最初の数日間で、私たちは実りある協力を行い、それが最終的には、私たち全員が今実感している、敵を撃退する、という結果をもたらしたのです。

最も厳しく、最も危険な瞬間だったのは、第72旅団の主力部隊が入ってくる前の最初の2日間でした。そして、正直に言いましょう、私たちのところにある物は少なかったです。そして、モシチュン村での出来事がありました。ロシア軍の作戦全体の流れを変えた2つの重大な出来事がありました。1つはホストメリで、それが彼らの計画の復興を妨げました。なぜ「3プラス10」、「3日でキーウ」という計画が崩壊したのか? 彼らの計画の核心がホストメリの滑走路への戦術空挺強襲戦力の着陸だったからです。そして飛行機は空中に来ていました。それも周知の事実です。しかし結果、私たちはその計画を破綻させました。そして2つ目は、モシチュンでのことです。もし、その出来事が起きていた時にモシチュンが陥落していたら、その瞬間に彼らはその方角からキーウへ進入していたでしょう。その2つが最大の出来事です。3つ目の大きな出来事は、イルピンの戦いであり、その戦いが部分的にロシア軍を分散させ、単に切り分け、その後、時系列的にロシア軍の撤退が始まったのです。

あなたの話では、ホストメリが…

(ロシア軍の)「作戦の核心」でした。正に「特別軍事作戦」全体の核心でした。それは「戦争」とは呼ばれておらず、「作戦」と呼ばれていました。なぜなら、いわば「3+10」日で終わるはずだったからです。つまり、遅くとも14日目には全てが終わっていなければなりませんでした、完全に。

ホストメリでのあなた方の部隊の役割は何でしたか?

彼らはそこで朝を迎えました。

何をしたのですか?

あるグループがそこにいました。彼らは、他の方面にもいましたが、しかし、私たちにとってはその方面が重要でした。そして、そこで、そこに常駐している国家警護隊の部隊と一緒に待ち構えました。そして、ロシア人が航空機を1機たりともそこに着陸できないようにする条件を作りました。皆で一緒になって、それを行いました。シルシキー氏が当時火砲でそれを非常に支援しました。私たちには自分の火砲はなかったですし、調整と協力のおかげで、その問題を徹底的に一緒に決着させました。初日、私たちは、空挺の着陸を阻止しました。それ以降のことは、そのことからの派生です。

この3年間であなたの部隊の行動手法はどのように変わりましたか? 非常に多くの革新、深部攻撃、その他の物が現れましたし、多くの非常に素晴らしい作戦が行われました。

それら全ての「深部攻撃」は、全てここから始まりました。私たちにとって革新だったのは、それまで存在しなかった大規模な部隊、分隊を作ったことです。それは、私たちが陥った戦争の状況によるものです。つまり、特殊部隊の古典的なグループ行動は通用せず、大型の要素が必要になったのです。そして、私たちはそれも実現しました。

「クラーケン」のような部隊のことですか?

「シャーマン」「アルタン」「クラーケン」「ティムール」などです。それらは大型の部隊です。

あなたはそれら部隊の活動をどのように分析していますか? 正当な戦術でしたか?

間違いなく正当です。敵が彼らと遭遇したがっていないのですから、つまりは、正当だということです。

全面戦争過去3年間の情報総局の最善の作戦を3つ挙げるとしたら、どの作戦ですか?

私にとっては、最初の作戦がとても重要でした。敵地への小規模侵入ではなく、ブリャンスク州での大規模侵入です。様々な人から様々な意見がありました、非現実的だとか、核攻撃を引き起こすとか…。私は、それがうまくいくと確信していました。結果、それはうまくいったのです。もっとも意味を持ったのは、戦闘作戦だと思います。なぜなら、ロシア領に戦闘行為を持ち込んではいけない、そうするとアルマゲドンが生じるという神話が壊されたからです。そうではないのです。

現在、ロシアの多くの上級将校、将軍が、不安を抱きながら眠りについているのでしょうか?

それは人によるでしょう。私たちに対しても同じ質問ができます。よく言われているように、人は何事にも慣れるものです。残念ながら、それは事実です。接滅した敵の数は甚大です。そして、私たちも保安庁(SBU)も、それに積極的に取り組んでいます。

つまり、ウクライナの人々、この戦争で最も辛い家族の喪失を経験した人々は、敵に罪を償わせるために、多くの人が活動していることを知っていても良いわけですね。

非常に多くの人が活動しています。例えば、最近の出来事ですが、私たちに大きな犯罪をもたらしてきた犯罪者が殲滅させられました。ミサイル攻撃をしてきた「イスカンダル」師団の指揮官です。約50人が殺され、100人以上が負傷したフローザ町の葬式を覚えているでしょうか? 1か月ほど前に、彼は自らの部隊の領域で謎の爆発を経験しました。悪をもたらす者のところへは、その悪が常に戻ってくるものです。そして、私たちが最初の悪をもたらしたのではないのですが、私たちは悪を戻さねばならないのです。

敵の士気や心理状態にどれだけ影響をもたらしているかについて、何らかのデータはありますか?

それは常に影響をもたらしています。しかし、どのような影響力も一定の期間があります。1つのことが、一生影響を持つということはないです。

最近、戦争3年目になって、SBUが非常に重要なポスト、本部長にスパイがいることを摘発しました。情報総局内にもそのような事例がありましたか? そして、敵の活動を防ぐために何をしていますか?

私たちのところでは、そのレベルでそのような事例は間違いなくありませんでした。ここには、内部のセキュリティの部局があります。ここへエージェント(に限らず)の侵入を防ぐことが彼らの課題です。SBUの事例に関しては、あれはマリュク将軍個人の勝利だと思っています。彼はおそらく、最大級のエージェントの侵入を摘発したのです。素晴らしいことで、専門的な活動です。

情報総局のSBUや対外情報庁との連携はどうなっていますか?

普通の業務的関係です。さらに、情報委員会もありますし、その委員会内で、皆が全くもって公式に活動しています。さらに、二者間で多くの行動がとられています。

つまり、連携は、目的達成において真剣な相乗効果を生むのに役立っていることですか?

ええ、多くの日々の事柄があります。例えば、SBUに対してとある人物について問い合わせが行われ、皆にデータが拡散され、共有したりします。そうすると、少なくとも時間が節約できます。

敵に関して言えば、(全面)戦争前や、戦時下にて、誰がプーチンに影響力を持っているのか、彼の最も近しい周辺人物には誰が含まれるのかとか、誰が彼の意見を構成しているのかとか、誰が決定を採択するのを手伝っているのかといった話がたくさんありました。今はどういう状況ですか? 何か変わりましたか?

何も変わっていません。唯一、ショイグの役割がかなり低下しました。それが唯一のことで、同時に、パトルシェフの役割は大して変わっていません。それは、面白い点です。

では、どうして彼(ショイグ)の配置換えが行われて、彼がマイナーですらない、風刺的な職に任命されたのでしょうか?

それは違います。ロシア連邦の国家安全保障国防書記というポストは、ロシアにおいては重要な職です。もう1つの疑問は、その職に限定されたのがショイグだったという点です。

パトルシェフの執務室が面白いことにクレムリンの中にあるということを知っていますか。以前は別の住所にありました。本件は、いずれも、最初に思えたほどには、それほど単純なことではないということです。変化は熟し、実行された。しかし、ショイグはパトルシェフにはならなかった。彼は、自分の副書記すら任命できないのです。

新しい国防相はどうですか?(編集注:ベロウソウ露国防相のこと)彼は、プーチン、社会、軍にどのように受け止められていますか?

普通に仕事しています。技術官僚的に受け止められています。つまり、官僚的、運営的な問題などを取り扱う人物、というわけです。

つまり、ポチョムキン村のような多くのものを見せてきたPR的なショイグの後に…

その点は、活動はより影の中に入っていると言えるでしょう。

しかし、それは結果を出していますか?

出しています。それも正直に話しましょう。彼らの活動は結果を出しています。彼らは、ロシア軍における盗みの水準を少し下げました。それは確かに実現したのです。盗みはあるが、少なくなったのです。より多くの資金がロシア軍の発展や維持などに振り分けられています。そして、それは表面上の話です。

現在メディア空間にて重要な問題は、停戦ないし和平に関する交渉です。あなたはいつだったか、ロシアと和平について話すことは、自分のことを殺そうとしている殺人者と話すことだと言いましたね。その彼らとの交渉のテーブルで待ち受けるものは何でしょうか? 彼らは何を期待しているのでしょうか? もしかすると、何かしらの期待する最大限のもの、最小限のものがあるのでしょうか?

当然、いわゆる「人参と棒」戦術です。彼らは常に行動していきます。私たちに圧力をかけ、様々な財政的に興味深いものを、それ(交渉)に参加する他者に提案していきます。彼らは常にそのように行動してきましたし、何も変わりません。そこには、別の問題があります。停戦か、和平か、です。それらは全く異なるものです。停戦に速やかに達することは、私の個人的な意見で言えば、それは実現可能だと思います。速やかに和平に達することは、できないと思います。

ロシアの軍事・政治首脳陣の現在の希求に間する何かしらの情報がありますか? 彼らは、戦力を集めてさらに進軍するために、一息つきたがっているのでしょうか?

ええ、彼らは休憩を必要としています。なぜなら、彼らの戦略上に従えば、2026年までに彼らがこの戦争から脱出できなければ、彼らは世界大国となるチャンスを失います。彼らには、最大で地域大国のレベルだけが残っていますが、彼らはそれに全く満足していません。戦争の代償、戦争の財政的代償は高過ぎています。代償は、国の発展を不可能にしており、大規模なプロジェクトなどに携われなくしています。ロシア連邦では、技術不足、技術的決定の不在が生じており、何よりも北極地域の開発、同地の天然ガス採掘などでそうです。

では、彼らにはどのような問題があるのですか? おそらくはロシアは理想的な国ではないでしょうし、きっと彼らは何らかの全体主義的な方法で強くはなっているでしょうが、しかし彼らにも多くの問題があるでしょうし、私は、あなた方はそれを分析していると確信していますし、それらに影響力を行使しているかもしれないとも思います。民族的、社会的、技術的、さらには人口的な問題もあるのでは?

いいえ。活動できることはあります。確かにあります。あなたが的確に挙げたとおりで、何よりも民族的問題、宗教的問題、それから技術的問題があります。しかし、それれらは、ロシアの状況を根本的に変え得るようなものではありません。(ロシアには)リーダーがいないのです。リーダーが現れたら、全ては1日で変わり得ます。例えばプリゴジンの時のように。リーダーがいなければ、どのような問題があろうと、全ては現状のまま続くでしょう。

彼のところの政権は完全に安定しています。深刻な脅威をもたらし得るような人は、あちらにはいないのです。

では、少し未来学的な話に踏み込んでも良いですか? 様々な事情によって、永遠の人などいないわけですし、それがおそらく、彼らの強みであり、弱みでもあるでしょう。なぜなら、全てが1人の人に集中していたら、ある日その人がいなくなってしまったら…

あなたは未来学の話ですが、私は歴史の話をします。それで良いですか? これは具体的な比較ではないですし、これは比較はできないものです。全くもって異なるタイプの人間です。しかし、それでもスターリンを例に挙げましょう。スターリンが死んだ。それもまた歴史的事実で、国の半分が本当に涙を流しました。なぜなら、何となく恐ろしかったからです。時の人が死んだ。しかし、次の日に行われたことは何だったでしょうか? 政権闘争です。そして、かなり短期間の内に第20回ソ連共産党党大会が開催され、非スターリン化が行われ、個人カルトが否定されました。そういうことが起きたのです。あなたは、何か異なることが生じると思いますか? 違います。

私は、ソロヴィヨフのことすら想像しています(編集注:ロシアのプロパガンダ拡散役として知られるテレビ司会者ウラジーミル・ソロヴィヨフのこと)。

そう、彼はこういうでしょう、「あれは悪だ」と。「彼は国を独裁体制に置いた」などというでしょう。歴史は常に繰り返すのです。

同意します。そして、少しグローバルな話に移らせてください。米国の政権交代は、ともあれ世界の秩序を大きく変え、すでにそれを変えつつあります。あなたは、これが世界の安全保障上の問題全般、欧州大西洋地域の結束の安定性にどのような影響を及ぼすと予測していますか? 私たちは、欧州がより自立しようとしていることをメルツ氏の最近の発言から見ていますし、中東においても、米国新大統領が真剣に影響力を行使すると約束しています。

私はあなたの質問への返答は全体としては控えますが、しかし、少しだけコメントしてみることはできます。今、大半の欧州の国と太平洋地域の国にとって戦略的不確実性の状態がありますが、それは、皆が、現在行われている行動のことを理解しているわけではないからです。しかし、それは不確実性の状態です。それは、今全てが崩壊することは意味しませんし、全てが開花だけするということでもありません。そうではありません。今はそういう時期で、それをただ認識し、あるがままに受け入れるしかないのです。

今日の会話の冒頭で、あなたは北朝鮮人のことについて話していました。私たちはそれについて話していますし、あなたは太平洋地域、アジアのことについて話しました。北朝鮮が試験し、改良している技術についてはどう考えていますか?

それは現実的な問題となるでしょう。

彼ら(北朝鮮軍人)は戻ると言いましたね。つまり、間接的に、それはおそらくは、少なくとも、韓国と日本にとって大きな関心時でしょう。

それは関心ではなく、彼らにとっての脅威です。

その地域の国々との連携は強化されていますか?

私たちの間には、以前から連携がありました。(編集注:北朝鮮軍人のロシア領への)到着が始まってから、韓国との間で(編集注:連携が)少し強まりました。それも当然のことです。私たちは、彼らに北朝鮮軍人の活動に関するデータを喜んで提供していますし、彼らからも何かしら受け取っています。普通の業務プロセスです。

もう1つの難しい問題があります。あなたは、捕虜扱い問題調整本部を率いていますね。現在の交渉の傾向の中に、被拘束者の「全員対全員」の交換、2014年から拘束されている人も含めた交換を行えるチャンスはありますか?

第一に、私はそれを期待しています。第二に、2014年から(拘束されている)人々も少数ながらも、私たちは帰還させていますし、それも忘れないでいてください。私は、全員を取り戻せると信じています。なぜなら、どのような戦争も、人々が双方へと戻ることで終わるからです。どんな人物であろうと、ロシア人も彼らの家族の誰かがあちらで待っていることを忘れないでいてください。国(ロシア)はもしかしたら、大して待っていないかもしれませんが、家族は待っています。

敵側に、交換したがらない何らかのタブー(編集注:被拘束者の特定カテゴリー)がありますか?

タブーというより、私たちの情報戦による問題化しているカテゴリーはあります。ご存じでしょうか。どのような情報戦にも、良い面と悪い面があるのです。あらゆる方策のあるマイナス面というのは激しく宣伝された(人の)カテゴリーであり、あちら側にとっても私たちにとっても問題となっています。私たちもまた、カディロフ系の者全員を高く取り上げました。彼らにとっては、それは「アゾフ」や海兵など、マリウポリに関わるもの全てです。私たちにとっては、カディロフ系兵士が良い例です。

カディロフが、自分の人物を早く交換させるために、(捕虜)交換に影響力を持っているというのは本当ですか?

いいえ、事実ではないです。

あなたは、情報戦、情報安全保障について正しく言及しました。あなた方のところには、戦略的コミュニケーション分野の強力な組織が展開されており、あなた個人もかなり独特な方法でコミュニケーションを取っていますね。あなたはもう、その経験、どのようにロシアのプロパガンダに効果的に対抗するかについて分析しましたか? それに先手を打つことができていますか?

時にはうまくいっていますし、時にはうまくいっていません。私は話しません。私たちの失敗もあれば、成功もあります。この点は、思うに、皆がわかると思います。外交的に言いましょう。私たちの国中で今のところうまくいっていないことは、彼らが動員への反対について展開した大規模な偽情報プログラムです。それは認めましょう。(ロシアの偽情報)プログラムは深刻な影響を及ぼしており、私たちの国民の意識に影響力を持っています。実際には1週間に約1、2回しかない激しい出来事であっても、インターネットを見ていると、毎日多数発生しているかのような印象が生まれるのです。それもまた、認識に影響を及ぼすためのプロフェッショナルな特別情報作戦の例です。

つまり、その旧式のソ連の手法は、新しい技術、ソーシャルメディアを組み込んでいると?

ええ。旧式の手法はそこでは正しく機能しました。私は、全ての古いものは破壊してしまい、何か新しいものを作ろうという多くの人の考えは共有していません。違います。それは全て機能しています。

機能しているものを改善していくことだと私は思っていますし、あなたもそのような原則を公言していますね。

改善するだけです。決して破壊するのではなく、改革するのでもなく。

社会混乱の議題について続けさせてください。今、地域採用センター(編集注:徴兵機関)の他に、ロシアがウクライナの国内政治状況を掻き乱したがっているという話しがあります。

「〜たがっている」とはどういう意味ですか? それはもう行われていることです。起きていることは認めましょう。ここでは、多くの要因がそれに影響を及ぼしますが、しかし、2023年秋に始まったその計画的な活動は、政権への不信感を、いわば、「植え付ける」ことへの準備を目的にしたものでした。それは2023年半ばのことです。

ところで、もしかしたら、敵は全面戦争3年目という今、私たちのところの社会で、当然ながら、ストレス耐性の強い人々ですらももう我慢できなくなっている状態を利用しているのかもしれません。あなたは、社会はどのような支援を必要としていると思いますか? もしかしたら、軍・政治指導部や防衛戦力のメッセージでしょうか?

その点の回答はありますが、残念ながら、その回答はおそらく、少し不愉快なものでしょう。しかし、その「回答」には何千年もの歴史があります。疲れた社会が活性化する、目を覚ますのは、勝利がある時だけです。勝利がなければ、あなたが何を行おうとも、何も役に立ちません。そのため、勝利が必要なのです。外交的、政治的、社会的、戦争的な、ともあれ勝利が。負けている人々のことは、世界の誰も好みませんし、尊敬しません。何を言おうとも。

では、あなたに個人的な質問です。あなたの勝利への信念は何に基づいているのですか? そして、あなたにとっての勝利とは何ですか?

私の信念は、私の有する情報に基づいています。私には、ありがたいことに、十分な情報があります。私は多くの世界の側面、国内の側面を分析することができますし、私には作業することがあります。そして、基本的なこととして、私たちは信じなければならないのです。私たちが信念を失えば、何もする意味がなくなります。なぜなら、信じない人というのは、勝利はおろか、何らかの成果すらも達成することは決してないのです。チャンピオンになることを信じないスポーツマンは、決してチャンピオンにはなりません。ここでもそれは同じです。

ところで、勝利の後、私たちは、大陸で現在最も経験を積んだ軍になりますね?

しかし、私たちの隣には、同様に最も経験を積んだ軍が生じます。残念ながら。

残念ながら、そうですね。しかし、私は、あなたは将校として1990年代、2000年代初頭にかけて、士官候補生としてや、将校として勤務していた中で、あなたも、一種の平和主義、軍から社会が完全に切り離される感じを覚えているだろうと思います。軍とは、何かしら、あってはならないもので、放置しておけというような見方がありました。今、その姿勢は変わりつつあります。停戦や和平を私たちの自衛のシステムにどのように適切に取り込むべきだと思いますか?

それは私にとって、難しく、痛みを感じる質問ですし、私はちょうど、1990年代の出来事の再来を恐れています。私はそれをとても恐れていますし、私たちが実質的に1992年から2014年までの時期に犯してしまった過ちを繰り返さないことを期待しています。そう強く望んでいます。なぜなら、その時にも、ロシア連邦を除けば、欧州最大の軍がありましたし、(世界)3番目の核兵器の保有もありましたし、最も発展した物資・技術基盤があり、技術も最新のもので、全てがここにあったのです。そして、私たちは、あのレベルまで劣化してしまった。アフガニスタンの退役兵たちも私たちのところにいた。全てが私たちの主柱にあったけれど、私たち自身がそれを破壊してしまったのです。背後に誰がいたとか、どうしてそれが行われたのかとか、たくさん話すことができますが、しかし、それは単に事実です。

あなたは、それはあなたにとってそれは個人的な問題だと言いましたね。1990年代、あなたはそれを見た。私も見ました、残念ながら。

私はまだ子供の時にそれを見ました。あなたは、1991年時点でウクライナに何があったか、2014年にどのような状態になっていたかは、統計を見ることができます。それは、本当に恐ろしいことです。

同意します。軍事ジャーナリストとして、残念ながら、私はそれを見てきました。

黒海艦隊の問題も、当時のその分割にしても間違っていました。しかし、私たちが得たのは、おおよそ1997年時点のもので、それでもって2014年に直面したのです。それは恐ろしいことです。「ヘチマン・サハイダチニー」のような艦船は私たちのところには3隻あった。沿岸ミサイルシステムや類似の兵器がいくらかあったか、航空部隊がいくらあったか。私たちが自らそれを壊してしまったのです。

ところで、私は個人的に、あなたがたどのように自ら、自分の性格、世界観、現在の仕事を選んだ理由を形成してきたのかを知りたいです。

子供の時にいつか読んだ本のことを覚えています。それは、翻訳されたものでしたが、名前は『セルフメイド・マン』でした。思うに、私はそういう道を歩いてきたのだと思います。

満足していますか?

私が目にしているものは、もっと良くなったら良いとは思っていますが、基本的には、多かれ少なかれ満足しています。

あなたについて、社会が抱いているイメージと、あなたが見ている自分像は一致していますか?

私は、そのことはあまり考えていません。もしかしたら、信じてくれる人はあまりいないかもしれませんが、しかし、私にとって、それ(編集注:社会における自分のイメージ)はとても些細なことです。私は目的を据え、それに向かって進んでおり、それ以外のことは私にとっては意味を持ちません。私は、人々が、国に勝利が不足する中で私たちが自分の仕事をそれほど悪くない形で行っているのを見ていると思っています。私たちにも勝利は不足していますが、しかし、小さな勝利は、断続的に現れています。私はそう思っています。

(※原語インタビューへのリンク