ゼレンシキー宇大統領、記者会見で戦争の可能性報道の否定的側面を強調 「最大のリスクは国内不安定化」
ウクライナのゼレンシキー大統領は28日、現在最も大きなリスクは「国の内側からの不安定化」だとし、ウクライナ国内のコントロールが失われた時こそ、ロシアからのエスカレーションをもたらし得るとし、「パニックの不在」があり得る侵攻への抵抗にとって重要だと強調した。
ゼレンシキー大統領が外国報道機関を招いた記者会見時に発言した。ウクルインフォルムの記者が伝えた。
ゼレンシキー大統領は、「現在、私たちは、以前より大きなエスカレーションというものは目にしていない。確かに(編集注:ロシア軍)部隊の数は増えたが、しかし、私はそのことを2021年初頭時点ですでに話していた。その時、ロシア連邦の軍事訓練があり、その時に大きな(兵力の)増加があった」と発言した。
加えてゼレンシキー氏はは、記者たちは、現状を理解するためにはキーウ(キエフ)を訪れるべきだとし、「通りに戦車が走っているとでもいうのだろうか。そんなことはない! しかし、あなた方がここではなく、イングランド、ドイツ、フランス、リトアニアにいると、あたかもそういった(編集注:戦車が通りを走っているかのような)気持ちになるのだ。(中略)報道からの感覚だと、私たちのところでは戦争が起きていて、通りを部隊が移動していて、動員があり、人々があちこち移動している、といった具合なのだ。しかし、実際はそうではない。そのようなパニックは私たちには必要ない」と強調した。
続けて同氏は、今重要なことは人の平穏を維持することだとし、「私は何よりもまず、人を維持している。それから経済だ。私にとって、エスカレーションが生じ得るという問題は確かに喫緊のものだ。そのことは、米国やその他のパートナー国と同じである。(中略)しかし、私たちはこのような状況にすでに8年間あるのだ。私たちは、上だけでなく足元も見なければならない。私たちは、経済だけでなく、人々を失ってしまう可能性があるのだ」と発言した。
同時に同氏は、ロシアからの攻撃の可能性は「もちろんある」としつつ、しかしその可能性は2021年にもあったと指摘した。
また同氏は、1月26日、パリにて開催された独仏宇露4国からなりロシア・ウクライナ紛争解決協議を行う「ノルマンディー・フォーマット」の首脳補佐官級会合につき、それは対話と平和的情勢解決の一歩であるとの考えを示した。
ゼレンシキー氏は、「状況をかきまわすべきではない。『明日戦争になる』といった表現は非常に気を付けて使うべきだ。明日戦争になるとか、2月末までに戦争になるとか言うべきではない…。残念ながら、それ(戦争)は起こり得るかもしれない。しかし、そのことを断定的に言うべきではないのだ。私たちは、人々の間に何が生じているかを理解している。ウクライナには、勇敢な人々がいる。しかし、その人々は国を守るだけでなく、仕事をしたり、子供を育てたりもしなければならない。それが人生だからだ」と発言した。
その上で同氏は、現在最も大きなリスクは「国の内側からの不安定化」だと強調した。同氏は、「国を支えられなくなる最大のリスクは、私たちの国の内側の不安定化だ。それがウクライナにとって最も弱い状況かもしれない。もし私たちが、民、軍、安定した政権で団結したら、ロシアからのエスカレーションのリスクは、かなり下がるだろう」と発言した。そして同氏は、国内の法支配、治安機関の活動、街中の平穏のコントロールが失われたら、それがロシアによるエスカレーションをもたらし得るとし、「それが、隣国からあらやこれやの行動がしかけられる可能性のある、最も蓋然性の高い計画なのだ」と発言した。
同氏は、ロシアのあり得る侵攻に抵抗する上で重要な要素となるのは「パニックの不在」「強力な軍」「強力な経済」だと強調し、「どう行動すべきか? パニックを起こさず行動することだ。私たちのところには強力な軍がいる。軍を強くする。強力な経済は、軍備を高め、軍人の給与を上げることを可能とする」と発言した。また、同氏は、ウクライナ社会は現在ウクライナ軍を完全に信頼していると伝えた。
同時に同氏は、ロシアによるあり得るエスカレーションについて、どのようなシナリオに向けても準備していると発言した。同氏は、「私たちは、いかなるシナリオに向けても最大限準備している。私たちには、多くのシナリオがある。ところで、その内の多くは、あなた方の国、あなた方の国の情報機関も知っている(編集注:共有しているという意味)。(中略)彼らは、私たちが最大限準備をしていることを見ている。(中略)私は、軍事的準備は静かであるべきで、外交も静かであるべきだと思っている」と発言した。
ゼレンシキー氏は、「私たちは、高い脅威に向けて準備をしているが、しかし、私たちは自分たちの置かれた現実を理解している」とし、「私は、2014年の時のようには終わらないと思っている。なぜなら、その時は今のような軍がなかった、というのが1つ目の理由だ。2つ目は、人々は、それ(状況)を、当時とは少し異なる受け止め方をしていることだ。今、ここにいる人たちは皆、非常に愛国的になっている。非常に。もう一つは、誰もが、一時的被占領地で何が起きたかを目にし、誰もが、あんなことは望まない、と確実に思っていることだ。(中略)地元住民は、何も占拠しない、政府庁舎も政権も。そういうことは準備しない。私たちはそれを確実に理解している」と強調した。
写真:大統領府