米国務省、ウクライナ裁判官評議会に裁判改革履行を要請
米国務省は16日、ウクライナ政権に対して、裁判改革を履行し、高等司法評議会形成プロセスを加速することを要請した。
米国務省が声明を公開した。
国務省は、「米国は、ウクライナ政府、市民社会、国際パートナーとともに、裁判改革はウクライナにおける法の支配強化と外国投資誘致にとって決定的な意味を持つことを認めている」と伝えた。
また国務省は、ウクライナが7月に、司法政権を真に改革することを可能とする歴史的な法律を採択したことを喚起し、これを受けて、国際パートナーが同法に従い、ウクライナにおける司法政権の最重要機関である高等司法評議会の刷新のために高度な専門性を持つ専門家を提示したと伝えた。
同時に国務省は、9月13日にウクライナ裁判官評議会が、同プロセスへ参加する自らの代表者を提示することを拒否したことを指摘し、その拒否は「ウクライナにおける真の裁判改革の約束を破綻させるおそれがある」と警告している。
声明には、肯定的な動きを維持するための時間はまだあるとし、「裁判官評議会は、同法履行の自らの義務を果たし、候補者を提示することが可能である」と指摘されている。
また国防省は、米国は、ウクライナの人々が裁判所と裁判官を信頼できるようになり、ウクライナが欧州大西洋統合の道を進み続けられるようにするべく、決定的に重要な改革の促進を引き続き行っていくと強調している。
これに先立ち、8月3日、ゼレンシキー大統領は、裁判改革を実現するための重要法とされる、高等裁判官選考委員会再編法(第3711ーd)と、高等司法評議会再編法(第5068)に署名し、発効させていた。両法は、国際専門家を参加させた上でのウクライナ司法政権の人員刷新を定めている。
高等裁判官選考委員会(HQCJ)再編法(正式名「高等裁判官選考委員会活動再生に関する裁判機構・裁判官地位法及びその他の法改正法」)は、HQCJの委員選出を新しい手続きで行うことを定めるもの。同法により、今後のHQCJ委員の選考は、別の機関「公正選考委員会」が行うことになる。公正選考委員会は、6名の委員からなり、内3名が現職(あるいは休職)裁判官、3名が国際専門家となる。同選考委員会の決定は多数決となるが、国際専門家に「決定的投票権」が付与されており、賛成・反対が3票ずつで割れた場合、国際専門家から2票のある方が採択されることになる。
高等司法評議会再編法は、高等司法評議会のメンバーの公正性の調査手続きを定め、また裁判官に対する懲罰手続きも変更するもの。「高等司法評議会」とは、裁判官の任命や、裁判官への懲罰、解任を最終的に決定する、司法システム上の重要機関である。同法は、「倫理評議会」の設置を定めている。同評議会は、ウクライナ裁判官評議会が定める裁判官あるいは退官裁判官から計3名と、国際機関が定める3名(国際専門家)の計6名で構成される。この際、倫理評議会では、「公正選考委員会」同様、国際専門家が決定的投票権を得る。
この倫理評議会は、高等司法評議会のメンバー候補の専門倫理と公正さの基準を調査、及び評議会設立後3か月以内に高等司法評議会現職メンバーの専門倫理と公正さの基準を調査する。倫理評議会は、評価に応じて現職メンバーの解任勧告を行うことができる。
先週、EU、欧米諸国などが同法に従い、「国際専門家」をウクライナ側に提案。しかし、9月13日、ウクライナ裁判官評議会側は、倫理評議会への自らの代表者を送ることを拒否していた。