ウクライナの裁判改革は重要な局面に入った=EU大使

マッティ・マーシカス駐ウクライナ欧州連合(EU)大使は、ウクライナの裁判改革は現在重要な局面に入っており、ウクライナ政権は改革実現の道の最後の障害を取り払うべく、執念を示さなければならないと指摘している。

15日、マーシカスEU大使がニュースサイト「欧州プラウダ」に記事を掲載した

マーシカス大使は、先週、EU、米国、英国、ドイツ、カナダ、欧州評議会、国際連合開発計画(UNDP)、欧州復興開発銀行(EBRD)といったウクライナの国際パートナーが、ウクライナの重要司法機関のメンバーを精査・選考する役割を担う専門家をウクライナ政権に提案したと説明し、これにより同改革はウクライナ独立30年間で初の大規模裁判改革となり得ると指摘した。

大使は、最近採択された新しい法案に従って行われるこの国際社会の裁判改革への参加が、裁判官選考手続きを透明に実施する際に役に立つ可能性があると期待を示した。

その上で大使は、「ウクライナ側のパートナーたち、何よりも裁判官評議会と高等司法評議会にとって、決断を下す時が来たのだ。選択肢は2つ。改革を遅延させ、改革を弱体化させるか、あるいは、自らの専門家を任命し、作業を始めるかだ」と強調した。

大使は、「誰も真の裁判制度など関心がない」「裁判マフィアが改革を許さない」といった、「旧ソ連式の冷笑主義」を断固として否定すると表明し、2013〜14年の尊厳革命(マイダン革命)に参加し、ウクライナを欧州に押し戻した人たちが、裁判改革を要求しているのだと強調した。

加えて大使は、「ゼレンシキー大統領とウクライナの政治リーダーたちが、その要求に対して信じがたいほどの決断力を示し、不可欠な法律を採択したのだ。今、必要なのは、最後の障害を除くための、執念と献身である」と指摘した。

また大使は、政治リーダーたちは、改革に責任があり、それが成功したときには然るべく認められることになると指摘し、「ウクライナと国際パートナーたちは、ともに前へ進み、それを達成できるかもしれない」と指摘した。

これに先立ち、8月3日、ゼレンシキー大統領は、裁判改革を実現するための重要法とされる、高等裁判官選考委員会再編法(第3711ーd)と、高等司法評議会再編法(第5068)に署名し、発効させていた。両法は、国際専門家を参加させた上でのウクライナ司法政権の人員刷新を定めている。

高等裁判官選考委員会(HQCJ)再編法(正式名「高等裁判官選考委員会活動再生に関する裁判機構・裁判官地位法及びその他の法改正法」)は、HQCJの委員選出を新しい手続きで行うことを定めるもの。同法により、今後のHQCJ委員の選考は、別の機関「公正選考委員会」が行うことになる。公正選考委員会は、6名の委員からなり、内3名が現職(あるいは休職)裁判官、3名が国際専門家となる。同選考委員会の決定は多数決となるが、国際専門家に「決定的投票権」が付与されており、賛成・反対が3票ずつで割れた場合、国際専門家から2票のある方が採択されることになる。

高等司法評議会再編法は、高等司法評議会のメンバーの公正性の調査手続きを定め、また裁判官に対する懲罰手続きも変更するもの。「高等司法評議会」とは、裁判官の任命や、裁判官への懲罰、解任を最終的に決定する、司法システム上の重要機関である。同法は、「倫理評議会」の設置を定めている。同評議会は、ウクライナ裁判官評議会が定める裁判官あるいは退官裁判官から計3名と、国際機関が定める3名(国際専門家)の計6名で構成される。この際、倫理評議会では、「公正選考委員会」同様、国際専門家が決定的投票権を得る。

この倫理評議会は、高等司法評議会のメンバー候補の専門倫理と公正さの基準を調査、及び評議会設立後3か月以内に高等司法評議会現職メンバーの専門倫理と公正さの基準を調査する。倫理評議会は、評価に応じて現職メンバーの解任勧告を行うことができる。

先週、EU、欧米諸国などが同法に従い、「国際専門家」をウクライナ側に提案。しかし、9月13日、ウクライナ裁判官評議会側は、倫理評議会への自らの代表者を送ることを拒否していた。