ケルチ海峡沖艦船拿捕事件 ウクライナ対ロシア国際裁判10月11日開始
国際海洋法条約(UNCLOS)に基づくオランダ・ハーグの仲裁裁判所にて、10月11日から16日にかけて、2018年11月のケルチ海峡沖におけるロシア連邦によるウクライナ海軍艦船拿捕事件に関するウクライナ対ロシアの国際裁判の公聴会が行われる。
常設仲裁裁判所の発表をウクルインフォルムのハーグ特派員が伝えた。
公聴会は、平和宮殿内にて行われる。新型コロナウイルス感染症拡大を受け、動画通信が用いられる。
発表によれば、公聴会は2段階に分けて行われる。10月11日にはロシア連邦が第1回口頭弁論を行い、12日には同様にウクライナ側は弁論を行う。14、15日には、両国が第2回目の弁論を行う。16日には、何らかの必要が生じた場合の予備日となる。
また、今回の日程発表を受け、ドミトロー・クレーバ・ウクライナ外相は、ツイッター・アカウントにコメントを掲載した。
クレーバ外相は、「同裁判は、ウクライナにとって非常に重要だ。私たちは、ロシア連邦による私たちの国家に対する振る舞いの不当性、ウクライナ軍艦船拿捕・保持の違法性、ロシアの牢獄に9か月間過ごしたウクライナ海軍軍人に対する見せ物裁判の不当性を証明することになる」と書き込んだ。
外相は、同裁判は、世界にとっても決定的なものとなるとし、ウクライナは、軍艦の有する主権免除(immunity)は国際法海洋法条約による基本的原則と義務であり、全ての国が遵守すべきもので、その侵害は罰せられるものであることを事実と法的立場で証明すると説明した。外相は、「私は、私たちの提訴により、どれだけ時間がかかろうとも、ロシアが責任を負うことになることを確信している」と指摘した。
また外相は、「国際裁判所における外務省の効果的な活動は、正義の確立の手段であり、モスクワに対して圧力をかけるもう一つのテコである」と強調した。
本件は、2018年11月25日、被占領下ウクライナ領クリミア近くのケルチ海峡沖にて、ロシア治安機関がウクライナ海軍艦船3隻を攻撃、24名の軍人とともにだ捕した事件の裁判。これら3隻の艦船は、オデーサ港からアゾフ海のマリウポリ港へ向かうところだった。
2019年5月25日、国際海洋法裁判所(ITLOS)は、ウクライナ対ロシアの案件における暫定方策として、ロシアに対して、同国がケルチ海峡沖で拘束・だ捕した24名の海軍軍人と艦船を速やかに解放し、ウクライナへ戻すことを命令。これに対して、ロシアは、同判決の効力を認めないとし、ロシアのウクライナ海軍軍人に関する立場は変わらないと発表したが、その後、2019年9月7日、ウクライナとロシアの間で、被拘束者交換が行われ、ウクライナにロシアにて違法に断罪されていた政治囚11名とともに、24名の海軍軍人が帰還している。