憲法裁判所の判決を受け、政権高官資産公開サイト閉鎖 関係者は判決批判
憲法裁判所は28日、誤った資産申告の責任を定める刑法典366−1条を違憲とする判決文を公開。これを受け、国家汚職防止庁(NAPC)は、オンラインで公開されていた政権高官資産公開サイトへのアクセスを遮断した。
憲法裁判所は、公式ウェブサイトに判決文を掲載した。
判決文には、「汚職防止法」と刑法典の複数条項を違憲とし、判決時の日からこれらの条項は無効化されると書かれている。
これを受け、資産申告情報の管理を行う国家汚職防止庁(NAPC)は、資産申告登録サイトへの一般アクセスを遮断した。
NAPCが公式サイトにて伝えた。
発表には、「2020年10月27日付憲法裁判所第13-r/2020判決を受け、NAPCは本日、10月28日19時、統一国家資産登録へのアクセスを遮断する」と書かれている。
この遮断により、国家機関も一般国民もこれまで常時アクセスの可能であった政権高官資産情報へのアクセスを失ったことになり、加えてNAPCはこれら資産の調査・保管・公開権限を失う。
NAPCのオレクサンドル・ノヴィコウ長官は、今回の憲法裁判所の判決につき「これはウクライナの汚職対策改革の破滅的敗北である。私は、立法に関わる人々がこの状況を無視することのないよう、そしてウクライナがもう一度汚職のない国家機関へ向かうチャンスを得られるよう期待している」と発言した。
また本件につき、汚職問題を扱う国際NGO「トランスペアレンシー・インターナショナル・ウクライナ」は、ウェブサイト上にて、憲法裁判所は汚職対策改革の多くを無効化したと指摘した。
同団体は、今回憲法裁判所が違憲として無効化したのは誤った資産申告あるいは意図的な申告拒否の刑罰(最大2年の禁固刑)であり、またNAPCによる、資産申告情報、資産登録サイトへのアクセスの管理と調査、資産登録者の生活手段モニター実施の権限が違憲と判断したのだと説明した。
また同団体は、資産申告者による資産情報の著しい変更に関する報告も違憲と判断されたと伝えた他、その他NAPCの多くの権利が剥奪されたことを説明した。
その上で、同団体は「憲法裁判所の決定は、ウクライナの汚職対策改革の著しい後退をもたらすものだ。なぜなら、これらの法規範は、国家安全保障の脅威の一つである汚職との闘い制度の根底を形成してきたものだからだ。政権高官の報告性を失う以外に、何千という政権に職を持つ人々が資産申告に嘘をついても罰せられなくなる」と指摘した。
また、政権高官の汚職犯罪に特化して刑事捜査を行う法執行機関「国家汚職対策局(NABU)」は28日、ウェブサイトにて、今回の憲法裁判所の判決により、110件の刑事捜査を停止せざるを得ないとする声明を公開した。
NABUの声明には、「憲法裁判所による、誤った資産申告の刑罰を無効化する判決は、政治的なものである。憲法裁判所は、このような手段で、政治家と政権高官による違法に獲得した資産を社会から隠蔽する意図を合法化しただけでなく、憲法裁判所にいる不当資産申告捜査を受けている個別裁判官の利益を擁護したのだ」と書かれている。
NABUは、電子資産申告の運用は、尊厳革命(編集注:マイダン革命)の重要成果の一つであり、2014年に始まった、政権を透明にし、社会に報告させるようにするという、汚職対策改革の基盤であり、裁判官含め、納税者の税金を扱う人々が資産を申告することになっているのだと強調した。
その上でNABUは、「しかし、憲法裁判所裁判官は、司法関係者をそのプロセスの外に出すことを決め、これらの生活手段のモニターや、申告内容と実際の収支が食い違っている際の調書作成を、あたかも圧力であると決めつけたのだ。ウクライナでは憲法裁判所の判決により、誰も裁判官の収支も彼らの収入源も管理する権利や質問する権利を持たなくなり、申告と実際の収支の違いがあっても誰も責任を追求する権利を持たなくなる」と説明した。
NABUは、「そのような判決は、倫理的にも法的にもいかなる批判にも耐えられるものではない」と強調した。
NABUはまた、2020年10月27日時点で、政権幹部の電子資産申告にて意図的に誤った情報を申告した約180の事例を捜査する110の刑事捜査があると指摘し、その内7名(内3名は元最高会議議員)には容疑が伝達されており、34件は起訴済みであり、13名は既に実刑が確定していると伝えた。
その上で、NABUは、「憲法裁判所の判決により、これら全ての捜査を停止しなければならない。すなわち、犯罪に手を染めた政権高官は、罪を逃れられるのだ」と強調した。
なお、憲法裁判所のによる27日に非公開裁判は、47名の最高会議議員が申請したものであり、「汚職防止法」「検察法」「国家汚職対策局(NABU)法」「国家捜査局法」「国家汚職・犯罪獲得資産摘発・捜査・管理庁法」、刑法典、民間手続法典の合憲性判断に関するものであった。